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春になり桜が咲き揃う頃、私たちの付き合いは二年目を迎えた──。
二年の間に彼からプロポーズを受け、私の左手にはフルオーダーで彼が贈ってくれた指輪が嵌まっていた。
……幸せだなと思う。彼と一緒にいられるだけでこんなにも幸せだなんて、お付き合いが始まる前には思いもしなかったのにと感じる。
夕食の後、夜道を二人で歩きながら、込み上げる幸福感に繋ぎ合った手に少しだけ力を込めると、彼がふと私に顔を向けた。
「……智香、あなたに大事な話があります」
「……大事な話って?」
急になんだろうと不思議に思い、聞き返すと、
「そろそろ式を挙げようかと」
彼の口からそう告げられて、
「……式?」
と、ふいのことで頭がついていかないまま、ぼんやりと呟いた。
「以前に話したように、この指輪に足して私と対になるリングを、君へ……」
私の左手の薬指に嵌る指輪を彼が指先でなぞると、言われた台詞がじわじわと現実味を帯びてくるのが感じられた。
「あっ…あの、式を挙げるって……もしかして、挙式をするっていうことですか?」
我ながらなんて間の抜けた質問をしているんだろうと思うけれど、改めてそう確かめずにはいられなかった。
自分で尋ねておいて気恥ずかしさに赤くなる私の頬に、彼が片手をあてがい「ええ」と頷くと、
「二人で結婚式を、ドイツで」
そう、続けて口にした。
「…えっ? ド…ドイツって……?」
またしても思いもかけない言葉を聞かされて、顔がのぼせたようにますます赤くなってくる。
「前にドイツの本場のクリスマスマーケットに行きたいと話していたでしょう? 今からクリスマスシーズンのドイツの古城での挙式を予約しておこうかと思いまして」
「クリスマス……? ……古城?」
彼の口から話されることが、まるで夢物語のようにも聴こえるようだった……。