テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
234
柘榴とAI

38
99
「ねぇ、サッカー部にイケメンいるんでしょ!」
「そうそう!しかも中学の頃、選抜に選ばれてたらしいよ!」
「サッカーも上手くてイケメンとか…罪だわ…」
高校に入学してまだ間もない頃、俺の噂は風のように広まっていた。
無理もない。俺・馬橋凛には、圧倒的な実力で中学の頃から選抜に選ばれ、おまけに人目を引く容姿を持っている。中三から伸び始めた身長も今だって178㎝にまで成長し、完璧な状態で高校入学を迎えた。
「凛ー!午後練行こうぜー」
「ん-、今行く」
廊下を歩けば自然と集まる視線、俺を意識する女の子たちの表情が何よりも俺の承認欲求を満たしていった。
「凛、お前ばっかモテてんの気に食わねーわ」
「ねぇ、サッカー部にイケメンいるんでしょ!」
「そうそう!しかも中学の頃、選抜に選ばれてたらしいよ!」
「サッカーも上手くてイケメンとか…罪だわ…」
高校に入学してまだ間もない頃、俺の噂は風のように広まっていた。
無理もない。俺・馬橋凛には、圧倒的な実力で中学の頃から選抜に選ばれ、おまけに人目を引く容姿を持っている。中三から伸び始めた身長も今だって178㎝にまで成長し、完璧な状態で高校入学を迎えた。
「凛ー!午後練行こうぜー」
「ん-、今行く」
廊下を歩けば自然と集まる視線、俺を意識する女の子たちの表情が何よりも俺の承認欲求を満たしていった。
「凛、お前ばっかモテてんの気に食わねーわ」
「」「ねぇ、サッカー部にイケメンいるんでしょ!」
「そうそう!しかも中学の頃、選抜に選ばれてたらしいよ!」
「サッカーも上手くてイケメンとか…罪だわ…」
高校に入学してまだ間もない頃、俺の噂は風のように広まっていた。
無理もない。俺・馬橋凛には、圧倒的な実力で中学の頃から選抜に選ばれ、おまけに人目を引く容姿を持っている。中三から伸び始めた身長も今だって178㎝にまで成長し、完璧な状態で高校入学を迎えた。
「凛ー!午後練行こうぜー」
「ん-、今行く」
廊下を歩けば自然と集まる視線、俺を意識する女の子たちの表情が何よりも俺の承認欲求を満たしていった。
「凛、お前ばっかモテてんの気に食わねーわ」
「はは、言われましても。遺伝子に文句言って」
肩をすくめて軽くあしらうと、「クソムカつく」と友達は笑いながら俺の背中をバシバシと叩く。嫌味にならないのは、俺が自分で言うのもなんだが本当にサッカーが上手いからだ。
「さっさと着替えてグラウンド行くぞ。先輩たち待たせたら何言われるか分かんねえし」
「んー」
部室で素早くユニフォームに着替え、スパイクの紐を締め直す。
入学式には満開だった桜ももう葉桜になりかけて、舞い散った桜が校庭のあちこちに降り注いでいた。
「おい、新入生! まずはパス回しから入るぞ!」
「はい!」
先輩たちの声にハキハキと返事をしながら、俺は心の中で小さく笑う。グラウンドの外には何人かの女子が指をさしてこちらを見ていた。
適当に部活で無双して、適当に女子にモテて、俺の高校生活はイージーモードで進んでいく。当たり前に、退屈なくらい輝かしい未来が待っているはずだ。
「……あ」
ビブスを受け取ろうとした瞬間、耳に飛び込んできたメロディに、俺の足がピタリと止まった。
遠くの校舎、その開け放たれた窓から、風に乗って溢れ出てくる綺麗な音。
軽やかで、どこか繊細で、だけど強烈に惹きつけられるピアノの旋律。
今日もこの曲だ___
周りの奴らは誰も気にしていない。みんな、目の前のボールしか見ていない。
なのに、俺の耳は、心臓は、完全にその音にジャックされていた。中学の文化祭のあの日に、一瞬で引き戻されたかのような、腕が粟立つ感覚。
「おい馬橋! 何ぼーっとしてんだ、早く入れ!」
「っ、すんません! 今行きます!」
一瞬で我に返り、グラウンドを駆け出す。
だけど、ボールを追いかけながらも、俺の意識の数パーセントは、どうしてもあの校舎の窓へと向いてしまう。
しかも、この前なんか、家に帰ったあとにわざわざ「ピアノ 切ない曲」とか曖昧なワードで必死に調べてしまったんだ。曲名も知らないくせに、我ながらどうかしていた。
_________________
それからというもの、俺の耳は完全にそのピアノの音に調教されていた。
午後練の最中、そのメロディが聞こえてくると、ステップを踏む足が少しだけ軽くなる。名前も知らないその曲は、いつの間にか俺の毎日に、なくてはならないものになっていた。
そんな、ある日の放課後だった。
「おい凛、ラスト一本、サボんなよ!」
「わかってるって」
汗を拭いながら、俺はふと校舎を見上げた。
おかしい。いつもなら、もうとっくに聞こえてくるはずの時間なのに…グラウンドに響くのは、部員の掛け声とボールを蹴る乾いた音だけ。あの綺麗な旋律は、どこからも聞こえてこなかった。
ただの気まぐれ。あるいは練習が終わっただけ。
頭ではそう分かっているのに、一度気になり始めると、もうダメだった。目の前のボールに対する集中力が、目に見えて削がれていく。
「よーし、今日の全体練習はここまで! 各自自主練して解散!」
キャプテンの声が響いた瞬間、俺は誰よりも早く動いた。
「凛、これから自主練付き合えよ」
「わりぃ、今日ちょっと用事あるわ」
「は? お前が自主練残らないなんて珍し………」
背後からの呼び止めを適当に手を振ってあしらい、俺は部室へ走ってスパイクを脱ぎ散らかした。上履きに履き替え、汗を拭うのも忘れて、導かれるように校舎へと向かう。
夕暮れの校舎は、部活中のグラウンドとは打って変わって静まり返っていた。
トントン、と上履きの軽い音が無機質な廊下に響く。
あー俺、何やってんだろ……
自分でも驚くほど必死だった。妙に緊張して心拍数が上がっていく。
どんな人なんだろ、てかそもそも今日いるのかな…なんて考えながらも、いつもなら絶対に近づかない、静かで、どこか浮世離れした空間へと着いてしまった。
その一番奥にある重い扉の前に立ったとき、俺は小さく息を呑んだ。
その瞬間だった____
鼓膜を突き刺したそのメロディに、俺の全身の血が凍りついた。ピアノの音だ。間違いない。息を殺して音楽室を覗いた。
「………っ…」
西日に透けるような、少し長めでサラサラとした色素の薄い髪。
色白で、鍵盤を叩く指先が驚くほど細く長い。どこか儚げで、彫刻のように綺麗な横顔をしている。
夕暮れの教室で、圧倒的な旋律を紡ぎ出すその“男”の姿から、俺はしばらく目が離せなかった――。
コメント
1件
おお、第2話読んだわ!凛くん、イケメンでサッカー上手いだけじゃなくて、ピアノの音に惹かれてるのがめっちゃいいギャップだよね。普段は余裕ぶってるのに、あの旋律に心臓ジャックされてる感じ、すごく共感できる。音楽室の“男”の登場シーン、夕暮れの描写も綺麗でドキドキした!次が気になるわ🔥