テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
青さんの家に、桃さんが〇〇を置いていった話
翌朝目が覚めて寝室から出ると、キッチンの方から良い香りが漂ってきた。
「あ、おはよ」
ニーゴが笑って言う手には、淹れたばかりのコーヒー。
それを差し出すようにテーブルに置かれた。
くるりと見回した辺りは、昨日より整理された気がする。
乱雑に散らばっていた物なんかは片付けてくれたようだ。
「砂糖いる?」
尋ねながら、ニーゴはスティックシュガーを差し出してきた。
それを受け取ろうとしたけれど、距離感を誤る。
取り落としそうになった砂糖の包みを何とか手の平で受け止めると、勢いでニーゴの指先に触れてしまった。
…それから、驚く。アンドロイドと言っても、生身の人間のように温かい。
「ニーゴ…体温あるん?」
俺の問いに、ニーゴは頷いた。
「『ないこ』の平熱で設定されてるし、他も割と本人に忠実に造ってもらってるよ。髪質とか、足首や脇腹のほくろの位置なんかまでね。見る?」
言いながら、ニーゴはシャツの裾をべろんと捲り上げようとする。
「いや大丈夫!めくらんでいい!」
大声を上げた俺を、ニーゴはきょとんと見つめ返した。
…調教ってこういうとこにも必要なんかな。
簡単に肌を見せようとするな、もっと警戒心を持て…って?
でもこれがないこらしいなんて気もしてしまう。
その日、仕事の昼休み中にないこから電話がかかってきた。
一番に不貞腐れたような声が漏れてくる。
『お前、昨日から性能チェックと雑談しかしてなくない?もっと仕事割り振るとか活用してよ』
言われてスマホを手に俺は固まってしまった。
「…仕事割り振ってないんは悪かったけど、雑談しかしてないとか何でわかるん」
『データ全部送信されるって言ったじゃん。ニーゴが拾う範囲の音声も全部くるよ』
「え…悪趣味やん盗聴やん…」
『今後音声まで確認されたくなかったらちゃんと使って。仕事でも家事でも何でもいいから』
…はい、と萎れた声で返事をし通話を終わらせる。
昨夜インストールさせられた対ニーゴ用のアプリを開いた。
任せられそうな資料整理やメールの下書きなんかの指示を飛ばす。
夜家に帰ると、頼んだ仕事は全て片付いていた。
「おかえりいふさん」なんて出迎えてすぐ、ニーゴは今日の成果を報告してくる。
ないこの能力をコピーしていると言っていた通り、問題なく作業は終了していた。
「ありがとう」
礼を言うと、ふわりとした笑みを浮かべ返してくる。
「かわ…っ」
「かわ?」
「いや、何でもない…さすがやね」
「夕飯も作っておいたよ。いふさんハンバーグ好きでしょ?」
そう言えばキッチンからいい匂いがする。
手際よくテーブルに並べ始めるニーゴを見やりながら、内心ではため息が漏れた。
帰宅したら食事や風呂まで用意されていて、やるべき仕事は手伝ってもらえて…。
これ以上ない幸せなはずなのに、己の中に巣食う違和感が拭えない。
ないこは自分が使いやすいように調教しろと言っていたけれど、ニーゴがないこと同じ顔をしているせいか、好き勝手に調教なんてできるわけがない。
そもそも俺はないこに何かを望んでいるわけではないから。
ましてや身の回りの世話なんて。
あぁでも、今言いたいことがあるとしたら…。
ニーゴの用意してくれた食卓につきながら、俺は再び口を開いた。
「やっぱり、呼び方は『まろ』にしてくれん?ないこの顔で『さん』づけされると違和感あるから」
それと、と言葉を継ぐ。
「明日から食事は2人分用意してくれる?」
不要ではあるけれど、ニーゴは飲食自体はできるとないこも言っていたはず。
絵面だけの問題だとしても、作ってもらった食事を自分一人でとるのは何だか気が引ける。
そう言うと、ニーゴはまた笑った。
「優しいね、まろは」
優しいか…? 思わず首を捻りかけた。
だけどそれよりも、呼び方が変わっただけでニーゴがより本物のないこに近づいた気がして、そちらに気をとられてしまった。
そんなことを考えていた俺に、ニーゴは同じ方向に首を傾げてみせる。
少しだけ上目遣いのような仕草でこちらを見つめてきた。
「まろは『ないこ』が好きなの?」
「…え!?」
なんで、と問い返すよりも先にニーゴが言葉を継ぐ。
「だって俺にこうしてほしいって言うとき、『ないこならこうだから』みたいなことばっかりじゃない?好きに使っていいって言われてるんだから、いっそないこじゃない人格にすればいいのに」
言われた言葉に、思わず返すべき声を失った。
「…い、いや、そりゃ好きに決まっとるやん? ずっと一緒にやってきた相棒やし仲間やし、ないこだけやなくてメンバーみんな好きやで」
何とかそれだけ取り繕うように言うと、ニーゴは「ふぅん」と呟く。
興味があるのかないのか、それ以上は取り立てて問いただしては来なかった。
「そ。ならいいや」
ひとつ頷いたかと思うと、「さ、ほら冷めないうちに食べて」と勧められる。
ロボットにとは言え本音をごまかしたせいか、せっかく作ってくれたそのハンバーグはその日何の味もしなかった。
翌日はニーゴにショート動画の編集をいくつか任せ、俺自身は外回りの仕事を終えるとそのまま一旦事務所に赴いた。
「あれ、まろだ」
会議室に顔を出すと、ないこが眉を上げてこちらを見る。どうやら会議が終わった後のようだ。
「あれからちゃんとニーゴ使ってくれてるっぽいね。活動面での作業したデータ残ってた」
この様子だと、活動記録だけ確認して今日は音声までは聞かれていないらしい。
ほっと胸を撫で下ろす。
「作業の出来はどうだった?問題なさそ?」
「ん。さすがないこの能力コピーしただけあるよな」
「まぁでも、今だけだよね。学習していくと人間なんかより遥かに高度なことやってのけるようになるだろうし」
手元の資料を揃えながら、ないこはにやっと笑った。
「そのうち俺なんかいらなくなるかもね」
「…冗談でもそういうこと言うんやめて」
いつもより低い声で言うと、ないこは浮かべた笑みを苦笑いへと変えた。
「真面目だねぇまろは」なんて、貶しているとしか思えない言葉を吐く。
「それより、まろは何か用があって来たんじゃないの?」
問われて、鞄の中から資料の入ったファイルを差し出した。
「ん。これ持ってきただけ」
「おーありがと。さすが早いね。ニーゴもいるし、後で追加で頼みたいのメールしとくわ」
ないこの言葉に頷いて手を振ると、俺はそのままそこを後にした。
家に帰ると部屋の中は真っ暗だった。
昨日のように夕飯のいい香りもしなければ、物音ひとつしない。
「ニーゴ…?」
リビングの電気をぱちりと点ける。
だがそこは普段の自分の家とは見間違えるくらい片付いているだけで、ニーゴの姿はない。
風呂場、作業部屋…順番に扉を開くけれどどこにも見当たらなかった。
「ニーゴ…!?」
後は、一番奥の寝室だけ。
その扉をきぃと音を立てて開く。
薄暗い部屋の中で目を凝らすと、ぼぅと一つのシルエットが浮かんだ。
ベッドの脇の床に座り、少しだけ顔を俯けている。
…ニーゴだ。
急にいなくなったわけではなかったらしいことにほっと胸を撫で下ろしながら、俺はそちらに近寄った。
闇の中ニーゴを覗き込むようにして床に膝をつく。
…寝てる…のか??
いや、違うか充電か…?
そう思った矢先、気配でも感じたのかニーゴの長い睫毛が揺れた。
ゆっくりと瞳が開き、顔を上げる。
暗い中でも俺をきちんと認識したらしく、にこといつもの笑みを浮かべたのが分かった。
「あ、まろだ。おかえり」
それだけのことにひどく安心している自分がいる。
「…充電?」
「そう。ごめん帰ってくるまでに終わんなかったね」
言いながら、ニーゴが立ち上がった。
座っていた場所には何やら黒い円形の板のようなものが置かれている。
俺の視線に気づいたらしく言葉を継いだ。
「これ?充電器だよ。スマホとかでもあるじゃん、置くだけで充電できるワイヤレスのやつ。あれと一緒」
流れるような口調で説明してくれる。
「有線の充電器もあるんだけど、差し込むのが足の付け根辺りで服脱がなきゃいけないのが面倒でさ…」
ほらここ、と言いながらニーゴは自分のズボンに手をかけた。
そのままずり下ろしそうな気配を感じ取って俺は思わず声を上げる。
「だから…!前も言うたけど、そういうん見せんでいいから…!」
ニーゴの手に自分の手を重ねて阻止すると、「何か問題ある?」とでも言いたげにあいつは首をこてんと傾けてきた。
「ま、いいや。夕飯用意するね。材料切ってあるからすぐできるよ」
よっ、と立ち上がりながらニーゴはそう言う。
「今日寒いし鍋にしたよ。ないこに聞いたんだよね。まろが鍋好きだって」
手際よく鍋の材料を煮込み始め、ニーゴの言葉通りそれは程なくしてできあがった。
具材もないこから聞いたのかきのこ類とウインナーが山盛りで、いつぞやのペア配信で食したものと同じだ。
箸を手にした俺の前で、ニーゴが「いただきまーす」と手を合わせる。
昨日頼んだ通り、今日は一緒に食卓につくらしい。
「うまっ」
一口ずつ噛み締めるようにぎゅっと目を瞑って堪能する様子は、本当に本物そっくりだ。
ずっと前から、ないこの食べている時の幸せそうな顔には目を惹かれてしまう。
本人でないにしても今その光景が目の前にあるせいで、俺の方は食よりも手前のチューハイの方に手が伸びてしまった。
結局鍋のほとんどはニーゴが食い尽くした。
食べた物が体内でどうなるかは知らないが、この細身に吸い込まれていく様は本物のように小気味いい。
片付けの段階で、キッチンの流し前に立ち「俺が洗うわ」と声をかけた。
腕まくりしながら、そう言えばあのペア配信のときもこんなことあったなと思い出す。
「前にないこと鍋配信した時も俺が洗おうとして、最後にひっくり返してさぁ」
それはそれは大惨事だった。
思い出して苦笑いを浮かべた俺の隣で、ニーゴは意味ありげに唇を持ち上げてこちらを凝視している。
「…何?」
何か変なことを言ったかと思いながら問い返すと、整った薄い唇が言葉を継いだ。
「やっぱり好きなんじゃん、『ないこ』のこと。まろが嬉しそうに話すのってあの人のことばっかだよね」
思いがけない指摘に返すべき声を失い、絶句する。
そんな俺にニーゴは一歩詰め寄った。
シンクの縁に手をついて。
「画像と音声の記録(ログ)なら切ったから、今ならないこに聞かれる心配はないよ」
そこにスイッチでもあるのか、首の後ろをちょんちょんと指さしてからニーゴは話を戻す。
「好きなら自分のものにしたいとか思うんじゃないの?何だかまろは全く動く気がなさそう」
配慮なんて言葉は知らないのか、秘匿したい領域にずかずかと踏み込んでくる。
「…ないよ。一生伝えるつもりもない」
伏せ目がちに言うと、ニーゴはまた首を傾げたようだった。
「なんで?」
「『なんで』??メンバー同士で恋愛ごと持ち込んでごたごたするわけにいかんやん。それに…」
それに、自分のこの想いが成就するなんて想像すらできない。
そんな分かりきった未来に、傷つくと知っていて飛び込む理由がない。
「ふぅん」
濁した俺の言葉の続きを汲み取ったのか、ニーゴは無感動に呟いた。
…いや、アンドロイドなんだから人の裏の感情なんて読み取れるわけがないか。
そう思った俺にもう一歩近づくと、ニーゴはこちらに手を伸ばしてきた。
俺のサイドの髪に梳くようにして触れる。
「かわいそう、まろ」
「…かわいそう?」
繰り返した俺の髪をするりと撫でて、ニーゴは「うん」と頷いた。
「だってそうでしょ。まろが周りのことやないこ自身に気を遣って気持ち押し殺してるのに、当の本人は何も知らずにのほほんとしてるんでしょ?」
…いや、違う。俺は自分が傷つくのが嫌で、保身に走っているだけだ。
「かわいそう、まろ。俺ならずっとまろの傍にいてあげられるのに」
髪を撫でていたニーゴの手が、今度はゆるりと頬に添えられる。
「…は…? なに言…っ」
「俺ならまろがないこにしてほしいこと何でもしてあげられるのに」
「…そんなん無理に決ま…」
「何で?」
純真無垢のような視線が刺さる。
「まろのことだから、ないこの代わりなんかにしたら俺に申し訳ないって思うの?それなら必要ないよ。アンドロイドだから傷つく心も持ってないし」
「いや、それだけじゃ…」
「じゃあないこへの義理立て? そんなんもっと必要なくない? あの人、まろがこんなに苦しんでること気づいてもないんでしょ?」
「…ないこのこと悪く言うんはやめて」
頭に添えられたニーゴの手を掴み、髪から離させる。
退くかと思ったニーゴは、一度深く瞬きをした後あろうことかもう一歩こちらに詰め寄った。
ほぼゼロ距離に近い。
「分かった。じゃあ口出しはしないから、せめてまろの癒しになりたい。俺にできること言ってよ」
「癒しって…」
「『ないこ』にしてほしいことないの?最初は3日の約束だったけど、俺ずっとここで暮らしてもいいよ。毎日まろにご飯作ってあげるし、掃除もできる」
「いや、あのさ…」
「疲れてたら頭撫でてあげるし、添い寝もできる。生理的機能も人間そっくりに造られてるから、それ以上のことも」
『それ以上』…!?それ以上て何!?
「ちょ、ちょっと待ってニーゴ!」
「まろは抱きたい派?抱かれたい派?好きな方選んでいいよ」
俺の手をぶんと優しめに振り払うと、あいつはそのままその腕を今度は首に巻きつけてきた。
かと思うと唇を寄せ、俺の頬でちゅ、と音を立てる。
「待っ…」
制止しかけた俺の唇のすぐ横を、ニーゴのそれが掠めていく。
人間と同じように温度を感じ、柔らかい。
頬に、顎に、鼻先に。
ちゅ、ちゅと次々にキスしてくるのに、唇には直接触れないのはきっとわざとだ。
それを少しもどかしく思ってしまった自分に気づいて驚く。
そんな俺に、ニーゴが囁いた。
「知ってるよ。まろは抗えないんだよね、この顔には」
ふふ、と笑む様子は、妖艶と評すにはぴったりすぎた。
さっきまでの純真無垢…清楚…そんな言葉で表されるものとは真逆な態度。
それに煽り立てられて、これまで必死に押し込めようとしていた感情が波のように勢いよく押し寄せる。
「…っ」
ニーゴの頬を両手でぐいと掴むと、やはり人間と変わらない柔らかい感触。
その唇に噛みつくように、荒くキスを落とした。
コメント
6件
青ニゴついにここまで来てしまいました……。別サイトですべて読み切っているのに、読めば読むほど新たに気づくことも多く、楽しく読みさせていただいてます💕💕 前回は『っか』までだったあの言葉 今回では『かわっ』まで言ってましたね🤭日に日に桃さんへの想いが増してるんだろうなぁ……とこの言葉から予想しています🙄🙄 次回も楽しみにしています💖
初💬失礼します…! ニーゴさんがなんでもかんでも見せようとしちゃうのがとてもすきで😭💘 「見せるな!」と「かわ…っ」のくだりが大好きで何回も読んじゃいます 徐々に人間らしさ、本物の桃さんに近づくように青さんが調教するのにはとても愛が感じられて素敵ですね🥹🤍 そして最後の展開!!終わり方といい、とても続きが楽しみになる書き方で尊敬します😭😭🤞🏻💫 素敵な投稿ありがとうございます😖😖
ニーゴさんが桃さんの妖艶な部分の化身みたいで、のほほんとした桃さんとはまた違う魅力があって素敵です…✨✨ ずかずかと入っていくのも桃さんのロボットであるからこそですもんね…その発想力に尊敬です…😭💕 ここでも桃さんのビジュ推し青さんが堪らなく好きです…! この後はどうなってしまうんだろうとドキドキが止まりませんでした…!!😖🩷このお話は必ずFAにしたいものです…癒しをありがとうございますෆ