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「少年!待ってくれ!」
俺は大通りを走る少年に呼び掛けた。
「ちょっと助けて欲しいんだ。」
少年は俺に呼び止められた事に驚き、さらに速度を上げて走った。
何だ?悪い事でもしたのか、あの子供。
「警察じゃない!本当だ!」
ダメだ。聞く耳を持ってない。
少年は路地に逃げようとしたが、間一髪で少年を捕らえることに成功した。
「悪いな、少年」
少年は、最初抵抗を見せたが、何とか説得に応じてくれた。
代償として何発かのパンチとキック、オマケに噛み付きまで大人しく喰らってやったが…。
「あんた、誰?確かに警察じゃなさそうだけど。もしかして不良?」
少年は不信感を抱いてるようで俺と目を合わせようとしない。
仕方ないか。
「俺はトラ。ちょっと公園にいるツレが気絶しちまってて宿まで一緒に運んで欲しいんだ。」
「えー。俺忙しいんだよ。別の人に頼んでくれ。」
「頼む。すぐ終わるから。」
「うーん、わかった。あんまり遅くなるようなら、勝手に行くからな。」
「ああ、それでいい。」
俺は少年を連れて公園に戻ると、さっきまで気絶していた筈のケビンの姿が消えていた。
「誰もいないじゃん。」
あれ?おっさん起きたのか?
どこ行っちゃったんだ?
「もう用無いみたいだから俺行くね。」
少年がそう言った直後、ライトがコチラに向けられた。
「警察だ!こんな時間に何をしている!」
2人の警官がライトを持ってコチラに向かってくる。
マジ?元警官の後は、現役警官かよ。
ただ幸いな事に距離はまだある。
「ちっ!ヤバっ!」
少年はすぐさま警官と反対方向に駆け出した。
俺も一緒に逃げよう。
「おい!違う方向に逃げろよ!」
少年が怒鳴ってくる。
「公園の出口はコッチが近いんだからしょうがないだろ!」
「じゃあ、出たら二手に分かれろよ!」
「当たり前だ、ノロマ。」
「あぁ?人に物頼んだ奴の態度じゃねえぞ!」
「頼んだが、頼み事が無くなっちまったんじゃ全部帳消しだ!」
「なんだと!っつ、うわっ!!」
少年がつまずいた。
きっと余所見してたからだろう。
ま、夜更けに出歩くガキなんざロクでもねぇ。
警察に捕まるのが道理ってもんよ。
俺は逃げさせてもらうぜ。
「子供を捕まえたぞ!」
捕まったか。
「俺はあの男を追う。子供は車に乗せておくんだ。」
警官の1人が俺を追いかけてくるようだ。
「ちくしょー!ふざけんな!約束破っちまうじゃねえかよーーー!」
少年が泣き叫んでいる。
ほんと悪いな、俺に呼び止められなきゃこんな事にならなかったろうに。
………。
あれ?俺のせいか。
でも、深夜徘徊してるガキを戒めてやったと考えれば…。
「ダレン!ごめん!約束守れなかった!」
「!?」
ダレン?どっかで聞いたような…。
俺は走るのをやめ、向かってくる警官と向かい合った。
「観念したか。」
警官はゼェゼェと息をついている。
余程全力で走ったのだろう。
それは俺もだけど。
「観念してねえよ。警官とやりたくないが、俺にも事情があるんだよ。」
喧嘩はあっという間だ。
俺は先ず目の前の警官をワンパンで倒し、少年の所へ行って警官をワンキックで倒した。
「にいちゃん、スゲェ強いんだな。」
少年が泣くのを止めて目を丸くしていた。
「あたぼーよ。それよりも悪かったな。コレはその詫びだ。今のうちに逃げよう。」
俺と少年は警官2人を置いて公園を後にした。
「そういや少年、約束とか言ってたけど、どこに行くつもりだったんだ?」
「…スティーヴ。」
「スティーヴ?何処だそれ?」
「俺の名前がスティーヴ!」
「あぁ…そういう、ね。」
外国、むずかしい。
「で、何処に行こうとしてたんだ?スティーヴ」
「劇場だよ。この町のはずれにある。」
劇場?
「もしかして、シルク・ド・フリークか?」
「え?あんたも知ってんのか?」
「知ってるって程でもないけどな。俺も一緒に行っていいか?チケット買いたいんだ。」