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ジェル「はぁ、疲れたぁ…」

ジェル「兄ちゃんちゃんと寝とるかなぁ」

ジェル「走って帰るか!」

ジェル「ジェル発射ー!」


1人でテキトーな事を言って帰った。

本当は、凄く凄く凄くこわい。

あの、兄ちゃんだ。何をするか分からない。

昨日の兄ちゃんは、兄ちゃんだけど兄ちゃんじゃなかったのかもしれない。

俺の知らない、兄ちゃん。

思えば、莉犬のことは何一つ分からないような気がした。

運動が得意なのかも分からない、勉強だって、遊ぶことだって、何一つ自由には出来ない。

いつだって隣には誰かいる。

そんな、莉犬が妬ましく思う日もあった。

でも、今は違う。

莉犬の生きている世界は、俺の思った世界の何倍も辛くて。息苦しくて。

それでも生きている莉犬のことを俺は凄く尊敬していた。兄として。一人の人間として。


家に着いた。

ジェル「ただいまー!莉犬兄〜?」

ジェル「なんもしてへんよなぁ?」

違和感に気づいた。おかしい。

兄ちゃんの声が聞こえない。

いつもの、少し頼りないような、それでも少し頼もしそうな、優しそうな。

大好きな声が。今日は聞こえなかった。


幸せが壊れる瞬間はいつでも傍にある。


リビングを見る。誰もいなかった。

ベランダを見る。洗濯物は干されていない。


そして、兄ちゃんの部屋に行こうとした。

その時に兄ちゃんを見つけた。


ジェル「兄ちゃんッ!!!兄ちゃんッ…!!!」


怖かった。

莉犬兄ちゃんがこのまんま死んじゃうじゃないかって怖くなった。

兄ちゃんに電話をしなくちゃいけない。

救急車に電話しなくちゃいけない。

わかっているのに。いざとなると、足がすくんで立ち上がれなくなっていた。


ジェル「動けよッ…!!」

るぅと「ジェルくん?どしたの?」

ジェル「莉犬兄ちゃんがッ…!」

るぅと「へ、?」

るぅと「莉犬!莉犬!救急車!救急車!」

るぅと「救急車呼んでッ…!」

るぅと「ジェルくッ…!!!」

ジェル「ごめッ…」


電話をかけた。直ぐに来るとの事だった。

兄ちゃん達に電話をした。

病院で待ち合わせをすることにした。

兄ちゃんの頭からは血が垂れていた。

顔は青白く、酷く疲れ切っている。

くまも酷い。眠れていないのだろうか。

腕が目に入る。

ジェル「こんな細いん、?」

るぅと「異常…ですよね、」

ジェル「何を抱えてるん、?」

ジェル「なんで言ってくれへんの、?」

ジェル「そんな頼りないん?」

ジェル「俺はッ俺はッ!!」

るぅと「ジェルくッ…ポロポロ」

るぅと「僕だって分かりませんよッ…!!」

るぅと「分かったら僕だってもっと」

るぅと「色んなこと出来てるんですッ…」

るぅと「なんでッ…なんでなのッ…」


幸せは脆い。  脆くて儚い。

すぐに壊れて、死んでしまう。

両手いっぱいに幸せをすくっても、手からは無数の幸せが零れていく。

零れた幸せは、誰にも届かない。

零れた幸せは花となってやがて枯れる。


それでも人は幸せを欲しがる。

枯れゆく花に心を奪われ、枯れると知っていても愛おしいと思う。

だからまた手を伸ばして、何度でもすくい直す。


幸せは死にゆくもの。けれど、死にゆくからこそ美しい。

無数の幸せをすくっては零し、すくっては零す。

その儚さに、人の心ははどうしようもなく惹かれてしまう。


たとえこの手に残るのが、ひとひらの幸せだけでも。

それを抱きしめて、そっと微笑んでいたかった。





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