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そんなこんなでもう3週間…。
(だいぶ、篤瀬との生活に、慣れてきたな〜
使役というより、妹ができたって感じだけど…
そういえば、あれからテレパシーはしてこないな〜。気のせいだったのかな?
名前、篤瀬にしちゃったけど…)
そんなことを考えていると、誠さんが声をかけてきた。
「ケガはどうだ?まだ痛むか? 」
「ん〜。少しだけ。でも、もう全然、体動かせますよ」
「そうか。じゃあ、女王陛下に会いにいくぞ」
「はい!…はい!?なぜ今!?あの…そもそも女王陛下に会いにいくってどういう…?」
「あっ…言うのを忘れていた。この国を治めている啓架[けいか]…様というお方に純音と篤瀬を紹介する。」
「せめてどんなお方なのか、とかって…」
「会えばわかる」
「そらぁそうですよ!!」
ーーーーーーーーーーー
純音のこと、それから篤瀬のことを了承してもらう必要がある。
いつまでも匿っていては、埒があかない。いつかは、問いただされてしまう。
それに、今は水龍が心になってからそこまで経っておらず、情緒不安定だ。だから、色々な人と関わり、感情のコントロールができるようになってほしい。
王宮にて…。
「…誠さん」
「ん?どうした?」
「今更なんですけど、篤瀬、連れてきてよかったんですか?」
「あぁ、新しい“家族”を紹介しなくてはな」
「家族…(*´ω`*)」
「どうした?そんな嬉しそうな顔をしてw 」
「いえ、ただ『家族』っていう響きを噛み締めているんです〜」
「なんだそれ?(笑)」
そんなことを話していると、啓架様が待機している部屋の前に着いた。
深呼吸をして、扉をノックしようとしたら、勝手に開いた。
「なぁ〜んだ、誠か」
なぜか少し残念そうな顔をして玉座に座る1人の女性が言った。
(女王様?なんか、想像していた人とは違ったけれど、綺麗な茶髪の女性…。持っているのは水晶?)
「悪かったな、啓架…様😒だか1人ではない」
と言った誠さんが、私の背中を押した。
その反動で、1歩前に出てしまった。だから、慌てて自己紹介をした。
「お初にお目にかかります。純音と申します。それと、この子は篤瀬と言い…」
その時、衝撃波が飛んできた。幸い、誠さんの(琵琶の)使力で防ぐことができた。
驚いて攻撃が飛んできた方を見ると、刀を持った黒髪の男性と、茶髪の男の子、黒髪の勾玉を持った女の子が座っていた。
「そいつは心凍狼だろ…。なぜ王宮に入れた!!」
どうやら、さっきの攻撃は茶髪の男の子が放った攻撃らしい…。
「えっ…この子は心凍狼じゃ…」
「よくもまぁ、そんな虚言が吐けたものだ。我の能力を知らんのか?」
「…?すみません…。でも、人を襲わない優しい子なんです」
「…それは本当のようだな」
(なに、この人…?否定したり、肯定したり…。よくわかんない。全部、本当のことな気がするんだけど…)
私が混乱している中、誠さんは何か納得した表情を見せて言った。
「やはり、そういうことか…。篤瀬は心凍狼…」
すると、今度は黒髪の男性が状況を飲み込めない様子で言った。
「どういうことだ…。心凍狼の、特徴である冷気を感じない 」
(こっちのセリフです!…って言いたいけど、さすがにそれはちょっと言いすぎな気がする。やめよう…)
「そなた、無垢なやつだな」
私は驚いて、ビクッと体を震わせた。
(思考が読まれた!?この茶髪の男の子、一体、何者…?)
「そんなに驚かなくてよい。我は、千里眼と慧眼[けいがん]が人一倍優れている体質なのだ。だから、思考は読めるし、物事の本質を見抜ける。さしずめ、嘘発見器といったところだろう。それと、我の名は魂佳[こんか]だ」
「えっと…魂佳…様、心凍狼なんですか?篤瀬は…」
「あぁ」
(端的だなぁ…(苦笑))
「単純明快であろう 」
(そっか、思考読まれちゃうのか)
「だから注意せよ。まぁ、そなたは正直、気にしなくてよいがな」
(ん?まぁいっか!)
「母上、この心凍狼、人を敵視しないようですが、栄信国の規定にのっとれば殺処分対象です。どうなさいますか?」
「待ってください!!殺処分?どう考えても理不尽です!!」
私が間を割って話すと黒髪の男性が言った。
「まぁ、落ち着いて聞いてください。そんな情のないことをする方ではないですよ」
それを聞いて安心した。だが、啓架様は不安を煽るような言い方をいた。
「いや、妾はその心凍狼…篤瀬と言ったか。篤瀬と出会った経緯を知らぬ。内容によっては殺処分だ」
私は、篤瀬との出会いを丁寧に説明した。
優しいいい子だと伝わるように…
ーーーーーーーーーーー
「なるほどな。魂佳が何も指摘してこないということは全て真実なのだろう。篤瀬のことを承認する」
「よかった…」
「ただし、条件がある」
「なんでしょうか?」
「純音よ。使力者になれ。そして、篤瀬ことを守れ」
(使力者…誠さんがくれたノートに書いてあった…)
「篤瀬は異端中の異端だ。妾が承認したと言っても、周囲の風当たりはおそらく強いだろう。だが、妾たちが、四六時中警備することはできない。だから純音。そなたが、守るのだ。 加えて、もし、篤瀬が周囲の仲間を傷ついた場合、
それでもいいか?」
「……はい」
(即答できなかった…。惨めで申し訳ないなぁ…)
そんな私の様子を見て、誠さんが、
「私だけじゃダメなのか?」
と聞いた。
「いや、ダメです!!そんなこと…」
(いざ、決意を固めるとなると怖いけど…)
「私は、篤瀬を守り、誠さんを死なせません」
「つまり、篤瀬が周囲を傷つけるようなことは決してさせないということか?」
「はい」
「…よろしい。改めて篤瀬のことを承認しよう」
(怖かった…人の命の重みを実感した。だからこそ、この重みを、自信を持って背負えるような強さを手に入れたい)
「怖いはずなのにすごいね、純音ちゃん」
(また思考を読まれた、と思ったら、声の主は、黒髪の女の子だった。この子も思考が読めるのかな?いや…でも『はず』?)
「私にはそんなこと、啓架様に進言できない」
どうやら思考が読めるというより啓架様に対して発した言葉を受けて褒めてくれたみたいだ。
「純音ちゃん。私と友達になってくれる?」
「えっ…」
(お友達?私と?いいのかな?)
「…不快? 」
「いや!!そんなことない!…です。私でよければ」
「やった〜!!よろしくね、純音ちゃん。私の名前は福穂[ふくほ]。あと、タメ口でいいよ」
(いきなりでびっくりしたけど、悪い人じゃない、むしろいい人だ)
「はい…じゃなくて…うん!よろしくね、福穂ちゃん。あっ、じゃあ、魂佳とも友達になりたい」
(なぜか、みんな、驚きを隠せない様子だ。なんで?)
「なんでって、そなた…我は一応、王子だぞ。それに…自分で言うのも癪だが変わり者だ…なぜ…」
「そんなことないよ。話してて楽しいから!」
「………そう、か…(照」
「あと、福穂ちゃんも王女でしょ?だからいいのかなって…」
「…そっか、私、今、王女なのか…」
「へぇ?」
(どういうこと?王女じゃないの?福穂ちゃん…)
「妾と穏矢[おんや]が結婚したのは、最近のことだから無理はない。次第に慣れるだろう 」
(穏矢様というのは、黒髪の男性のことらしい…なんか私だけ置いて行かれている気が…)
すると、誠さんが補足をしてくれた。
「啓架の実の子は魂佳、穏矢の実の子は福穂だ。啓架は、言わずもがな王家として生まれたが、穏矢は、代々刀を使う、王家直属の使力者の家系で生まれた。訳あって妻を亡くし、福穂を1人で育てなくてはならない時に相談相手となったのが、啓架だった。相談を重ねる内に打ち解け合い、今に至る」
「そうなんですか…。でも友達になるかならないかに、その話は関係ない気がする…。だから、魂佳、友達になろうよ!」
「そなた、肝が座っているな(苦笑)。その度胸に免じて、友達になろう」
「やった〜!!」
次の日…。
早速、誠さんから使力の扱い方を教わることになった。
誠さん曰く、己と向き合い、心の奥底を見れば使力がわかるそうだ。
…無理だ…。まず、意味がわからない。もっとわかりやすく言ってほしいな…と思ったけど、とりあえずやってみることにした。
要するに、座禅を組めばいいということだろう
(…んー…。篤瀬…いやいや、自分のことを考えろ…。自分のこと…誠さん、篤瀬、家族…。私も狼だったなら、篤瀬の言葉わかるかな?)
すると目線が急に低くなった。
気がつくと、私は何かの獣になっていた。
「えっ!?何?もしかして、私、狼になっちゃった?」
「そうか。これがお前の使力か。自分が認知している動物になれるはずだ。なら…」
そう言って、誠さんは空を見上げた。
そして、飛んでいるタカを指差した。
「純音、試しにあのタカになってみなさい」
「えっ!?いくらなんでもタカは…まぁ、やってみます」
(あのタカになりたい…!)
すると、急に体が宙を舞った。どうやらできたらしい…。
「純音は飲み込みが速いな。では、この調子であと3体の獣に化けてみなさい」
「3、3体!?」
(そんなこんなで毒ヘビ、シカ、ウサギになれるようになった)
ーーーーーーーーーーー
もともと使力者なだけあるな。記憶は消したが、体が覚えている。
私の下手な説明でも、己の使力を引き出せている。
襲われた時、彼女の使力を確認する前に気絶させてしまったから使力を知らなかったが、変身型か…。
使い方によっては最強の武器だな。もっと、訓練を積んでもらおう…
それから2ヶ月…。
私は使力を使いこなすために特訓を重ねた。
そして、それぞれの動物の場合分けがわかってきた。
毒ヘビは身を潜めたい時や相手の攻撃を鈍らせたい時。
タカは陸での対戦が困難な時や索敵したい時。
狼は陸での臨戦時。(狼はそれなりに万能)
シカは平原などで速く走る時。(狼より速い)
ウサギは高いところへ行きたい時。
(とまぁ、こんな感じ…多分…)
早速、福穂ちゃんと魂佳に報告しに行った。
福穂ちゃんと魂佳は、口を揃えて
「早すぎだよ…純音(ちゃん)…」
ついでに福穂ちゃんと魂佳の使力のことも聞いた。 でも、2人とも、ヒントしかくれなかった。
「私はこの勾玉を使って、何かを呼び寄せ、その力を自分に還元する使力だよ〜🎵」
「我はそなたに、千里眼と慧眼が人一倍優れていると言ったが、それはあくまで体質であって使力ではない」
「もしかして、あの衝撃波?」と私は聞いたが
「さぁて、どうかな?」と言葉を濁された。
すっかり日が暮れてきたため、帰ることにした。
帰り道、泣いてる女の子がいた。黒髪の女の子がいた。
私はすぐさま駆け寄った。
「大丈夫?どうしたの?」
すると、その女の子は泣きじゃくりながら言った。
「…お母さんが、どこかに行っちゃったの…」
「そっか…。…ねぇ、名前、なんでいいの?」
「穂[すい]」
「そっか、じゃあ穂ちゃん、どこではぐれちゃったの?」
「…わかんない(泣」
「ごめん、ごめんね。不安にさせちゃったね。じゃあ〜とりあえず、女王様に相談してみようっか! 」
「女王、様?」
「うん!優しい人だし、きっとなんとかしてくれるよ!だから、行こう( ´ ▽ ` )」
「…うん」
そして、引き返そうと後ろを振り返ると、何やら人影が見えた。隣には、獣らしき姿が見える。
「なんだ、子供2人か…。弱そう…。まぁ、肩慣らしといきますか〜」
(何を言って…)
そう思った時には、その人は私と穂ちゃんの近くに迫り、襲いかかってきていた。
私はすぐさまタカになり、穂ちゃんの肩を掴んでその人から距離を置いた。
「へぇー…お前、使力、使えんだ〜。少しは楽しませてくれそうだ😏…そうだなぁ〜じゃあ…」
その人の姿が一瞬にして消え、およそ1秒後、 「きゃー!」という穂ちゃんの悲鳴が聞こえた。
「こいつはお荷物だな 」
そう言って、穂ちゃんを殴り飛ばした。
骨が折れるような鈍い音と「くぅ、ッ…」という穂ちゃんの声が響いた。
この後から私の記憶がない。“あの時”と同じように…
ーーーーーーーーーーー
(まただ。純音の心の中から追い出された。
それと、追い出される時に少し目に入ったが、赤い小さな水晶玉…大きくなってなかったか?
よくわからないが、大切だと思った者が攻撃されているところを見ると、制御できない感情があるらしいな…。それを抑えるのが僕の仕事なんだけどな…。やっぱり、僕の力じゃ…)
ここで僕の意識が途絶えた。
ーーーーーーーーーーー
私が駆けつけた頃にはもう…純音は、純音ではなかった…。
相手もなかなかの{つわもの}のようだ。“あの純音”相手に互角の戦いをしている。だが、もう限界だろう…。
その前に、あの女の子と水龍の手当をしなくては…。まずは、この子から…ん?
なんと、その女の子は、自分のお腹をおさえて回復をしていた。
自身で回復できるなんて、あの家系くらいしか…あっ…たしか、子供ができたって数年前に聞いたな…この子が……では、その力に頼り、水龍の手当をしよう。
そして私は、水龍のもとへ向かった。
ーーーーーーーーーーー
「水龍、水龍!!大丈夫か!!すぐ手当するからな!」
誠さんは琵琶で回復術を施してくれた。
体が次第に楽になっていった。
「ありが、とう…ございます…。すみません…。僕が…僕がもっと制御できていれば…」
「謝る必要はない。こんなにもツライことを引き受けてくれただけでも嬉しい。…今は安静にしてくれ。この場は私が預かる」
「はい…」
(誠さんなら大丈夫だ…。きっとなんとかしてくれる…頼みましたよ、誠さん…)
ーーーーーーーーーーー
さて、“彼は”もうじき純音にやられるだろう。
だが、彼が連れているのは…
「おい、そこの心凍狼。なぜ主人に加勢しない?お前の主人は、お前を遣力で操っているはずだが…」
『遣力?…なんかわかんないけど、この人、使えないよ。てか、大体そうじゃない?私がこんな弱いやつの言うこと聞くと思う?』
“大体そう”?彼が弱いと仮定して、彼が遣力にあてていた力を使力にまわしたなら、納得がいくが、なぜ“大体”と言った?「天星軍の者たちの大半が遣力が使えない」なんてことはないはずだ。
私が戦った天星軍の者たちは皆、口を揃えて「魅華様がお与えになったこの“遣力”」と言った。もしや…
『ねぇ、話はそれだけ?つまんな…じゃあ一緒に遊ぼうよ』
そう言ってその心凍狼は、私に襲いかかってきた。
(ジャン!)←琵琶の音
「使力•佩用[はいよう]」
⬆️使力を身に纏い、攻撃を防ぐ(守り特化)
(ジャン!)←琵琶の音
「破戒」
⬆️守り特化だった決まりを破ることで攻撃技に変える(カウンター)
心凍狼は「破戒」の爆撃を喰らい、一瞬にして戦闘不能となった。
「悪いが、遊んではやれない…」
この戦闘でわかった。魅華は…
心凍狼を天星軍の者に従うよう「洗脳」していたのだ。
だが、多くの心凍狼をずっと洗脳させ続けるのはとても重労働だ。
だから、“戦いで不利な立場”になってしまった天星軍の者に従っていた心凍狼の洗脳を解き、加勢させないようにしていたのだ。
(もし、そうなら、“また”高みの見物か、魅華…。)
そう思った時、ドン!という地響きがした。
どうやら、純音が、戦っていた天星軍の者を地面に叩きつけたようだ。
純音は、彼から少し距離を取ってから、その場に倒れた。
私は、すぐに純音のもとに駆け寄り、手当をし、彼を見た。
(まだ生きてる。だが、瀕死の状態だ)
私は「封邪紙」を取り出した。
この紙の中に天星軍の者を封印する。
(天星軍の者からしたら、刑務所のような場所なのだろう…。ごめんな…。)
そして、彼も同じように、封印した。
「やっぱり、“あの子”は生きていた。だが、誠も生きていたか…。お前はもう“罰を受ける”べきだ。この極悪人めが…」
目が覚めたら、誠さんの家の中だった。
(なんかデジャブ感…)
「ん?…あれ?私…あの男の子と戦ってたはずじゃ…」
「目が覚めたようだな」
誠さんは晩ご飯の支度をしながらそういった。
「あの…誠さん。穂ちゃんは大丈夫でしたか?あの男の人にやられて…。って誠さん状況、知らないのに、すみません、変な質問で…」
「あの女の子なら自分で治療し、自分の足で帰っていったぞ。あと、あの男は…心配いらない」
「そうですか…自分で帰った!?そもそも自己回復って、もしかして、この前誠さんが言ってた『攻撃技を持たない代わりに回復技を1日に数回使える人』だったんですか!?穂ちゃんすごい…。でも、迷子だったんじゃ…」
「あぁ…言い方が悪かったな。私が家まで送り届けた。その子の家には心当たりがあったな…」
「よかった…。あっ…つかぬ事を聞きますが…」
「なんだ?改まって…」
「いや、その…あの男の人は、誰が倒したんですか?誠さん、さっき『心配いらない』とは言いましたけど、『私が倒した』とはいらなかったので…」
「………」
誠さんは何か迷っている表情を浮かべている。
(ん?なにをそんなに、ためらっているんだろう?)
「どうしたんですか?まさか、自分で倒せなくて恥ずかしいとか…まぁ、そんなことないか…(苦笑」
「…実はそれに近い」
「えっ?どういう…」
「…そんなはずありません!!私、私には、その時の記憶が…」
「…正直、お前に伝えるか迷っていたんだ…。これはお前の人生を狂わせる発言かもしれない…。だが、伝えなければ、己自身で止めることはできない」
「何をですか!!冗談はやめてください!!誠さんがそんなこと言うなんて、思わなかった!!」
私は、何かむしゃくしゃして家を飛び出した。
ーーーーーーーーーーー
判断を…間違えてしまった…。率直に伝えていい問題ではなかった。だが、いつまででも黙っていても…。あぁ…(もだえている)
(あんなの絶対、嘘だ!!もう!篤瀬には憂さ晴らしに付き合ってもらう!!)
そう思って篤瀬のいる場所へ向かった。
篤瀬と仲良くなったあの場所だ。
(でも、そろそろ誠さんの家に住んでいい気がする…。行くの大変だし…。あ〜もう!!誠さん全然悪くないのに、誠さんのせいにしちゃう自分がいる!!もう〜!!)
そんなことを考えていたら着いた。
篤瀬は気持ちよさそうに寝ていた。
(なんか…申し訳なくなってきた…。出直そうかな…)
そう思い、一歩後ろに下がった拍子に小枝を踏み、ポキッと音を立ててしまった。
篤瀬は耳をピクッとさせ、目を開いた。
篤瀬はすぐ、私の存在に気づいた。
「ごめん、篤瀬。ちょっと話したいことがあるんだ」
ーーーーーーーーーーー
ひと通り話せてスッキリした。
篤瀬はもちろん、何も言わない。
でも、聞いてくれるだけで嬉しかった。
そろそろ帰ろうと思い、立ちあがろうとした時…
『それ、全部本当のことだよ』
篤瀬の声がした。驚いて篤瀬の方を見ると、私のことをまっすぐと見ていた。
『私のことも助けてくれた。その力で…』
「篤瀬のことを?違うよ、篤瀬が私のことを…」
『違わないよ。純音があの心凍狼を倒してくれたんだよ。…ありがとう』
「もし、そうだとしたら、私に記憶がないのは、どうして? 」
『わからない。多分、“純音とは違う何か”が戦ってたんじゃない?だから、記憶がない』
「何それ…。…ねぇ篤瀬。なんで、私を助けようとしてくれたの?“同じ”心凍狼を倒そうとした…」
『悪いけど、一緒にしないで。…とにかく、誠さんに謝ってきな。あと、もっと強くならなきゃね 』
(なんだったんだろう…)
篤瀬に言われたことを思い出しながら歩いていたら、あっという間に誠さんの家に着いた。
すると…
「すまなかった!!純音…。お前の気持ちも考えず…」
引き戸(玄関の扉)を「バン」と音を立て開き、誠さんはそう言った。
(扉をノックしてないのに、私のことに気づくなんて…。やっぱりすごいな…。ってそんなことより…)
「私こそ、ごめんなさい…。ちゃんと話も聞かないで、一方的に声を荒げてしまって…。…それで、“私が倒した”って、本当ですか?」
「…あぁ。これで2回目だ。1回目は…」
「篤瀬と出会った日…」
「…あぁ、そう、だ。なぜ知っている?」
「篤瀬が話してくれたんです。さっき…」
「飛び出した先は篤瀬のところか…よかった。2回目は言わずもがな、天星軍の者に襲われた…さっきのことだな」
「えっ、あの男性、天星軍の人だったんですか!だから、強かったんだ…」
「まぁ、彼を倒したのは、お前だがな…」
「…誠さん。なんで私に、その時の記憶がないんですか?篤瀬に聞いたら、“私じゃない私”が戦っているからだって…」
「…一理あるな。だが、“純音じゃない純音”とは…?」
「それを知りたいんです!!w」
「悪い、悪い。それについては、私もわからない。少なくとも今の純音は、“純音じゃない純音”よりも弱い。だから、もっと鍛え上げることで、抑えることができるかもしれない」
「結局、篤瀬が言ったことと、結論は同じか…。わかりました。もっと訓練を積みます!」
ーーーーーーーーーーー
純音には言わなかったが、篤瀬の説は「一理ある」というより、その説が濃厚だと思う。
水龍が制御できなかったことを考えると、純音の心の中には、2つの軸(人格)があるのではないか?
もし、そうだとしたら、“特別な力”を所持しているのは、どちらなんだ…?