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ユーカ
201
数日後――。
ゼノスとの戦いを終えた唯我が基地へ戻り、束の間の平穏が訪れていた。
ORVAS基地内。
会議室前の廊下に、静かな足音が響く。
コン――。
扉がゆっくりと開かれた。
そこに立っていたのは、一祟だった。
両手には大きな包みがいくつも抱えられている。
「お待たせいたしました」
「……ただいま戻りました」
柔らかな笑みを浮かべながら、一祟は会議室へ足を踏み入れた。
中ではすでに、公太と唯我が待っていた。
「おお! やっと帰ってきたか!」
公太が勢いよく立ち上がる。
そして一祟の荷物を見るなり目を輝かせた。
「つーか土産多っ!」
一祟は少し照れたように笑う。
「京都へ行っておりましたので……」
「つい、いろいろ選んでしまいました」
そう言いながら包みを開いていく。
八ツ橋、和菓子、茶葉――。
テーブルの上に次々と並んでいった。
唯我は黙って眺めていたが、一つの包みに手を伸ばした。
「……悪いな」
「どうぞ」
「よっしゃ!」
「じゃあ遠慮なくいただきます!」
公太が真っ先に菓子へ飛びつき、場の空気が一気に和む。
久しぶりの再会だった。
やがて三人はお茶を飲みながら、自然と近況報告を始める。
一祟が静かに尋ねた。
「それで、お二人は最近いかがお過ごしでしたか?」
公太が肩をすくめる。
「俺?」
「まあ相変わらずだな」
「毎日ボコボコにされながら修行してる」
「特に変わったことはねぇよ」
その言葉に、一祟は小さく笑った。
唯我はしばらく黙っていたが、やがて口を開く。
「ゼノスとの決着をつけた」
静かな声だった。
だが、その一言には重みがあった。
「……終わらせた」
一祟の目がわずかに見開かれる。
「そうでしたか……」
「お見事です」
唯我は小さく頷いた。
そして遠くを見るように続ける。
「だが、それだけじゃない」
「俺たちが強くなる理由を……改めて考えている」
公太が話題を変える。
「そういや一祟」
「京都での修行ってどうだったんだ?」
一祟は湯呑みを置きながら答えた。
「道場での稽古に加え、寺の行事も手伝っていました」
「忙しかったですが、非常に充実していましたね」
唯我が尋ねる。
「新しい技でも覚えたか?」
「はい」
一祟は静かに頷く。
「まだ未完成ですが……」
「身体と心の在り方を見つめ直す良い機会になりました」
「へぇ」
公太が感心したように腕を組む。
「俺も負けてられねぇな」
「お前らに置いてかれるのは癪だし」
その言葉に、一祟はくすりと笑う。
唯我もほんのわずかに口元を緩めた。
しばらくして唯我が静かに呟く。
「……俺たちは、誰かのために強くなる」
「誰かが笑っていられるように」
「ゼノスとの戦いで、それを思い知らされた」
会議室が静まり返る。
公太も一祟も、その言葉の重みを受け止めていた。
やがて一祟が穏やかに言う。
「……それこそ、僕たちの存在意義かもしれませんね」
公太も力強く頷いた。
「ま、理屈はどうあれ――」
「やるしかねぇよな、俺たちは!」
その言葉に、三人の間に笑みが広がる。
温かな空気が会議室を満たしていった。
夜
食事を終えた三人は、基地の廊下を並んで歩いていた。
窓の外では月が静かに輝いている。
唯我が口を開いた。
「これから、どう動く?」
公太は迷わず答える。
「修行だな」
「仲間がいる限り、俺はもっと強くなりたい」
一祟も続く。
「ええ」
「皆さんがいるからこそ、僕も前へ進めます」
唯我は小さく頷いた。
その横顔は以前よりもどこか穏やかだった。
月明かりが三人の背中を照らしている。
未来へ向かう戦士たちの背中を――。
だが。
彼らはまだ気づいていなかった。
基地の監視網すらすり抜けるほどの気配が、静かに近づいていることを。
暗闇の奥。
誰もいないはずの通路。
そこに、四つの人影が立っていた。
赤い瞳。
不気味な笑み。
そして圧倒的な存在感。
「……見つけた」
誰かが低く呟く。
四人の影は音もなく闇へ溶けていった。
新たな脅威が――
すでに動き始めていた。
コメント
1件
寺島あおいです📘 一祟が京都から戻ってきて、三人でお茶を飲みながら過ごす時間、すごく温かかったですね。特に「誰かのために強くなる」という唯我さんの言葉が胸に響きました。それぞれの形で強さの意味を見つめ直しているのが伝わってきて、キャラの成長がしっかり感じられます。 ラストの不気味な気配…また新たな戦いの始まりなんですね。次が気になります! お疲れさまでした、たけっちさん🌷