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「マッシュ…少し真面目な話をしてもいいか?」
ふと聞こえたレインくんの声は、なんだか少し、自信のないような気がした。
「…真面目な話??いいですけど…」
もっもっとシュークリームを頬張る。レインくんからの話…しかも真面目な…??なぜか、レインくんがソワソワしているのが伝わってくる。眉間のシワさえ、今日は強張っているように見える。
すこしの沈黙と時計の針が進む。
「あの…シュークリーム食べますか??」
「っマッシュは…」
あ、遮られてしまった。せっかくのシュークリーム…。
「…マッシュは…いい後輩だよ。俺はお前のことを応援している…それだけのつもりだった。」
「はい…?」
「なぁ、マッシュ…俺が、その、…好きだと言ったら、困るか?」
「す……き?」
頭の回転が止まる。好き?すきとは?レインくんが??僕のことを??なぜだろう、シュークリームの味がしなくなってきた。
「すすすすすすきって…いうのは??????」
マッシュの頭はすでに限界を迎えていた。針でつつけば破裂してしまいそうなくらい体温は上がりふくれ上がっていた。
「ははっ…なんだよ、その顔。」
「あゎゎゎゎゎゎゎ」
レインくんが笑った。眉間によったシワが緩んだ。
僕は別に、こんな学校生活を望んでいたわけじゃない。あくまで平和に暮らせるように。それだけのつもりだった。でも、現実は違った。優しい友達に出会って、いままで味わえなかった「青春」を取り戻したかのように。
「レインくんは…僕のことが…好きなんですか…?」
「…そうだ。」
「僕に……そんな魅力はあるんですか…??」
「あるよ。」
信じきれない自分がいる。きっと僕が知らないことが多いから、でもなぜが脈が激しく打って体が熱くなる。
「一見筋肉とシュークリームにしか目がないようなやつだが、お前は一番に仲間のことを思う。自分がどんなに危険な立場に立とうとも、力技だが成功させてしまう。神覚者になるものに必要なのは魔力や才能だけじゃない。その仲間を想う優しさ、それこそ必要なものなのだとお前に出会って思った。同時に…自分の気持ちに気がついた。」
「きもち…?」
「好きだということだよ。」
愛はじいちゃんからたくさんもらってきた。でもちょっと違う。なんだろう、ドットくんがレモンちゃんに抱いてる気持ちと同じなのだろうか…?なぜか、否定したくない、僕もとすら言いたい…上手く言えないこの気持ち。
「僕も……好き…です。」
「……ほんとか?」
「…そんな嬉しそうな顔…しないでください…」
恥ずかしい。今まできっと気がつかないようにしていた気持ち。それを掘り起こされたような気持ち。そっか、好きだったんだ。いつもどこかで、レインくんを探している自分が…いた気がするんだ。
「じゃあ、恋人だな。」
「…コイビト…」
「マッシュ、お前は今までに、誰かと付き合ったことはあるか?」
「ない…です…」
「じゃあ、俺が初めてということだな。」
ふわふわする。今にでも飛んでいってしまいそうなくらい。
「なぁ、マッシュ。」
「…なんでしょうかっ……」
「…強引だと思われるかもしれないが…今は自分勝手な俺を許してくれ。」
「…えっ…?」
そっとレインくんが僕の顔を覗き込む。レインくんの右手が僕の左手に触れる。
「…んっ…」
レインくんが口付けをする。これがキスというものなのか?シュークリームの味は薄れていたはずなのに、今はしっかりと感じる甘さ。
「?????????」
「これがキスだ。」
「……あまい…」
ここにきてから初めてのことばかりだ。
「俺が、初めてを教えてやる。」
レインくんは、「初めて」ではないのだろうか。そう想うと、なんだか寂しい。
「レインくんにとって『僕』は初めてですよね?」
「ん?」
…ちゅっ……
「っ…次は…僕からレインくんの唇を…奪うんで…今は…ほっぺだけどっ…」
「それは無理だ。」
そう言って押し倒された後、嬉しかったのは、きっと何かの勘違い…そう信じて。