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「ルフィくん、!」
トイレ、お風呂、台所。
手当り次第に探す。
ほんとはもう、わかってるくせに。
「・・・帰っちゃった、のか」
静かな部屋が寂しく感じる。
「何も言わずに行っちゃうなんて、酷いなぁ・・・」
なんの前触れもなく
まさか仕事に行ってる間になんて。
今日も同僚と話してたばかりだったのに。
宝物の麦わら帽子とともに、彼は元の世界に戻ってしまった。
(・・・ダメだ、泣く)
涙が頬に伝う。
この部屋、こんなに静かでこんなに広かったっけ。
私に強烈な印象を残してったくせに、去り際はあまりにも呆気ない。
彼らしいといえば彼らしいし、いつかひょっこり本当に会いに来てくれそうで。
(───悲しくは、ないな。不思議)
そんなことを思いながらリビングに戻ると。
「・・・嘘でしょ」
テーブルの上に見たことのないブレスレット。
傍にはメモが置いてあって、決して綺麗とは言えないけれど丁寧な文字で “ だいすきだ ” なんて。
「・・・私もだよ、」
いつの間に買いに行ってたの、私の好みドンピシャじゃん。
言いたいことはたくさんあるのに、直接伝えられないのがもどかしくて。
(・・・私から会いに行って、驚かせてやる)
粋なことしやがって、抜け駆けはゆるさんぞ。
方法もわからないくせにそんなことを思うあたり、彼に影響されているのだろう。
「ありがとう、大好きだよ」
ブレスレットを手首につけて、そう呟いた。
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コメント
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続き楽しみです✨