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10
MAKO
龍
ルカスがフィンレイから依頼を貰ってきた。
今、パレスは盲目的に主を好いている貴族たちからの献金によって金には困っていないのだが、仕事を断ることはできなかった。
ルカスは馬車の中で依頼分に目を通し、深々とため息をついた。
女子供の人身売買をどうにかしろという依頼ではあるが、その組織の詳細を調べるところからしなくてはいけない。
これは時間も手間もかかりそうだ。そう思った。
そう思ったのだが…。
K「じゃあまず私が攫われて場所をお兄ちゃんたちに知らせるよ!それで一気に襲撃して片付ける!これでどう?」
なんと主が囮になることですぐ終わりそうだった。
☔「ですがあまりに危険では?せめて何人か護衛を」
数名は心配でたまらないという顔をしているが、確かに攫った人間を1箇所だけに隠すことはないだろうし、数名の囮が居ても良いかも知れない。
💮「じゃあ、背が低めで〜?」
🐏(フルーレ、ラト、アモン…)
🧸「お淑やかな振る舞いができる人!」
🐏(フルーレだ…)
N「あんまりゴツくない奴で」
🐏(フルーレだ…)
B「…僕?」🪡「…俺?」
しかし予想外だったのはブランが名乗り出たこと。
🪡「えっ…女装だけど?」
B「え、うん、するけど…」
そしてブランが女装にノリノリだということ。
N「出たな、女装癖…」
K「兄さん可愛いもの好きだもんね〜」
そしてそれは昔かららしい。
B「手持ちの服でやっても良いけど、せっかくだからフルーレ君の作った服着たいなぁ」
🪡「えっと、それは嬉しいんだけど…良いのかな…」
フルーレは女性に見られることが嫌な気持ちがどうしても消えず、ノリノリなブランに少々押され気味だった。
B「どうよ?似合ってる?可愛い?」
バッチリメイクをしてウィッグを被って、コルセットまで着けて何処からどう見ても良いところのお嬢様のような見た目になったプランを見て執事達もケイティもノワールも感嘆の声を上げる。
K「とっても可愛い!!ねぇフルーレ、私にもおそろいのドレス作ってよ!!
🪡「えっと、それは構わないんですけど…俺はここまで完璧な女装できないっていうか…したくないっていうか…」
B「フルーレ君は絶対素質あるからしてみたら良いと思うんだけどな…絶対可愛いよ?」
🪡「俺は可愛いと思われるのが嫌なんです!」
N「まぁこれは好みの問題だからな。女装しなくてもフルーレは女の子に見えなくもないし、そのままで大丈夫なんじゃないか?」
完璧な女装を披露するブランに匹敵するほど気合を入れて女装する必要はないわけだし、とりあえずフルーレは手持ちの服の中から女の子っぽい服を選んで着ることになった。スカートは履きたくないと言っていたのでパンツスタイルだが、普通に女の子に見える。
ケイティもフルーレに作ってもらったお出かけ着を着てブランに髪をセットしてもらった。
K「それじゃあフルーレと兄さんはこの指輪からメッセージ飛ばして攫われた場所を特定してもらって
ね。私は自分の魔法で飛ばすから。で、場所の特定は兄ちゃんとルカス達にお願いするね」
N「あぁ、任せろ」
🍷「かしこまりました。襲撃班は1階と2階、別邸1階の3チームで行くことでよろしいでしょうか?」
B「それなら大丈夫だと思うよ。それじゃあ早速攫われに行こうか」
3人は特に誘拐が多いと言われている地区に向かい、裏通りや露店が立ち並ぶ闇市を見に行ったりした。
K「こちらケイ。後ろからついてくる人間の気配を感知。次の曲がり角で捕まるね」
N「了解。現在地を特定。近くに馬車などはあるか?」
K「恐らく馬車は何処かに停めてあるはず…発見。
…きゃっ!?」
通信が途絶えた瞬間、地図上でケイティの魔力で動いている現在地のピンが高速で動き始めて、馬車に乗せられたのだと分かった。
B「こちらブラン。尾行されている。多分仲間が近くに…うおっ!?」
ブランも通信をしてきたかと思えば悲鳴を上げてピンがありえない速さで動き出す。ブランとケイティの動いていく方向は全く逆方向。一時的な監禁場所があるのか、全く別の組織に掴まったのか分からないが、とりあえず襲撃にいつでも向かえるように準備を整えるようにノワールが声を掛けた。
🪡「こちらフルーレです…さっきからナンパされまくるんですよね…今のところ怪しい人影は見えません…がっ!!?」
フルーレからの報告も途中で途絶える。フルーレは近くの建物に引き摺り込まれたらしい。
とりあえずフルーレの身に危険が及ばないうちに1階の執事達をその建物へ向かわせた。
しばらくして地図上のピンの移動が止まったところでブランとケイティから女子供が集められているところに連れて行かれたと連絡が入る。
ブランは山奥の古城、ケイティは地元の貴族の屋敷の地下に閉じ込められたと言っている。
N「ここの貴族の屋敷は襲撃して大丈夫なのか?フィンレイ様に確認を取らないで良いか?」
🍷「ふむ…ですが一応私達は人身売買の記録や人と金の流れを調査するように言われていますので、強行偵察ということで襲撃してよろしいかと」
N「それなら大丈夫だな。屋敷ごと全部調べられるから他の悪事も見つかるかもな」
🍷「そうすれば主様に隷属していない貴族が減りますから我々にもメリットが大きいですね」
2階の執事達をケイティの居る屋敷に向かわせ、別邸1階の執事たちを山奥の古城に向かわせた。
ケイティは地下室に放り込まれて入口の出入り口には鍵と閂がかけられているため、1人で突破して同じように捕らえられた女子供を逃がすよりは襲撃班に助けてもらうほうが安全かと思ってとりあえず何人ほど捕まっているのか頭数を数え始めた。
一方ブランは古城の広い部屋に放り込まれ、窓と扉に板が打ち付けてあるいかにもな場所にため息を吐いていた。まさかこんな絵本みたいにお手本のような換金場所とは思わないじゃないか。警備の人間の気配を探って、馬車が離れた今なら特に武装したりせず立っているだけの監視を倒せば捕まっている子供たちの安全も確保できるし新しく人間を連れてきた瞬間に人攫いの実行犯を直接襲ってこの部屋に入れる前に解放できる。
ブランは襲撃班の到着を待たずに扉をぶち破り、隠し持っていたナイフで監視の人間たちを斬りつけていつでも逃げられるような状況に持っていく。
とりあえず殺さずに動けないくらいの怪我を負わせて、襲撃班の到着を待つ。
B「僕、戦闘向きじゃないんだけどなぁ。ドレスも汚れちゃったし最悪…洗濯で落ちるかな?
あ、連絡入れなくちゃだよね。
こちらブラン。敵勢力の無力化を確認す。
あとは実行犯達だな…それは襲撃班に任せていいよね。僕のやることは人質の命を守ることだし」
ブランはナイフをくるくると手の上で回して退屈そうに欠伸をした。
そしてフルーレは闇娼館に連れ込まれて怖いお兄さん達に囲まれて契約書を書かされそうになっていた。ここで一生客を取り続けるか今ここで死ぬかと選択を迫られる。フルーレは極度の恐怖と緊張で黙り込み、今にも泣きそうだった。
「ちっ、書けねぇっていうんならまず体験してから考えるってのはどうだ?」
「そりゃいいな!お嬢ちゃんこういう事するの初めてかな?」
「安心しろよ、最初は優しくしてやるからさぁ」
怖いお兄さん達はフルーレを奥の部屋に通してベッドに突き飛ばす。服を剥かれそうになってフルーレは叫ぶ。
🪡「ラト!!ラト!!聞こえてるだろ!?助けてよ!!」
その瞬間、どかん!という破壊音がして数人の足音が近付いてくる。
🍽️「フルーレ!!大丈夫か!?」
⚔️「コイツらは殺せないのが残念だが、罪は償わせる。安心しろ」
🫖「ここもフィンレイ様が目をつけていた闇市場の1つでしょうから証拠品は全て持ち帰りましょう。ロノ君はフルーレくんを連れて先に逃げてください」
🍽️「分かりました!立てるか?フルーレ」
🪡「ごめん、足が震えて…」
🍽️「じゃあおぶってやるよ」
ロノはフルーレをおんぶすると近くに停めていた馬車まで走っていく。
🍽️「とりあえずここでベリアンさん達を待つか」
🪡「うぅ…俺全然役に立てなくて申し訳ないな…」
馬車の荷台に座った2人はとりあえず離脱したことを報告した。
N「了解。証拠品と事情を知ってそうな人間を根こそぎ押さえろ。フルーレ、怖い目に遭わせて悪かった」
🪡「いえ…俺何もできなくて…本当にすみません!」
❤️🩹「聞こえますか、フルーレ?兄を呼んでくれて嬉しかったよ。今度からは一緒にお出かけするようにしましょうね」
🪡「べ、別にラトの耳が良いから呼んだだけで、襲撃班が来るまで持ち堪えられたんだからそんな心配しないでよ!」
フルーレは身の危険を感じて真っ先にラトを頼ったことが恥ずかしかったらしく、むくれて黙り込んでしまった。
N「ケイ、状況は?」
K「今のところ動きなし。私以外に23人閉じ込められてる。水も食べ物もロクに与えてないみたいで衰弱している子供も多い。早急に救助を」
N「あと10分ほどで2階の執事達が到着予定だ。それまで大人しく…」
K「ねぇコウモリ召喚していい?」
B「話は最後まで聞けって…あー、コウモリな…いいんじゃね?人間の動き止めるなら貧血にするのが手っ取り早いしな」
K「じゃあ召喚陣作っとくね〜」
ケイティは杖を取り出して地下の床に魔法陣を描いていく。
そしてそれが出来上がった頃、地下への扉が蹴破られて光が差し込む。
🦾「助けに来たぞ!とりあえずここに居る奴らは全員一度証人としてグロバナー家に保護される。…で、主様は何をしてるんだ?」
K「召喚するの。吸血コウモリなら速やかに人間を無力化できるからね。ほら、行ってらっしゃい!」
ケイティがそう言った瞬間、陣が光って大量の吸血コウモリ達が地上に出ていく。
とりあえずこれで証人を逃がすことは無いだろうから人命救助を優先して良いと言われた2階の執事達はコウモリに噛みつかれて血を抜かれてぶっ倒れている屋敷の関係者を踏まないようにしながら、衰弱している子供たちを馬車に運び込んだ。
それが終わると屋敷にあった人身売買の証拠品を片っ端から馬車に詰め込み、多分事情を知っているであろう人物を起こして縛り上げ、荷台に転がした。
ケイティが罪を犯したことがあるかないかの判別をする魔法を持っていたので、黒と出た人物を掻っ攫ったので多分聞き漏らしなどはないだろう。
ケイティは満足そうに馬車の荷台から見える景色を楽しんでいた。
最後にブランが人質の安全を確保した古城に別邸1階の執事達が到着した。
☂️「こちらに向かっている時に人攫いの馬車と遭遇したので御者と見張りは拘束して女子供は逃がしました」
💮「でも今捕まってるガキ達は証人になってもらわないといけないから一旦連れて帰るぞ〜」
🧸「ブランさん強いんですね!急所を避けて無力化するだなんて俺にはできない芸当です」
B「いやいや、僕は戦闘向きじゃないしこういう卑怯なことばかりするのが得意なだけだよ。…それよりこのシミ落としたいんだけどここって水道通ってるのかな?」
誘拐されて敵を無力化したというのに自分は戦闘向きじゃないと言うし、服の染み抜きの方が大事そうなブランに3人は苦笑いして近くに水源があったことを教えて女子供を馬車に乗せていった。
B「あーあ、暴れたからこの服シミがあちこちに飛んでて全部は洗えなかったよ…メイクも崩れちゃったし最悪〜」
全ての積み込みが終わる頃に下着姿のブランがドレスを片手にそんなことを言うので女子か、とツッコみたくなるのをなるのを抑えて馬車に乗せて帰った。
人身売買はその子達の親や兄姉に依頼されて売り飛ばされた子供たちばかりだった。
行く宛のない子供たちをどうしようかとフィンレイも頭を悩ませていたが、ケイティが貴族たちに孤児院を建てたいから金を出せと命令したことでとりあえずの居場所だけは確保できた。
ミヤジ、ハナマル、ベレンがたまに顔を出して子供たちが健やかに過ごせているか確認しに行くことになり、悪魔執事達への悪評も少しは落ち着きを見せ始めた。しかし、水も食料もない地下室で焦る様子も見せず魔法を使って関係者達を一網打尽にしたケイティへの恐怖を訴える子供たちも一定数居て、このトラウマの治療はどうしたらいいのだろうかとルカスとミヤジは頭を抱えた。
一方ケイティは怖がられることなど全く気にする素振りを見せず、助けた子供たちが大きくなったら捨て駒くらいにはなるかなぁと微笑んでいた。
ノワールとブランは人間をモノとして扱うケイティに慣れた様子だったが、執事達は隷属の契約などを絶対にしないと約束させた。
あの子達には幸せな人生を歩む権利があるのだ。主の気まぐれで運命が決まるだなんて許されない。
そう言われたケイティは適当に返事をして魔導書を読みたいからしばらく書庫に籠ると言って執事達を追い払った。
大量の証人と証拠品が手に入ったため、フィンレイからの依頼料はかなり弾んだらしい。
特にお金には困っていないので資産運用でも始めてみようかとナックは明細書と収支報告書を見比べつつ考えていたのだった。
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