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千葉県市川市。
夏休みの朝、澄んだ青空の下、小学5年生の彩(あや)は大きなリュックを背負って祖母の家へやってきた。
「おばあちゃん、ただいま!」
彩の元気な声に、祖母が笑顔で迎えた。
「よく来てくれたね、彩ちゃん。待ってたよ」
祖母の家は古い和風の一軒家で、家の裏には大きな木造の蔵が建っている。
彩はその蔵にずっと興味があった。
「この蔵にはね、家族に伝わる宝物がしまってあるのよ」
祖母がそう言って小さな木箱を見せた。
「何の宝物?」
彩は目を輝かせて尋ねた。
祖母は微笑みながら、金色に輝く小さなペンダントを取り出した。
「これよ。ずっと大切にしてきたんだ」
その夜、彩はペンダントのことを考えながら眠りについた。
夏休みは楽しいことがいっぱいだけど、この宝物の謎も気になって仕方がなかった。
翌朝、彩は祖母の許可をもらって蔵の鍵を借り、中に入ってみることにした。
中はひんやりとしていて、ほこりっぽい。
古い木箱や布団が積み重なっていた。
その奥の棚の上に、小さな木の箱が置いてあり、彩はそっと蓋を開けた。
中には輝く金色のペンダントがあった。
「これが宝物か…」彩はそっと手に取った。
そのとき、蔵の扉の外で足音がした。
弟の大輝(だいき)がやってきて、元気よく話しかけた。
「彩お姉ちゃん、なにしてるの?」
彩は笑顔でペンダントを見せた。
夏休みの間、彩はペンダントのことを調べたり、近所の友達と遊んだりして楽しく過ごした。
しかし、ある朝──
「彩、おばあちゃんが大変よ!」
弟の大輝が慌てて叫んだ。
「どうしたの?」
彩は慌てて祖母の部屋に駆けつけた。
祖母は涙ぐんでいた。
「宝物のペンダントがなくなってしまったの」
彩はすぐに蔵へ駆けつけた。
箱は空っぽで、ペンダントは見当たらなかった。
窓の鍵は閉まっていて、泥棒の形跡はない。
ただ、床に小さな足跡がいくつか残っていた。
「これは……子どもの足跡かもしれない」
祖母は言った。
彩は友達の亮(りょう)に相談した。
「亮、ペンダントがなくなっちゃった」
「よし、僕も手伝うよ!」
彩と亮、そして弟の大輝は、家中をくまなく探し、近所の人にも話を聞き始めた。
蔵の壁にひっかかった毛糸の繊維、消えた祖母のマフラー、そして見つかった隠し扉の存在…。
第2章:宝物の謎
彩と亮、そして弟の大輝は、ペンダントが消えた謎を解くために、まず家の中をもう一度調べ始めた。
「足跡が小さいってことは、子どもか小柄な誰かが来たってことだよね」
亮が言った。
「でも窓も鍵かかってるし、泥棒が入った形跡もない」
彩も首をかしげる。
祖母が言った。
「家族の誰かが知らずに持ち出したかもしれないわね。でもみんなペンダントのことは知っているし…」
彩は部屋の隅で、昨日祖母が編んでいた毛糸のマフラーがなくなっていることに気づいた。
「おばあちゃんのマフラーが消えてる!」
「それって関係あるのかな?」
亮が疑問を口にする。
翌日、彩たちは近所の友だちや親戚に話を聞くことにした。
彩の親友、花子は言った。
「昨日の夜遅く、近くの公園で毛糸のマフラーをしている子を見かけたよ」
「どんな子だった?」
亮が興味深そうに聞いた。
「暗くてよく見えなかったけど、小さかった気がする」
「じゃあ、ペンダントとマフラーは何か関係があるかもしれない」
彩はそう思った。
その夜、彩は蔵の壁をじっと見つめた。
そこに、小さな毛糸の繊維がひっかかっているのを見つけたのだ。
「ここでマフラーが引っかかったんだ!」
翌朝、彩たちは蔵の壁を詳しく調べた。すると…
壁の奥に、隠し扉があった。
「こんなところに扉が!」亮が驚いた。
隠し扉を開けると、小さな部屋が現れた。
その部屋には、金色のペンダントと毛糸のマフラーが一緒に置かれていた。
彩たちは驚きながらも、その部屋で見つけた祖母の幼い頃の日記を読み始めた。
日記には、祖母と幼なじみの秘密の約束や、宝物を隠した思い出がつづられていた。
日記の内容はとても古く、文字も少し読みづらかった。
しかし、彩たちは一生懸命に読んだ。
そこには、幼い祖母が大切な友だちと一緒に、宝物を隠した約束が書かれていた。
「ここに隠したんだよ」
祖母は昔、幼なじみの浩(ひろし)くんと一緒に、この隠し部屋を作ったらしい。
「浩くんは、引っ越してしまったけど、また会いたいと思っていたの」
彩はその日記を読み終わると、胸が熱くなった。
「宝物はただのものじゃない。思い出のカケラなんだね」
その日から、彩たちは祖母と浩くんの思い出を辿るため、近所の人に話を聞き始める。
第4章:幼なじみの影
祖母の幼なじみの浩くんのことをもっと知るため、彩たちは近所の人に話を聞きに行った。
近所の老婦人、佐藤さんは優しく語った。
「浩くんは昔、とても明るくて元気な子だったわ。
でも急に家族と引っ越してしまってね、長い間会っていないのよ」
彩は胸に秘めた決意を新たにした。
「浩くんに会って、宝物の話をしなきゃ」
そんな中、彩たちは近所で見かけた見知らぬ大人の男性に気づく。
彼はしばしば祖母の家の周りをうろついているようだった。
「何者だろう?」亮が疑問を口にした。
彩は警戒心を抱きながらも、その男を尾行し始めた。
すると、彼は古い廃屋に入り込んだ。
「なんであんなところに?」彩は不思議に思った。
その頃、祖母の編んでいた毛糸のマフラーが見つからず、彩たちはそれを追って調査を進めていた。
近所の公園で、マフラーの一部が木の枝に引っかかっているのを発見。
「これは…誰かが引きずった跡かもしれない」大輝が言った。
「犯人はまだ近くにいるのかも」亮が言い、みんなは身を引き締めた。
ある晩、彩たちは勇気を出して夜の蔵の周りを探索することにした。
月明かりに照らされた蔵はいつもより不気味で、足音や風の音がやけに大きく感じられた。
「気をつけて進もう」亮が小声で言う。
蔵の壁の隠し扉の近くで、何かがひそひそと動く音がした。
「誰かいる…?」彩がつぶやくと、影はすぐに消えた。
怖さと好奇心が入り混じる中、彩たちはさらに調べ続けた。
翌日、祖母が彩たちに話し始めた。
「実はね、私にも秘密があるのよ」
祖母は若い頃に抱えていた悩みや、浩くんとの友情、そして家族に言えなかった過去を語った。
「宝物は私たちだけの秘密だった。でも、そのせいで誤解も生んだの」
彩は祖母の話を聞きながら、事件の真相に近づいている気がした。
彩たちは日記をよく調べてみることにした。
すると、文字の間に隠された暗号のようなメッセージを見つけたのだ。
「これはただの日記じゃない、何かのヒントがあるはず」亮が言った。
メッセージを解読しながら、宝物の本当の意味や、祖母と浩くんの約束の秘密が少しずつ明らかになっていく
日記の秘密を解き明かした彩たちは、祖母と浩くんの友情の深さを知る。
幼いころ、二人は「いつかまた会って、宝物を一緒に守ろう」と約束していたのだ。
「友情って、時を超えても変わらないんだね」
彩はしみじみと思った。
そんなある日、祖母の家に謎の大人が現れた。
怪しげな雰囲気を持つその人物は、宝物のことを知っているようだった。
「君たちには関係ないことだ」と冷たく言い放ち、彩たちを追い詰める。
しかし、亮の機転でその人物の正体の手がかりを掴むことに成功する。
事件が大きくなり、彩の家族も巻き込まれることに。
みんなで協力し、祖母の家を守るために力を合わせる。
「家族って、助け合うものなんだね」
彩は新たな絆を感じた。
真夜中、彩たちは隠し扉のさらに奥を探検することにした。
懐中電灯の明かりの中、壁のひとつに不自然な凹みを見つける。
「ここだ!」彩が声をあげて押すと、壁が静かに動き、秘密の小部屋が現れた。
中には、祖母と幼なじみが交わした手紙や、宝物の由来を示す古い写真が大切に保管されていた。
祖母が皆の前で真実を語り始めた。
「宝物は、私たちの友情の証だったけれど、ある誤解から家族間で隠され、誰も話さなくなってしまったの」
謎の訪問者も、祖母の過去に関係する人物だったことがわかり、すべての誤解が解けた。
事件が解決し、彩たちは家族や友達とともに新しい夏を迎えた。
宝物の真の意味を知り、友情と絆の大切さを改めて感じる。
「これからも、大切な人と一緒に歩んでいこう」
彩はそう心に誓った。