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貴方を探して

2 - 第2話〜名前は…?〜

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2024年03月13日

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「名前は…?」

んー?ここどこ?

目が覚めたら、目を閉じた男の人がいた。

私は何をしていたんだろう?自分が誰かもわからない。すると、その男の人は、

「おはよう。私は誠と言う。よろしくな」

と言った。だから、私もそう言おうとした。

「おはようございます。私は…あれ?」

でも、できなかった。

「名前がわかりません」

そうはっきり言った。少し恥ずかしいけど…

「では、私がつけよう」

と誠さんは言った。

(どんな名前になるんだろう?楽しみだなぁ)

そう思いながら、誠さんを見ていた。

数分経って、誠さんはこう言った。

「純音[じゅんね]、純音は、どうかな?純粋で優しいお前にぴったりだと思っているが…」

「是非!純音、純音、いい名前です!!やった〜!ありがとうございます! 」

あまりに嬉しかったから、つい、大きな声を出してしまった。失敬、失敬。

でも誠さんは、

「喜んでくれてよかったよ」

と微笑んだ。


(そういえば…)

「誠さん、ここどこですか?」

テンパりすぎて、すっかりスルーしてたけど…

「ここは、私の家だ。純音は…この近くで倒れていたから連れてきたんだ。混乱させてすまなかった 」

「いえ、全然。むしろ、ありがとうございます。私、家も無さそう?なので…」

私、家あるのかな?もう、色々謎だ。

「記憶喪失なのだろう。“思い出すまで”ここにいればいい」

「ありがとうございます!!」

「もう夜も遅い、今日は寝なさい」

「はい」

(なんて慈悲深い人なんだ!こんな高揚感生まれてきて、初めてかも…。嬉しい!)

なんて、思いながら、ぐっすり寝た。

ーーーーーーーーーーー

純音を気絶させたと同時に、記憶を消しておいた。自己防衛も兼ねているが、何より、純音には、もっと、明るい人生を歩んでほしいからだ。それにしても、あんなにも落ち着いた子が、こんなに幼くなるのか…。少々、びっくりだ。


次の日。

誠さんは仕事があり、夜遅くまで、いないらしい。少し不安だ。この思いが伝わったのか、

誠さんは

「心配するな。家にいれば大丈夫だ。今日は家の中で『これ』を読んでいなさい」

「なんです?この薄いノートは?」

「私が書いた書物だ。これを読んで、勉強していなさい。時間もあるしな。純音もこの知識を自分のものにしてほしいと思っている。」

「わかりました。誠さん気をつけて行って来てください」

「あぁ」


早速、もらったノートをめくると、こう書かれていた。


《心凍狼》

元人間。苦しい過去から、心を閉ざし、心が凍ってしまい、狼の姿になった。この狼を狩る

のが、使力者、遣力者の仕事だ。

ーーーーーーーーーーー

(このページ写真多!…まぁ、心凍狼がどんなやつかは分かるけど… )

次のページは、反対に文章が多めだった。

ーーーーーーーーーーー

《使力と遣力について》

使力とは、自分自身で作り出す力。

遣力とは、動物を操る力。

なお、使う場面に応じて、意味が分かれるこ   とがある。

→①自分自身の技のこと自体 。

②自分の持っている力の量のこと。

※この意味は、会話を通して、次第に覚える。

《使力と遣力の習得》

使力者および、遣力者の指導を受けながら訓練を積めば、早くて1年、遅くて5年で習得可能。

使力、あるいは 遣力どちらか1つを習得するのが一般的だが、2つ習得する者たちがいる。

それは、「天星軍」[てんせいぐん]に所属する者たちだ。奴らは、もともと、ただの使力者だったが、栄信国[えいしんこく]の元女王、 魅華[みか]の使力により遣力が与えられた。

この遣力は恐ろしく、心凍狼を操ることができる。

ーーーーーーーーーーー

(天星軍ってなに?魅華って誰?謎だらけなんだけど…)

そんな私の疑問に答えるように、次のページには、こう書かれていた。

ーーーーーーーーーーー

《魅華について》※二つ名は、魔魅華

魅華は、栄信国の元女王で、不老不死だ。 幼い頃から才女であり、実力のある使力者でも使いこなせない使力を、いとも簡単に使いこなしてした。そのため、18歳という若さで女王になっても、国をしっかり治め、容姿端麗だったため国民からも慕われていた。

しかし、それも長くは続かず25歳となった魅華は、この世で最も恐ろしい「神使力ー壱ー 」[じんしりょくーいちー]を会得してしまった。これが、不老不死になれる使力だ。このことにより、「自分はずっとこの美しさを保つことができるが、周りは老いていく。それでもこの国を治める意味があるか」と思い立ち、職務放棄を続けた。次第に国民からの風当たりが強まっていき、ついに国を追い出された。

しかし、魅華は、そんなこと気にも留めず、「国を追い出されたなら作ればいい」と、考え、天星国を作った。この国のモットーは「秀麗」美しさで満ちた国づくりを始めた。

そんな ある日、魅華は、自分以外の勢力が乏しい現状を改めて実感して、「弱いなど美しくない」と思い、天星軍を立ち上げた。その天星軍に所属する者の大半は、魅華に暗示をかけられ無理矢理従わされているが、ただ1人、本気で忠誠を誓った者がいた。名を「巧[たくみ]」と言う。巧は、他国で指折りの名使力者だった。なぜそこまで忠誠を誓うのかは謎だが、魅華は巧を気に入った。そして2人は結婚した。

ーーーーーーーーーーー

(いやいや、急展開すぎ!…でもないか、忠誠が、純愛に変わることもある…気がする…      わかんない!!)

ーーーーーーーーーーー

のちに子供が3人生まれた。その子らも秀才であるとの噂だが、能力の内容は不明…。

ーーーーーーーーーーー

ここまで読み終えた時、急に冷気を感じた…。

「なに…こんなに寒かったっけ…?」

ドンッ!、という音とともに「ガァルヴ…!」という獣の声がした。

振り返ると、さっき写真で見た狼と同じ姿の獣が、私を威嚇していた。

「えっ…」と、私の腑抜けた声が響くと同時に“赤い何か”が床に飛び散った。少しして、それが血であることに気がついた。

そして、すぐ痛みが走り、その場に崩れ落ちてしまった。

その心凍狼は、そんなことお構いなしに襲いかかってきた…。その時…

別の心凍狼“らしき”獣がその心凍狼に噛みついた

そのお陰で、一度ひるんだが、すぐに反撃され心凍狼らしき獣は、倒れてしまった…。

この時、なんでかわからないが、痛みを感じなくなり、そこからの記憶が、ない…。


気がついたら襲ってきた心凍狼は◯んでいた。

助けてくれた心凍狼“らしき”獣は、まだ生きていそうだが、とても苦しそうだ。

「助け、なきゃ…」

だが、足が動かない。どうやら、攻撃されたのは足だったようだ。余力を振り絞って、その獣のもとへ近づく。やっとの思いで着いたが、手当できるわけじゃなかった。

ただーーー

「ありがとう。…ごめんね、私なんかのために…」

と、泣いて感謝と謝罪をするだけだった。

次第に私も…意識が……


「…音、純音、純音!! 」

気がつくと、誠さんが隣にいて、私の名前を何度も呼んでいた。

それなりに寝ていたらしく、もう夜中だった。

「よかった、目を覚まして…悪かった、こんな目に遭わせて…すまなかった…」

誠さんは、心の底から後悔しているような顔を浮かべていた。

「そんなこと、全然ないですよ!! あと、助けてくれた狼ちゃんは?」

「?…あっ…もしや、あいつか…?お前を連れていった…」

「えっ…連れていかれた?私が?あの子は私を助けてくれたんです!相当傷が深かったのに私を背負ってくれたんだ…」

「すまない…。そんなこととはつゆ知らず、追い払ってしまって…その時に、それなりに強い攻撃を与えてしまった…」

「えっ!大丈夫かな?私が倒れていたばっかりに…」

「…おそらく、痕跡を追えば、居場所がわかるだろう。…本当に申し訳ない」

「いえ!私がもっと早くに目を覚ましていたらこんなことにはならなかったんですから!!誠さんのせいではありません!!それより早く探しに…痛ッ!」

立ちあがろうとしたが、痛みが強く、できなかった。

「待て。この責任は私にある。だからお前はここで…」

「嫌です!!私のこの命を繋いでくれたのはあの子なんです!会ってお礼がしたいんです…!それに、誠さんが、その子を攻撃してしまったのなら、敵視しているはずですよ。私が弁解します!!」

「だが…」

「お願いします!!這いつくばってでも行きます!!」

「それはダメだ。私が連れていく」

「それって…」

「…行くぞ」

「はい!」

そして、琵琶の「ジャン」という音とともに、私は宙を舞った。

「わぁ〜!なんだこれ、無重力みたい〜🎵」

「楽しんでる暇はないぞ。これはそれほど使力を消費しないが、いつその心凍狼が見つかるかわからないからな」

「了解です!」

(そういえば、誠さん、目が見えないのに、よくあの子のことわかったな…)


2時間後。

清流山の森の中が、だいぶ、暗くなっていた。そろそろ普通に眠いなと思っていた時、突然、誠さんが立ち止まった。

「どうしたんですか?」

「いたぞ」

誠さんが、指差した方向に目を向けると、ぐったりしているあの狼がいた。

「誠さん!早く手当てを!!」

誠さんは、頷き、走って向かおうとしたその時、その狼は、さっきまでとは打って変わり、すっと立ち上がり、私めがけて突進してきた。

おそらく、私が攫われると思ったからだろう。

「大丈夫!落ち着いて!!誠さんは、敵じゃないの!だから、襲いかか…」

そんなことには耳を貸さず、誠さんから私を引き剥がした。そして、私を背中の上に乗せて、誠さんを威嚇した。

(この子の背中、とっても冷たい…ってそんなことより…)

「降ろして!降ろして!今、目の前にいる人は敵じゃない、誤解だよ〜! 」

行動に変化はない。

誠さんは、臨戦体勢をとっているが、内心ではそんなことしたくないと言う顔だ。

その時、なぜかわからないけれど、視界が歪んだ。そして、この子の背中に“何かの雫”が落ちた。

「大丈夫だから…。大丈夫 …」

何回も何回も、この子の背中をさすって、こう声をかけ続けた。

私は今、どんな気持ちなのかわからなかった。

だが、だんだん、この子の背中の冷たさが引いていくのを肌で感じた。


数分経って…

この狼は、誠さんに威嚇しなくなった。そして、その場に倒れてしまった。しかも、私を乗せたまま…。

(ちょ、ちょっと、いくら疲れたからって、それはどうなのぉ、あ〜!)

地面にぶつかる直前で、誠さんがキャッチしてくれて、ギリギリ助かった。

(ふぅ〜危ない…)

「大丈夫か?少しここで楽にしていなさい」

誠さんは、私を木の下まで運んでくれた。 そして、誠さんは、琵琶で綺麗な曲を演奏した。

その曲に合わせて、この子の体の傷が癒えているような気がした。

「私のこの能力は、人以外の動物の傷を癒すことができる。裏を返せば、人の受けた傷は回復できない。だから純音の傷を治すことはできない。悪いな。 」

「いえ、そんな、謝らないでくださいでもどうして、人以外なんですか?」

「人を回復させるために必要な使力は、他の動物を回復させるよりも遥かに大きい。だから、もし、その能力を1回でも使うと、その日1日は、他の能力が使えなくなる。だがまぁ、人を回復させる能力しか持たない代わりに、1日に数回使える者もいるがな」

「そうなんですか!すごい…。いつか、会ってみたいな〜」

「そのうちな…」

そうこう言っているうちに回復が終わっていた。しばらくして、その狼は、目を覚ました。

「グゥル〜」

少し戸惑っているみたいだ。駆け寄りたいが、足が動かない。

(大丈夫かな?)

そんなことを思って見つめていると、目が合った。次の瞬間、こっちめがけて走ってきた。

(えっ!なに?まだ攫われたと思っているの?)

と思ったら、飛び乗ってきて、犬のように私の顔をペロッと舐めた。

「はぁ〜。びっくりした。可愛いのぉ〜❤️」

私はその子の頭を撫でた。

ーーーそういえば、

「名前、なんていうの?」

「グゥルゥ?」

「まぁ、人の言葉、わかんないよね…。ん〜とね…」

『篤瀬[とくせ]』

「へぇ?」

(今の、この子の声?)

「どうした?純音」

「…声が、何かの声がしませんでしたか?篤瀬って …」

「いや、そんな声は聞いていないが…。考えられるとしたら…いや、なんでもない。」

「なんですか?1番気になるやつ〜!」

「テレ…いや」

「なんでそこで止めるんですか!(笑)もしかして、テレフォンカードを使って公衆電話してる声? 」

「ここは山の中だぞ。どう考えてもテレパシーだろう(笑)あっ…」

「えっ!そうなんですか!」

「逆になぜそう思った?」

ーーーーーーーーーーー

それはさておき、「テレパシー」が使える狼なんて聞いたことないぞ。使えるのは、心凍狼だけのはず…。だが、妙だ。子のからは冷気を感じない。むしろ温かいまである。人を敵対視せず、なんなら懐いている。

…様子見だな。“純音の過去”に関連しているかもしれない。ならばーーー

「純音、その子を使役してみなさい」

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