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『俺キルア。』
俺にとっても、きっと、ゴンにとってもかけがえのない大切な日々だったと思う。
『俺はゴン!!』
できるのなら壊したくなかった。
でもゴンには親父に会うっていう目標があって 、その目標が達成される時そこに俺がいるのは何か違う気がした。
『キルアじゃなきゃダメなんだ』
だからいつか別れが来ることなんて分かってた。これは当たり前じゃないって覚悟してた。
…つもりだった、いざ離れるってなるとやっぱり胸が苦しくて、泣きたくなるのを必死に堪えなきゃいけなくなる。
だっせーな、俺。
「お兄ちゃん達で遊んで来ればいいよ!
あたしはお留守番してるから!」
「そんな!悪いよ!!」
「あー!あたし体調悪くなってきちゃった!そーゆうことで!」
アルカは布団にこもり行ってらっしゃ〜い!と元気よく言った。
「アルカ!なにかあったら連絡するんだぞ!絶対だからな!」
「行ってくるね!!」
ゴンとキルアはアルカに声をかけ、アルカが作ってくれた最後の2人の時間を有難く楽しむことにした。
何処に向かうでもなく適当にブラブラと歩いていると、いきなりゴンが何かに気づいたように指をさした。
「ねぇキルア!!」
「ん?」
「あそこにアイスクリーム屋さんがあるよ!買おうよ!!」
目をキラキラとさせて喜ぶゴンを見るのがこれで最後だと思うと眉を寄せずにはいられなかった。
「…おー、そうだな!!」
買ったアイスクリームをベンチに座りぺろぺろと舐めているとふと視線に気づく。
「なんだよ、ゴン」
「1口交換しようよ!俺バニラ味も食べたい!」
そう言うゴンに俺はしょーがねーなとバニラアイスクリームを差し出す。
「ん。」
「ありがと!!キルア!」
ゴンは美味しそうにバニラアイスクリームを口に入れた後チョコアイスクリームを俺に差し出す。
ゴンは気にしてなさそうだけど、これってなんだかすごく…すごーく恥ずかしいことじゃないか…?
「俺は別にいーよ…!」
「なんで!キルアも食べてよ!」
「や、やめろって!恥ずいんだよ!!」
素直な気持ちを伝えると案外あっさり俺からチョコアイスクリームを離しプクっと頬を膨らませる。
「キルアとこうしてられるのも、今日で最後なんだね。」
ゴンはさっきの子供らしい顔ではなく、笑っているが何処か寂しげな雰囲気を感じる表情で下を見ていた。
「…」
「…」
2人の間に沈黙が続く。
「最後のデートになっちゃうね。」
「!?」
沈黙を破ったゴンは悲しげにこちらを見て消え去りそうな声で確かにそう言った。
「そ、それってどうゆう…!」
ポツ 、 ポツ
ゴンが言った意味深な言葉の意味を確かめようとした途端、ふんわりとした髪の毛にポツポツと水が数滴落ちる。
「ゲッ !通り雨!」
ゴンはそう言うと俺の手を掴み、慌てて屋根のある公園の休憩スペースへと足を急いだ。
ザーーー
座りながら激しく振る雨を眺めていると右肩に重みを感じ、視線を移す。
ゴンはキルアの肩に頭を乗せながら話し始める。
「俺さ、キルアに出会えて本当に良かった。沢山酷い事言ったり、俺のわがままに付き合わせちゃってごめん。俺といてくれてありがとう。」
「何バカ言ってんだよ、俺はゴンが居なかったら、ずっと兄貴に支配され続けてたと思う。そんな苦しみから救ってくれた事を思うと俺の方がずっと、ゴンに感謝してるんだぜ。 」
キルアの言葉を聞いたゴンは頭をあげてパッと見開いた目でキルアを見つける。
恥ずかしい事を言ってるのは自覚している。でもここで伝えないときっと後悔する。
だから俺の思いこのまま全部お前に伝える。
「俺さ、俺!!お前の事…!」
「きるあぁ〜!!きるぁ〜…!」
恥ずかしさで逸らしていた視線をゴンに向けるとゴンは大きな口を開けてえぐえぐと涙を流していた。
「は!?な、なに泣いてんだよ!!」
いきなり泣き出すゴンに驚きあたふたと顔を近づけた途端、ゴンはキルアに抱きついた。
「おれ…ぇ!おれ!キルアがすき、!大好きなんだぁっ…!」
泣きながら必死に俺に伝えてくるゴンに釣られ泣いてしまいそうになった涙腺に力を入れる。
「俺だって、俺だってゴンが好きだよ!!」
「はなれたくないよぉ…!」
ザーザー振る雨の音とうえーんと大きな声で泣くゴンの声を聞きながらゴンを抱きしめる。
何度も嗅いできたゴンの匂いを包みながら歯を食いしばり、静かに涙を零す。
《雨宿り》完