★ Ohmori Motoki side
目を覚ますと、一番に見えたのは幼馴染の後ろ姿だった。
辺りを見回すと楽屋だった。からっぽの弁当や脱ぎ捨てられた上着が散乱している。
確か、撮影している時に僕が倒れて……ここに若井が居るということは、きっと若井が運んでくれたんだろう。申し訳ないな…
頭がぼーっとする。起き上がる力もない。
若井は何かしているようで、何もしていないような。
僕が目覚めているのには気がついていないようだった。
「……若井」
声をかけてみた。
若井はびくっと肩を震わし、 ばっと素早く振り返る。
『…もとき?!??』
『もとき!?!?!?!?』
起きた!?起きた!?と謎にテンションが高い若井。
若井の目が少しだけ赤い気がした。
もしかして泣いた…?若井泣き虫だしな………
「…………大森元貴ですけど。」
若干呆れたような声を出してそう答える。
すると、ぎゅっと抱きついてくる若井。
『元貴〜〜………』
いつもなら引き剥がすはずだが、
僕にはあいにくそんな力は残っていない。
そんな時に、がちゃっと扉の開く音がした。
撮影終わりか何かの涼ちゃんの姿があった。
あ!と大きな声を上げて僕の元へ駆けつけてくれる涼ちゃん。
『元貴起きたの!?!?てかなんで若井抱きついてんの!?!?』
わあああ!!と涙目になっている涼ちゃん。
若井も涼ちゃんも泣き虫だな…なんて少し呆れる。
「うん、起きたよ」なんて答えると涼ちゃんまで抱きついてくる
良かった〜〜…と心底安心したような声色で言ってくるものだから、
心配をかけて申し訳ないと改めて感じてしまう。
あのさ。と、若井が会話を切り出してくる
見たことないくらい、真剣な表情で、
『…元貴…さ、何があったの…?』
不安そうな声色で聞いてくる。
様子を伺うように、若井は僕の瞳を真っ直ぐ見つめてくる。
『迷惑だとか思わないから。聞かせて欲しい…』
涼ちゃんの言葉が、僕の思っていることを見透かすように言ってきた。
でも、まだ遠慮の気持ちは無くならない。
若井が口を開いた。
『俺は、あのときみたいになるのは嫌だ。』
フェーズ1の終わりのこと…だろう。
若井は一番悔しそうな顔をしていた。
その顔が忘れられなくて、今でも脳裏に張り付いて離れない。
もう5人でやれない悔しさ、僕の体調について気づけなかった悔しさ…
というところが半々だろう。
『俺…もう何も出来ないのは嫌だから…』
若井の綺麗な瞳から、一筋の光が刺した。
涙が頬を伝い、その涙を手でぬぐう。
「…………」
ここまで、心配させていたのかと
何も言い出せなかった自分にいらついてしまう。
迷惑だと、勝手に考えていただけ。
少しも耳を傾けなかった自分が情けない。
「…何ヶ月前かな、下手したら1年くらい前かも。」
そうして、僕はこれまでのことを話し出した。
コメント
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うんぁ ” 泣 つらいよぉ、