シロを連れて付近を探ってみると、すぐに不思議な場所があることに気づいた。
そこには直径20m程の大穴が地面にぽっかりと口を開けていたのだ。
その大穴の手前には人工物でもあるかのように整備された綺麗な広場があり、奥には幅広の階段が地下へと伸びている。
「…………!?」
これってダンジョンだよなぁ。
この国のダンジョンといえば迷宮都市カイルにあるやつだけだったよなぁ。
「…………」
少々面倒なことになりそうだぞ。
これだけ近いと町に被害が出そうだし、まずは冒険者ギルドのギルマスに知らせるべきだよな。
報告だけして、あとは悠長に高みの見物……、という訳にはいかないだろうね。
俺はシロを連れてすぐにモンソロの町へ引き返すことにした。
……………
………
…
今しがた冒険者ギルドに帰ってきた俺は、目を細めながらある人物を探していた。
う~ん、ギルド内を隅から隅まで見まわす。
……居たっ!
探していたのはアーツである。タイミングよく居てくれて助かった。
俺はアーツの近くに行き声をかけた、
「アーツ、ちょっといいか?」
「おぅ、ゲンか。今帰りか?」
まだ何も知らないアーツは呑気にあいさつを返してくる。
「ちょっと一緒に来てくれ!」
そう言ってアーツの手を引っぱり人の少ない壁際に連れいく。
「おいおいどうしたんだ。何かあったのか?」
「ああ、ちょっとな。一緒にギルマスに会ってくれると助かる」
俺の真剣な様子を見てただ事ではないと察したのだろう。アーツはすぐに頷いてくれた。
さっそく、ギルドカウンターにてギルマスへの面会を希望しアポイントを取る。
『要件は?』と聞かれたので、『オーガ討伐の件についてだ』と言っておいた。
職員は少し首を傾げていたが、隣のアーツを一瞥すると何も言わずにギルマスへ取り次いでくれた。
『今からでも大丈夫だ』との返事をもらい、すぐに俺たちはギルド長室の扉を叩いた。
入室の許可をもらいアーツと共に中へ入った。
ギルドマスターのガンバは執務机にて書類の整理をしているようだ。
机の上には書類が積み重なっており、いくつもの山を形成していた。
ガンバはその山の横からヒョイと顔を出すと、
「ちょっと、そこに座って待っててくれや。途中で止めると分からなくなるんでな」
………………
言われるがままソファーに腰掛けて待つことしばし、ガンバが対面に座ってきた。
「で、どうしたんだゲン。またオークでも出やがったかぁ?」
「オークが出るのも大変ですが、今回はとんでもない物です」
「それで何があったんだ?」
「もうズバリ言いますね。ダンジョン (迷宮) です!」
「「はぁ――――?」」
ギルマスとアーツが同時に叫ぶ。
「冗談でこんなことは言いませんよ」
そう言いながら懐から魔石を取り出しテーブルに並べていく。
「…………」
「…………ゴクッ」
ガンバの唾を飲み込む音が聞こえてくる。
俺はギルマスであるガンバに国境周辺の地図を出してもらうと、ダンジョン (迷宮) がある場所に印を入れた。
外に出てきた魔獣や迷宮入口の構造などについても詳しく説明していく。
「この事は誰かに話したりしたか?」
「いいえ、大変なことになりますからね」
「おっ、おう、良い判断だな。この件は確認して片付くまでは黙っていてくれ」
「それは構いませんが……。ただ俺が世話になっているマクベさんには後でしっかりと便宜をはかってください。そうでないと不義理になってしまいますので……」
「おう、そうだな。マクベは商人だったな。そいつはしっかりと考えておく。アーツも聞いたな!」
「で、今日のところはオーガ討伐は成功でいいですよね。ガンバさんからの確認書をください」
「おう、それもそうか。こうしてしっかり魔石も出ているしな。だが、この魔石はギルドの買取りを含めて、しばらく何処にも出さないでくれ」
「それと証拠品として魔石をひとつ預かってもいいか?」
「はい、勿論それは大丈夫です。預かり証を書いていただければ」
「それは当然だな」
ガンバはそう答えると依頼の終了確認書と魔石の預かり証を渡してくれた。
そして、再び指名依頼が俺とアーツに向けて発せられた。
今回の依頼はダンジョンの確認と探索である。
探索の方はダンジョンであるという定義を固めるため試験的に行うものだ。
その内容はモンスターの確認と魔石を持ち帰ることにある。
できれば、次の階層への階段を見つけて来てほしいそうだ。
それに探索は3名以上でということになった。
「もう一人は誰かおるか?」
「それならC級のコリノさんなんかどうでしょう。多少面識もありますし……」
「では、その3名で!」
ということで、コリノさんには冒険者ギルドの方からすぐに連絡がいくことだろう。
冒険者ギルドの方でもギルド員を派遣するため、今から準備をしていくそうだ。
俺たちは明日の昼までに探索の準備を済ましギルド長室に集合。
こちらで指示を受けたのち現場へ向かって欲しいとのことだ。
今日のところはこれで解散らしい。
このあと、アーツとも簡単に打ち合わせをする。
ダンジョン突入に備えていろいろと準備が必要だからな。
しかし、ド素人の俺には何を準備したらいいのか皆目見当がつかない。
そこで明日の朝、ギルドに集合して皆で探索の準備しようということになった。
もちろん、これはアーツからの提案である。
いつものことであるが、世話好きのアーツには本当に頭がさがる。
俺は冒険者ギルドを出てから中央広場へ向かった。明日に備えて
シロを連れて買い食いをしながら串焼き屋を廻っていく。
そこで30本の串焼きをインベントリーに納め家路についた。
夕食前に日課になっている剣の素振りを行なっていく。
真剣に200回も振っていると顔も腕も玉の汗がびっしりだ。
井戸で汗を流し顔を拭う。
「ふぅ―、夏場は井戸の水が冷たくて気持ちいいなぁ」
ついでだ、明日からの探索に備えて飲み水の確保もしておくか。
3つの桶に水を汲み。
シロに浄化を掛けてもらい、水だけをインベントリーへ溜めていく。
それからみんなで夕食をいただいた後、ミリーにせがまれたのでリビングにて童話 (お菓子の家) を語り聞かせた。
今は自室に戻って魔力操作の訓練を続けている。
それにしても、ようやくエアハンマーをものにできたなぁ。
――とても満足。
ただ注意点をあげるなら、味方が近くに居るときは配慮が必要だろうね。
お構いなしにぶっ放すと間違いなく鼓膜が破れるな。
俺とシロは問題ないけれど……。
また、いろいろと挑戦していきたいものだ。
あっ、そうそう、今日は初めてダンジョン (迷宮) のモンスターとも戦ったのだ。
明日からのこともあるし確認しておかないとな。――鑑定!
ゲン Lv22
年齢 17
状態 通常
【従魔】 シロ (フェンリル)
HP 153⁄153
MP 223⁄226
筋力 95
防御 90
魔防 102
敏捷 75
器用 73
知力 145
【特殊スキル】 時空間魔法(U) 身体頑強 状態異常耐性
【スキル】 鑑定 (5) 魔法適性(全)魔力操作(7)剣術 (3) 格闘術 (1)
【魔法】 風魔法 (5) 氷魔法 (3) 身体強化(4)結界魔法(3)
【称号】 転生者、シロの契約者、
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
おおっ、レベルも身体パラメーターもかなり伸びているなぁ。
やっぱりオーガとワイバーンは経験値も大きかったようだ。
それにシロからも経験値がもらえるからレベルも上がりやすいしな。
あとは女神さまの加護がどのように作用しているのか、これは謎のままであるが……。
成長に大きく関わっているのは確かだろう。
――女神さま、ありがとうございます。
そのうち、また教会へ参りますから。
教会へ……ううっ……。
すこし目眩がしたけど特に問題はない。
明日はダンジョンかぁ。
危険なところだよね。
あまり近づきたくないと思ってたけど……。
俺もレベルが上がって力もついてきたよな。
それに何といってもシロが居てくれる。本当に頼もしい限りだ。
そんなわけで、腕試しする意味でもちょっと楽しみではあるかな。
さてと明日に備えてしっかりと休むことにしますか。
――おやすみ~。
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