テラーノベル
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文化祭まで、あと二週間。
放課後の教室には、色とりどりの画用紙が散らばっていた。
「石川。」
「……なに。」
「このポスター、どっちがいい?」
奏斗が二枚の紙を差し出す。
「……こっち。」
「即決?」
「見やすい。」
「さすが。」
奏斗は笑って、選ばれた方を黒板に貼った。
「ありがと。」
「別に。」
-–
「神崎ー!」
廊下から女子が顔を出す。
「これ運ぶの手伝って!」
「おー、今行く!」
奏斗は立ち上がりかけて、冴の方を見る。
「すぐ戻る。」
「……うん。」
その一言だけ残して、教室を出ていった。
静かになった教室。
冴は一人で紙を切り始める。
チョキ。
チョキ。
チョキ。
(……。)
(遅い。)
時計を見る。
十分。
十五分。
二十分。
(……まだ。)
自分でも理由は分からない。
でも。
教室のドアが開くたびに、無意識に顔を上げてしまう。
「……。」
(なんで。)
-–
ガラッ。
「ただいま!」
勢いよく扉が開く。
「遅くなった!」
奏斗だった。
「ごめん!」
「先生にも捕まっちゃって!」
「……。」
冴はハサミを置いた。
「おかえり。」
その一言。
奏斗は目をぱちぱちさせる。
「……え。」
「?」
「今……。」
「おかえりって。」
「言った。」
「……。」
奏斗は思わず笑った。
「なんか。」
「嬉しい。」
「……。」
「待っててくれた?」
「……。」
冴は視線をそらす。
「別に。」
「でも、待ってた?」
「……。」
返事はない。
その沈黙だけで十分だった。
-–
作業が終わるころには、外は夕焼け。
「ふぅー!」
奏斗が背伸びをする。
「終わったー!」
「……お疲れ。」
「石川も。」
二人は教室の窓を閉める。
そのとき。
夕日がガラスに反射して、冴の横顔を照らした。
「……。」
(きれい。)
奏斗は思わず見とれる。
「神崎?」
「えっ。」
「窓。」
「あ、ごめん!」
慌てて鍵を閉める。
「どうしたの。」
「……いや。」
「?」
「石川が。」
「?」
「……なんでもない。」
(危なかった。)
(”かわいい”って言いそうになった。)
-–
校門を出る。
夕風が少しだけ涼しい。
「今日は疲れたね。」
「……うん。」
「でも。」
奏斗は笑う。
「石川と一緒だったから、楽しかった。」
その言葉に。
冴は足を止めた。
「……。」
「どうした?」
「……。」
少しだけ迷って。
小さく。
本当に小さく笑った。
「……俺も。」
「え。」
「楽しかった。」
その瞬間。
奏斗は固まる。
「……。」
「神崎?」
「ごめん。」
「?」
「今。」
「?」
「人生で一番うれしい。」
「……大げさ。」
「本気。」
冴は困ったように笑う。
「……変なの。」
その笑顔を見て。
奏斗は心の中で思う。
(あぁ。)
(やっぱり。)
(好きだ)
コメント
1件
うわー、この距離感、たまらないですね…。冴くんが奏斗くんを待ってる間に時計を何度も見ちゃう描写とか、無意識に「おかえり」って言っちゃうところとか、じわじわ来ます。あと、最後の「俺も楽しかった」の小さな笑顔。あれは反則ですよ、奏斗くんが固まるのも分かります。夕日に照らされた横顔に「きれい」って思うのも、多分もう完全に恋に落ちてますね…。次が気になります!
*.꒰ঌ𝕐𝕦𝕚𝕜𝕒໒꒱.*
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Luna Emma
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