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しばらくすると、俺たちのいる場所、いや、王宮全体に警報ブザーが鳴り響いた。
『外壁塔、正面入口より報告! 侵入者、麦わらのルフィです!』
「…んん?」
俺たちが見ている映像には、ルーシー、もといルフィが映っている。なのに何故、ドフラミンゴは眉間に皴を寄せた。
「おい、ジェイデン。あのコロシアムにいるのは誰だ?」
ぷつ、と俺の口を塞いでいた糸が切れる。話せってか? そんなこと言われても俺にも詳しい状況は分からねえよ。
「さぁ、知らないな。俺はドレスローザに来てからほとんどローと一緒に行動していたんだ。ルフィがどんな行動をしているかなんて知らない。そもそもルフィは誰かの想像、思惑通りに動くような男じゃねえんだ」
「……一体何が起きてる!」
と、ドフラミンゴは立ち上がる。それから少しして、バッファロー、ベビー5、数名の部下が俺たちのいる部屋に入ってくる。
「ロー、起きてくれ、ロー」
俺はあまりローの怪我に障らないようにローの足に頭突きし、彼を起こそうと試みれば、彼は小さく呻いた後、ゆっくり瞼を開いた。
「ジェディ…!?」
「どうして、とか、なんで、とかもうこの際聞くなよ。俺も結構頑張ったんだ」
ローは俺を見て驚きの声を上げる。俺はそれを無視して、再びドフラミンゴの方に視線を移す。
「…ロー、お前らの狙いはSMILEの工場、それだけのはずだ。なのに何故、麦わらたちとグリーンビットの小人たちが繋がってる? 昨日今日の思い付きで出来ることじゃねえ」
「小人?」
「連中はどうやって地下へ侵入した? なぜ、シュガーを狙う? 連中の動きはどういうわけか、俺の都合の悪い方悪い方へ繋がっていきやがる。これが偶然でなけりゃ、奴ら……この国の闇の根幹を知ってることになる」
俺とローが無言のままでいると、ベビー5が俺とローの頭を引っ叩いた。
「答えなさい! 若が聞いてんでしょ!」
何の権限があって俺たちを叩くんだよこいつ……。そう言いたげに俺たちが睨めば、ベビー5はバッファローに泣きついた。泣くならはじめからやるなバカが!! 気ィ抜けるわ!!
「言ったはずだ。あいつらとおれとはもう関係ねえ。同盟は終わってる。お前の言ってることはおれにはほぼ理解できねえ」
「んん? おれを騙そうとしてるのか? それとも本当に知らねえのか……こういうとき、ヴァイオレットがいりゃあ瞬時に見抜けるんだが……それとも、お前の差し金ってことはねえよな? リク王」
ドフラミンゴの視線の先にいるリク王はただジッとドフラミンゴを見据えていた。小人、トンタッタ族はかつてリク王に仕えていた種族。だからリク王が知っていてもおかしくはない。
「ルフィは……麦わらの一味は……」
「ん?」
「あの一味は存外お人好しなんだ。俺が言うのもなんだけどな。海賊らしくないって言えばいいのか、仲間のために命を懸けて戦うことができるんだ。それに、自分の正義を信じてる。そんで、さっきも言ったけど……ルフィは誰かの想像、思惑通りに動くような男じゃねえ」
あいつは海賊王になる男だからな。そう呟けば、ドフラミンゴは再び不愉快そうな顔をする。
「お話し中、失礼します」
「…なんだ」
「1階に若がいたという報告が」
「ああ? なんのことだ?」
「若にそっくりな奴がいたということだすか?」
「おれに似た奴がいるか? 王宮に」
錦えもんか? あいつの能力ならそれらしい変装もできるだろうし。
そんなことを思っていると、王宮、いや、国中が騒がしくなっていく。
――プルプルプル…プルプルプル…ガチャ
『シュ、シュガーが、すまねえドフィ~!!』
電伝虫からドフラミンゴの最高幹部、トレーボルの泣き声が聞こえる。
「シュガーがどうしたんだ?」
『き、き……気絶! 気絶しちまった~!』
その言葉に、ドフラミンゴの口角が下がる。
「おい、何の冗談だ! 10年かけて増やし続けた俺たちのしもべどもが人間に戻ってく、ホビホビの呪いが解けていく!」
「う……」
「若~! コロシアムが!!」
コロシアムに映る映像、おもちゃたちが人間に戻っていく。
報告をする電伝虫が鳴りやまない。すべてのおもちゃに変えられた人間に戻っていっているのだ。混乱も起こる。国中に歓喜の声が広がっているのが聞こえる。それと同時に、ドフラミンゴの中に焦りや怒りが渦巻いているのを感じる。
電伝虫からは援軍を求む声の後、断末魔に変わる。次々におもちゃの奴隷にされていた人間たちが復讐の炎に燃えている。
「クソどもが……」
ドフラミンゴがそう呟いたとき廊下の窓が開き、男が飛び込んできた。
それはコロシアムに銅像を建てられ、その偉業を忘れられながらも語り継がれていた男、コロシアム史上最強の剣闘士、そして元リク王軍軍隊長――キュロスだ。
隻脚の彼は剣を握りしめ、飛び上がる。
「10年間、お待たせして申し訳ありません! 今、助けに来ました!!」
彼はドフラミンゴの首を落とした。
「真のドレスローザを、取り戻しに来た!」
「ドフラミンゴ様!」
「あぁっ、若~!!」
バッファローがキュロスに攻撃を仕掛けようとするが、すぐに剣先を向けられ、身動きが取れなくなる。
「これより、全ての偽りを断ち切らせてもらう!」
ドフラミンゴの身体が床に転がる。