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「クレプスリー。お待たせ!」
「おお、エブラ」
俺とエブラは、チケット販売を行う劇場のエントランスホールに来ていた。
ここでクレプスリーという男の手伝いだ。
クレプスリー、長身でオレンジ色の髪に一房の前髪が特徴的な頬に傷のある男。
ちょっと雰囲気が怖い。
「お前さんは?」
クレプスリーが俺の顔を見て怪訝そうな表情を浮かべる。
「俺はリュウです。訳あってサーカスで預かってもらえる事になりました。」
「ふむ。見るところ、人間の子供のようだが、もう分別がつきそうな年頃といったところか。」
「今年で17になります。」
そう言うと、エブラがケラケラ笑った。
「俺より年上なのに、親とはぐれて迷子なんだってさ。」
嘘の話だが、言われてみれば確かに恥ずかしい話だ。
「そうなのか。なら警察に行けば良いのではないか?」
ごもっとも!
「いや〜ウチの父は、ちょっと悪い事もしてるんで、警察のお世話にならないんじゃないかな〜」
誤魔化せるか?
「なるほど。まぁ気に病むことはない。お前さんの父親も君を探しているだろうからな。すぐとは言わんが、必ず会える。」
誤魔化せたー!
ってか良い人ー!
騙してゴメンなさい!
「そろそろ客が来そうだ。エブラ準備してくれ。」
「あいよ。」
エブラはクレプスリーに白地の古いローブと仮面を渡した。
そして、俺にはローブだけ。
これを着て正体を隠すようだ。
完全に怪しい集団だよ。
と言っても、実際にチケットを渡すのはクレプスリーで、俺とエブラは裏方で会計だ。
客はそんなに多くなかった。
3時間もいて大体10人くらい。
「今日は客足が伸びなさそうだな。」
と、クレプスリーがぼやいていた。
「何だか、警察が徘徊してるらしいよ。衣装のキャロルが言ってた。」
そうエブラが言うと、クレプスリーがローブと仮面を脱ぎ、シルクハットを被った。
「少し脅かしてくるか。」
そう言ってクレプスリーは早足で劇場を出ていった。
「え?あの人行っちゃったけど…。」
簡単に持ち場を離れたクレプスリーに唖然とする俺に対して、エブラは平然としていた。
「クレプスリーが行ってくれると、客足伸びるんだよね。帰ってくるまで、俺らで販売しよう。はい、仮面。」
エブラから仮面を手渡された。
「俺が販売する係なんだ。」