拝啓、親愛なる弟・立花 千明へ
まず最初に15歳の誕生日おめでとうございます。私が側で祝えないことをどうかお許しください。私が死んでから5年が経つことでしょう。死んだ姉からの手紙を読んで、驚いている千明を見れないことに悲しく思います。
まず、貴方はいつしか私に、「生きろ、死ぬな」とおっしゃいましたが、貴方が私を抱きしめなければ、もしかすると私は今でも生きていたのかもしれません。
貴方は幼い頃からまるで全てを知っているかのような冷たい子でしたね。今思えば貴方の行動や考え全てが恐ろしくて堪りません。貴方が触れた生き物は全て光を失くしていましたね。貴方が泣いてる赤子を抱き上げたら直ぐに涙は止まりましたし、まるで別人のような赤子になり、3日後にお葬式が行われてましたし。貴方の可笑しさに気づいたのは私だけではないでしょうか。
貴方が今どのような空の下でこの、私からの最初で最後の手紙を読んでるかは存じませんが、もうこれで手紙はこないと思いますので、安心してお過ごしください。
健康に気をつけて、私の分も、長生きしてくださいね。
私の最期の場所を貴方の腕の中と選んだこと、不孝な姉だったことをどうかお許しください。
敬具、立花律子
追記、茉莉花御令嬢に宜しく言っといて頂ければ、私は嬉しゅう御座います。
コメント
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説明│「僕」が抱きしめたものは全て光を失くす。この物語の光とは命の事でしょうね。 「死ぬな」と仰った「僕」が抱きしめたせいで姉の律子さんが死んでしまったのでしょう。 律子さんの手紙の最後辺りは「僕」を追い詰めるような表現がやや多いですね。相当憎んでいるのではないでしょうか。 拝啓の部分に「千明」と書かれていましたから、「僕」の名前は「千明」何でしょうね