テストは難しかっただろうが、佐藤のお陰で難なくこなす事ができた。
テスト回収の時、木村と目が合い僕はニッと笑ってみせた。
休み時間
今日は朝から雨が降っていた。梅雨時期だから当たり前だろうけど。
「…ゆき」
京介がそっと僕の名前を呼んだ。
「ん?」
なんだか少し様子がおかしい。
「、今日…だが、行く?」
「行くって、?」
京介は途切れ途切れにそう言った。
どこに?今日?
「、いいんだ。雨も降ってるし」
窓を見ると、ザーザーと雨が音を立てて降っていた。
京介は背を向けた。自分の席に戻ろうとしているのだろう。
……後ろから京介の服の裾を掴む。
「まって。…僕も行く」
京介は少し驚いた顔をしたが、表情を緩めるとそっと頷いた。
「分かった。じゃあ放課後」
「うん」
僕は自分の席に戻ると、降り注ぐ雨を眺めた。外は厚い雲に覆われ、朝だというのに薄暗かった。
何で、忘れていたんだろう。
今日は、。今日は。
胸の奥が疼き始める。降り注ぐ雨。
稲光が鳴った。
稲光の一瞬に照らされ映った、赤。
手が震えた。
考えちゃダメだ。僕は深く息を吸い込んだ。それと同時に、溢れでる感傷を無理やり心の奥底へしまい込んだ。
放課後、靴を履くと自分の傘を探した。 が、いくら探しても見つからなかった。
「…ない」
「これは盗まれたな。朝から雨降ってたのに持って来ないやつがいたのか」
「どうしよう、」
「やっぱり、雨もやばいし今日は辞めるか?」
「いや、今日行かないと駄目だ」
「だが、」
「傘は買えるし」
どうしても、今日を逃す訳には行かない。
今日を逃したら、もう二度と、ハルの命日に立ち会う事が出来なくなる。
「あ!及川先輩!!」
明るい声が玄関に響いた。
「先輩、やっと会えた!!返事を教えてくれませんか!!」
また、瀬尾はキラキラした目でそう言った。そうだった。どうしよう、
「瀬尾、悪いが後にしてくれ。ゆきと俺は用事があるんだ」
対応に困っていると京介が口を開いた。
「え、部長!?というか先輩ってゆきって名前だったんすね」
京介の事を部長と言った。ということは剣道部なのだろう。
「瀬尾ごめん、明日に、」
「分かりました!あ、先輩傘はどうしたんですか?」
「盗まれたみたいだ」
僕が答える前に京介が答えた。
「え、じゃあコレ使ってください!!」
「そしたら瀬尾が、」
「俺、折りたたみ傘も持ってるんで!じゃあまた明日!」
瀬尾は手を振りながら戻っていった。瀬尾の傘は青い傘だった。
「なんでアイツ、、」
京介は瀬尾が去って行った後も、そこを向いていた。
「京介?」
「なんでもない。、、じゃあ行くか」
「うん」
京介と俺は傘を広げると雨の中、並んで歩いた。
コメント
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大変遅くなりました💦