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「及川悠己、勉強を教えてやるとは言ったが、1つ条件がある」
僕は、佐藤に勉強を教えてくれと頼んでいた。京介は部活だし、本人曰く勉強は得意ではないらしい。
蓮は勉強は得意な方だが、先日の事もあり頼むのは気が引けた。
となると次は佐藤だ。佐藤は頭が良い。1年の頃から学年1位をキープしている。同中で、その時もずっと1位だった。
正直何で偏差値もまあまあなこの高校に来たのか分からない。佐藤瑛一。名前からも賢そうだ。
「条件?」
「ああ。条件に答えないなら教えてやらない。 」
「その条件って」
「僕は分からな事があると知りたくなるんだ。何かあるとそれを解きたくなる。」
「う、うん」
「で、だ。僕が聞きたいのは、及川悠己、君が何を隠しているのか、だ。」
佐藤は人をフルネームで呼ぶ。
中学の頃、僕の名前が悠己と書いてゆき、と読む事について不愉快と言った。そして読み方は悠己(ゆうき)の方が良いと言い出し、それ以来俺を及川悠己(おいかわゆうき)と呼んでいる。
「、?」
「分からないか。じゃあ、直球に聞くとする。先週はなんで入院したんだ?」
「だから、検査入院で、」
「それはおかしい。」
佐藤はキッパリと言った。
「土日だったらまだ分かるが平日、しかも火曜日。それに加え5日間も。検査入院にはおかし過ぎるんだ。大型連休だったら気には止めなかったが」
「……」
「それだけじゃない。先週の月曜日、君は普通に学校に来ていた。火曜日休んだかと思えば翌日に検査入院と知らされた。不自然過ぎるんだよ。」
「……」
「まあ予想はついてるが。病名はなんだ?」
佐藤は頭が良い。適当な嘘をついても、簡単に見抜くだろう。病気については認めるしかない。でも、病名を言う訳にはいかない。
「それは言えない。でも、佐藤が考えている病気じゃないのは確かだよ」
それだけは本当だった。佐藤には分からないだろう。佐藤は僕の瞳をじっと見つめていた。真偽を確かめるためだろう。
「そう来たか。そう言い切れる根拠は何だ?」
「根拠、か。珍しい病気だからかな」
「……」
佐藤は考えているようだった。
「む、、」
「条件はクリアしただろ」
「、、仕方ないな。解決するつもりだったが、余計謎が増えた」
佐藤は僕の病気が何なのか考えているのだろう。顎に手をあて、無言で眉をひそめていた。
「君は何で笑ってるんだ」
「いや別に」
探偵っぽいと思っただけだ。
「…教えてやるから早く準備をしろ」
「はい」
「じゃあまずテスト範囲の確認からだ…」
佐藤は丁寧に教えてくれた。実は受験勉強の時も見てもらってたりする。
佐藤は参考書を片手に持ちながら僕に教えていた。佐藤はいつも参考書を持っている。いわるゆるガリ勉というやつだ。
「君は頭は悪くないはずなのに何故勉強をしない。」
これを佐藤に言われるのは何回目だろうか、。
「どうせ君のことだからゲームでもしているんだろうけど」
そう言った佐藤は僕のパソコンを見た。それは去年の誕生日に父さんに買ってもらったゲーミングpcだった。…さり気なく目を逸らす。
「これくらい出来れば上出来だ。赤点を取ることはそうそうないだろう。凡ミスさえ無くせば満点を取れるはずだ」
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
礼を言うと、佐藤は満更でもない様子だった。
「じゃあ僕は帰るよ。、、あと、絶対当ててみせる」
まだその事を考えていたのか。苦笑する。
佐藤はそんな僕を一瞥し、そのまま帰って行った。
翌日、いつもと変わらぬ様子でテストを受けた。