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家に帰ると、リビングのソファで亮がゲームをしていた。
玄関の戸を閉める音に気づいたのか、画面から目を離さずに言う。
「お、今帰りか。……ん? もしかして悠真と一緒だった?」
「っ……どうして」
思わず声が上ずる。
「いや、駅前でちょっと見えたからさ。おまえ、顔赤くね?」
ニヤニヤと笑う亮に、咲は慌ててカバンを抱きしめる。
「ち、違うよ! たまたま会っただけ!」
「へぇ〜、たまたまねぇ」
軽口混じりの兄の言葉。
それ以上深掘りされるのが怖くて、咲は「もうやめて!」と小声で言い残し、自室へと駆け上がった。
閉めた扉の向こうで、まだ胸の鼓動は落ち着かないままだった。