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恋人になったらしたいことは?相手の好きなものを知って相手の話を聞いて頷いて。たまには自分の話もしてみて。そして手を繋いで抱きしめて口付けをする。そんな理想の恋人像がきっと年頃なら誰でもあるはずだ。もちろんそれはマッシュにだってあった。
「まずは一緒に筋トレですな。」
しかし…相変わらずマッシュはマッシュだった。
「マッシュは恋人が出来たらしたいことはあるか?」
「恋人…」
一度は憧れたその二文字を浮かべながらシュークリームを頬張る。
「まずは一緒に筋トレですな。」
「お前はどこまでも変わらないな。」
レインくんはそう言うと笑った。普通恋人は何をするんだろう。一緒にお出かけしたり、お話したりするのだろうか。2人で甘いものでも食べに行って…
「シュークリーム一緒に食べます…」
ふと思いついた。そうだ、シュークリーム。僕が好きなシュークリームを恋人にも食べさせてあげよう。
「シュークリームか。確かに恋人と甘いものを食べに行くのはいいな。」
そっと風が頬を撫でる。レインくんの髪が揺れて、気がつけば手元のシュークリームは食べ終わっていた。
「シュークリーム…買ってきます…」
「なぁ…マッシュ」
レインくんが僕の顔を見つめる。
「レインくんもシュークリーム欲しいですか?」
「…いや、そうじゃない。」
もう一度風が吹いて、レインくんの前髪が崩れた。その前髪がまるで赤らめた顔を隠すように。
「マッシュ…俺は、恋人が出来たらしたいことあるぞ。」
レインくんにもあるなんて…それもそうか、きっとそれが普通なのだから。
「…きんとれ?」
「違う」
先程よりも僕の腕を掴む力が強くなる。なぜか自分の体温が上がるのを感じた。
「俺は…恋人が出来たら…手を繋ぎたい。腕じゃない。ちゃんと手を繋ぎたいんだ。」
「手を繋ぐ…いいですね。」
しばらくするとレインくんはそっと腕を掴んだ手を離した。
「レインくんは、恋人が出来たら手を繋ぐ以外にしたいことはあるんですか?」
「…それはっ…」
レインくんは俯く。おっと…なにかまずいことを聞いてしまった…?これは早くシュークリームを買いに行かなくては…
「…たくさん…ある…」
レインくんには恋人としたいことがいっぱいあるんだ。その言葉になぜか羨ましく思ってしまった。
「いっぱい…あるなら…レインくんの恋人になる人は幸せですね…」
何故だろう、何故か、また体温が上がって、少し寂しいような。羨ましくてたまらないような。そんな気持ちでいっぱいになった。
「あぁ、その恋人を幸せにするんだ。いつかな。」
「……いいですね……」
「だからマッシュ…」
「いつかお前の好きなシュークリームを食べさせてくれ。」
この気持ちが何かは分からない。でも、今この時間が、もう少し続けばいいのになと思った瞬間だった。