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【俺はもう、大丈夫だヨ】
Episode.11 信じてる
《🎼🍍side》
その日は、
ひとりで、上機嫌だった。
理由は分かってる。
分かってるから、何度も胸の中で確かめる。
───海に行く。
明日、父さんと一緒に。
朝から、気持ちが少し軽い。
足取りも、いつもより速い。
でも、同時に、
胸の奥に小さな棘みたいなものが残っている。
……父さんの、体。
病気。
その言葉は、
口に出さなくても、ずっと頭の中にある。
けれど。
🎼🍵「大丈夫だよ」
昨日、父さんはそう言った。
その声は、
いつもと同じで、
少しだけ笑っていて。
だから、
俺は、その言葉を何度も思い出す。
───父さんが大丈夫って言った。
───だから、大丈夫。
そうやって、
安心できる理由を、必死に集める。
*
夜。
同じ部屋で、
布団を並べて寝る。
父さんは、もう目を閉じている。
……寝てる?
そう思って、
そっと声をかける。
🎼🍍「父さん」
🎼🍵「……ん?」
まだ起きてた。
🎼🍍「海さ」
🎼🍵「うん」
🎼🍍「楽しみ」
短く言うと、
父さんは小さく笑った。
🎼🍵「父さんもだよ」
その一言で、
胸が、少しだけ温かくなる。
でも、不安は消えない。
父さんが、
もし、途中で苦しくなったら。
もし、 楽しめなくなったら。
そんなことを考えて、
また、首を振る。
だめだ。
父さんは大丈夫って言った。
それだけを、
信じればいい。
布団の中で、
ぎゅっと目を閉じる。
考えるのをやめて、
眠りに落ちる。
……夢も見ないくらい、
深く。
《🎼🍵side》
ひまちゃんの呼吸が、 完全に寝息に変わったのを確認してから
俺は、そっと起き上がった。
音を立てないように、
布団を抜ける。
リビング。
スマホが、震えた。
画面を見る前から、
誰か分かっていた。
───兄だ。
🎼🍵「……もしもし」
🎼🌸『起きてたか』
🎼🍵「今、起きた」
嘘じゃない。
本当でもない。
🎼🌸『体調は』
開口一番、それか。
🎼🍵「……悪くはない」
🎼🌸『“悪くはない”ってのは、良くもない時の言い方だ』
🎼🍵「相変わらずだね」
小さく笑う。
🎼🌸『通院は』
🎼🍵「行ってる」
🎼🌸『先生は、なんて』
一瞬、言葉に詰まる。
🎼🍵「……ちゃんと、見てくれてる」
🎼🌸『すち』
声が、少し低くなる。
🎼🌸『全部、話せ』
……相変わらず、
逃がしてくれない。
🎼🍵「進行は、してる」
🎼🌸『どのくらい』
🎼🍵「……前より、早いって」
🎼🌸『余命の話は』
少し、間が空いた。
🎼🍵「……聞いた」
🎼🌸『……』
🎼🍵「でも、まだ──」
🎼🌸『“まだ”って言い方、やめろ』
🎼🍵「…でも」
🎼🌸『なつに、言ってないんだろ』
🎼🍵「…………うん」
一瞬、
電話の向こうで息を吸う音がした。
🎼🌸『無理するな』
🎼🍵「してない」
🎼🌸『それ、信用できない』
🎼🍵「……」
これ以上、
心配を増やしたくなかった。
🎼🌸『最近、なつはどう?』
話題が、変わる。
🎼🍵「……元気だよ」
🎼🌸『“元気”は、どんな?』
🎼🍵「よく話す」
🎼🌸『それは、元気なのか?』
……鋭い。
🎼🍵「……優しい」
🎼🌸『そっか』
少し、声が柔らぐ。
🎼🍵「……あのね」
🎼🌸『ん』
🎼🍵「……海、行くんだ」
🎼🌸『海?』
🎼🍵「ひまちゃんと、二人で」
🎼🌸『……お前』
一瞬、
言葉を探している気配。
🎼🌸『……無茶じゃないのか』
🎼🍵「分かってる」
🎼🍵「でも、約束した」
🎼🌸『……』
兄は、あからさまに黙った。
しばらくして、声が通る。
🎼🌸『同じ日だ』
🎼🍵「え?」
🎼🌸『その日、俺も行く』
🎼🍵「どういうこと?」
🎼🌸『みことも連れてく』
一瞬、
言葉を失う。
🎼🌸『四人で、行こう』
🎼🍵「……いいの?」
🎼🌸『いい』
🎼🌸『なつ、喜ぶだろ』
……確かに。
それに。
🎼🌸『お前ひとりで、背負うな』
その言葉に、
胸の奥が、少しだけ緩んだ。
🎼🍵「……ありがとう」
🎼🌸『礼はいいよ』
🎼🌸『無事に、帰ってこい』
🎼🍵「……うん」
電話が、切れる。
静かなリビング。
俺は、
なつの寝ている部屋を、そっと振り返った。
……少しくらい、
頼ってもいいのかな。
海の日。
その日まで、
俺は、ちゃんと立っていよう。
ひまちゃんの、隣で。
next.♡1000
コメント
12件
めためたお久しぶりです~❕ 🌸君凄すぎません??こんなお兄ちゃん最高… 余命まじで少ない…一つ一つの言葉が自分事みたいにぐっと刺さります〜ちゃんと帰ってきて欲しい…でもカミングアウトした時どうなるか… まじで次も楽しみに待ってます!!!
なんか嫌なようなわかんない予感がする…(?) 🌸くんやっぱ兄貴感すごいな❤️ 次も本ッッ当に楽しみ😁😁
兄貴かっけぇす。感動話だが、私だけカプじゃなくとも赤黄の組み合わせすきで出演に大歓喜。黄ちゃんもなんかありそうね