テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
律子、玄関を上がってすぐ、
(律子)「萌、誰か来た?」
ソファでスマホをいじっている萌、スマホを見たまま、
(萌)「んー、あれ、あの、湊斗くん」
(律子)「·····(やっぱり)」
(萌)「(律子に振り向いて)覚えてない? お兄ちゃんの友達」
(律子)「·····何しに来たの?」
(萌)「お兄ちゃんの連絡先聞きに」
(律子)「は?」
(萌)「湊斗くん、知ってたんだね、耳のこと。高校の友達は誰も知らないと思ってた」
(律子)「·····知らないよ」
(萌)「知ってたよ」
(律子)「知らないよ」
(萌)「知ってたてば。知ってる? って聞いたら知ってるって」
(律子)「何を知ってるって言われたの?」
(萌)「·····」
(律子)「湊斗くんからそう言ったの?」
(萌)「(やらかしたと気付いて)·····あ」
(律子)「(やっぱり友達思って、溜め息)·····」
(萌)「·····ごめんなさい」
(律子)「·····お兄ちゃんに謝りなさい」
湊斗、早足に駅へ向かう。
鼓動が速まり、足を止めて、深呼吸する。
スマホに着信。
紬から。
躊躇い、出られない。
電話が切れる。
その場にしゃがみ込む湊斗。
(紬)「·····出ないや」
紬、スマホを置き、お弁当を食べる。
ゆかこ、机を挟んで紬の前に座って、
(ゆかこ)「彼氏?」
(紬)「はい」
(ゆかこ)「なんか急用?」
(紬)「いや、ただの次会う約束なんで、LINEでもいんですけど。私、電話派で。電話好きなんです。声で話すほうが楽だし」
(ゆかこ)「ふーん。高校の同級生だっけ?」
(紬)「はい」
(ゆかこ)「高校からずっと付き合ってんの?」
(紬)「·····いえ、同窓会で再会パターンです」
帰りの電車を待つ湊斗。
想へLINEを送ろうとするが、悩んで書いては消しを繰り返す。
(ゆかこ)「どんな人?」
(紬)「優しいです。なんかもう主成分優しさって感じの人で」
(ゆかこ)「何それ」
(紬)「怒らないんです。怒ったとこ見たことなくて。人のために優しさ全力で使っちゃって、自分の分残すの忘れちゃう人で」
(ゆかこ)「生きづらそうだね」
(紬)「(苦笑い)」
(ゆかこ)「その彼氏がスピッツ好きなんだ」
(紬)「え?」
(ゆかこ)「言ってたじゃん、前に。好きな人が好きでー的なこと」
(紬の声)「あー違います。好きだった人です。昔の、好きだった人」
想、CDショップの前を通りかかる。
ふと足を止め、店のほうを見る。
(想)「·····」
諦めたように視線をそらし、また歩き出す。
(ゆかこ)「あ、元カレ?」
(紬)「·····昔付き合ってた·····好きだった人です」
(ゆかこ)「元カレじゃん」
(紬)「·····好きだった人です」
四葉わう
49
26
29
コメント
1件
第14話、読み終えました。萌の不用意な発言で律子の空気が変わった瞬間、すごくドキッとしました。「主成分優しさ」って紬が湊斗を評した言葉、ほんとそのままな感じがして胸にくるなあ……。優しさの裏側で誰かを守ろうとして、自分を削ってしまうタイプなんだろうなって。そして「好きだった人」と言い直す紬の苦みも。スピッツがまた繋がってるのも気になる要素ですね。