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1日目
私が見たのは、薄暗い学校だった。
見たことがない学校だった。
窓ガラスに覆われた美しい校舎の壁は、緩やかな曲線を描いていた。
人々は、広々とした運動場のような場所で遊んでいた。端には屋外時計が設置されていて、時刻は夜の12時以降を示していた。しかし、夜とは思わぬくらい明るかった。
真昼間のように明るかった。
私と同年代くらいの友人らしき2人は、気がつけば私の両端に居た。見知らぬ人だったが、私と仲が良さそうに話していた…。声が、聞こえなかった。名も知らない人物だったが、私は妙に安心感を覚えてしまった。
ただ、不思議なことにその世界は 色がなかった。
私が見たものは、黒と灰色でつくられた、色がない世界だった。
自分の空想の場所だとしても、なぜ色がないのか。私の夢が想像しきれなかったのか、或いはそのような世界なのか。
当時の私は、疑問にすら感じていなかった。
私と見知らぬ友人が歩いて運動場へ近づいて行ったとき、それは起こった。
突然、校舎の窓ガラスが割れ、中にいた人々が窓ガラスの付近で血を流して倒れていく。
当時の私は、これが夢だと分かっていた。だが、あまりにも奇妙な世界観に傍観することしかできなかった。
運動場にいた大勢の人々も、一瞬にして消え去った。残ったのは、私と周りにいた友人2人だけになった。
「あれは何?」
突然 声が聞こえた。気がつけば、校舎の前まで見知らぬ友人2人と来てしまっていた。
覚えている。私たちが割れた窓ガラスから校舎の中に入る前、不思議な白い大きな顔面のバケモノが居たのを。
私たちが校舎へ足を踏み入れた時、突然校舎の中だけ色がついた。そして、外は真っ暗闇だった。まるで先程とは別の世界に来たみたいだ。
先程みたバケモノがまだ頭の中に残って、私は一刻も早く隠れたくなった。その時、白い大きな顔面のバケモノが私たちに気がついた。友人は慌てて何かを言った。
「とりあえず、ーーーをーーー!」
私たちは3方向にわかれて隠れた。
そのバケモノは、私の後ろを通り、友人を目掛けて追いかけて行った。
私は目の前にあった女子トイレの1番奥の個室に隠れた。
私は震えていた。
夢だとわかっていた。だが、その恐怖は計り知れなかった。
まるでゲームの中に入り込んでしまったみたいに。
だが、ゲームのようにスムーズに動けるはずがなかった。なぜなら、私の思考がそこに居るからだ。
私はずっと、個室に閉じこもったまま、身を縮めて目が覚めるのを待った。
だが、一向に目が覚めなかった。
友人達は、無事だろうか?
そんなことを考えながら過ごしていくうちに、徐々に体が冷えていった。
その時、視界の隅に赤いドライバーが落ちていることに気がついた。私はふと上を見上げ、ドライバーで開けられそうな排気口があることに気がつく。
しかし、1つ問題があった。
トイレの上の部分は壁がなく、その排気口に手を伸ばそうとすれば、私の姿が確実に見えるのだ。
見つかったら、終わる。
私はそのバケモノが来ていないのを確認して、時間をかけてようやくその排気口を開けた。
排気口に入って音を立てずに進んでいく。
早くこの夢が覚めろ、覚めろ と、ずっと祈っていた。
排気口は廊下の上に直接ついているため、音を立てれば確実に気づかれる。
私は先が見えない排気口の中を一生懸命四つん這えで進んでいた。
しかし、もう 遅かった。
私は誤って ギギ……という音を立ててしまった。
心拍数が無性に早くなっていく。
怖い。怖い。なぜ目が覚めないのか、なぜ目が覚めないのか…。
私は徐々にこの夢が、夢なのか疑いはじめた。私は元に戻れるのか、怖くてたまらなかった。
その時目の前が暗くなり、気がつけば私はベットから身を起こして暗闇の中で頭を抱えていた。
あぁ、戻ってこれたんだ。
第一に、安心感を抱いた。
偶然、今日は悪い夢を見てしまった。
そう思い込むことにした。
しかし、あの見たことがない学校や友人たちは一体なんだったのか、謎のままだった。
まだ時刻は深夜の4時を指していた。
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