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10
MAKO
龍
K「悪魔執事達って防御魔法も無しで戦ってるんでしょ?そりゃ怪我もするよね。私が居るからって防御できる訳じゃないし、やっぱり魔道具は必須だと思うの。だから魔道具作る間主様をやってほしいんだけど…」
N「俺達に代われって?」
B「それはありなの?」
K「いいじゃん、主様の仕事なんて悪魔の力の解放くらいじゃん。他は兄ちゃんと兄さんがしてくれてるし、私やること無さすぎて毎日書庫か部屋で魔導書読んでるだけだよ?何も問題ないでしょ?それじゃあしばらく部屋に籠るから。バイバイ!」
ノワールとブランが止める隙もなくケイティは指輪を外して消えてしまった。
からん、と床に転がった金の指輪を拾い、ノワールとブランはとりあえず執事達に知らせるべきだろうとハンドベルを鳴らして近くの執事を呼びつけると会議室に皆を集めてほしいと伝えた。
B「皆、忙しいところ申し訳ないんだけど…」
N「ケイトが飛んだ。しばらくこちらには戻らないらしい」
🐏「えっ……飛んだ??」
B「そう。しばらくは僕たちのどっちかに主様を代わってもらって魔道具を作りたいらしくて…」
N「またヒキニート生活始めやがった」
ノワールが机の上に置いた指輪は正真正銘主様の証の指輪。
🫖「では、しばらく主様はお二人のどちらかがなさるということですか?」
🍷「前代未聞だね。代わりを立てて居なくなる主様だなんて…」
🕯️「まぁ主様がしたいことをさせてあげることについては賛成だよ。ただ…主様の立場をこうも簡単に捨てられると今後が不安なんだが…」
年長組は不安げにノワールとブランを見つめる。
もしかしたらケイティが飽きたとかいう簡単な理由で悪魔執事達を見捨てるのではないか。そう心配になってノワールとブランの声を待つ。
N「とりあえず日替わりで俺達が主様をやる。あと…ケイトがお前達を見捨てるかについてだが、こればっかりは何とも言えない。悪い」
B「僕達はあくまでもキティを優先する。キティが皆と金輪際関わりたくないと言うのなら新しく主様を見つけて指輪を渡すよ。それまでの中継ぎもしないでほしいと言われたら僕達は何も言わずにこの世界に来なくなる可能性もある。
ただ…今回は皆に執着しているからこその降板だから心配はいらないよ。絶対にキティは帰ってくる。それだけは信じてもらえないかな?」
執事達は今回は必ず帰ってきてくれることに安心はしたけれど、飽きられて捨てられる可能性がゼロではないことに不安を示す。
🌟「ボク達、最悪捨てられちゃう可能性もあるってことですよね…?そしたら悪魔の力の解放も浄化もなしで戦わないといけない…それは酷すぎるよ…」
❤️🩹「もし私達を見捨てるというのならば少なくとも誰か1人は壊してやります。そのくらいの覚悟はあるのでしょうね?」
ラムリとラトが恨めしそうに2人を睨むと2人は視線だけで会話して頷いた。
N「もし見捨てるって言ったら責任は取らせる。首突っ込んだのはケイトだ。最後まで主様であるか、次の主様を見つけるまで主様としての仕事をするかは必ずさせる」
B「それでも主様を辞めるって言うなら…ラト君、壊していいよ。キティは不死身だから、楽しいよ」
❤️🩹「おや、そうなんですか?てっきり主様を庇ってお兄さん達を相手にすると踏んでいたのですが…
そうですか、不死身なのですね。今度壊してみてもいいでしょうか?壊れても治るのでしょう?」
B「壊れても治るけど、痛いらしいからキティは嫌がりそうだな。まぁでも一度くらいならやらせてくれるかもよ?頼んでみたら?」
N「今回俺達に無理矢理主様の仕事を押し付けた罰には丁度いいしな」
ラトは嬉しそうに笑ってケイティが早く戻ってこないかと待ちきれない様子でナイフを取り出す。
🪡「ラト!いくら不死身だからって主様を壊すなんてダメだよ!それに…何でお兄さん達はそんなに主様の命を軽く見てるんでしょうか?普通なら不死身だなんて死なない限り分からないですよね?」
フルーレの疑問に執事達は確かに、と頷く。
N「あ〜……じゃあもう見せた方が早いよな?」
B「そうだね。かなり昔のことになるんだけど…」
2人は首からかけていたペンダントを組み合わせて菱形を完成させると背後の壁に映像を映し出した。
人間たちの足音が聞こえる。
草木を揺らして獲物を追い回しているようだ。
皆の手には弓や剣が握られている。
そして、獲物は幼い少女のようだった。
少女は矢が背中に突き刺さったまま森の中をひたすら走って逃げていた。
その血の匂いに反応して兄弟は身を起こす。
B「ほら、あの子…いい匂いがするよ」
N「嗅いだことない匂いの血だな。食ってみたい。行くぞ」
二匹が少女の前に先回りして脚に噛みついて動きを止める。
K「痛い痛い痛い!!!」
N「うるせぇな。黙って食われればいいものを…」
B「この子の血、とっても甘いね。特別な人間なのかな?肉も甘いのかなぁ?」
N「あぁ、それは気になるな。食ってみようぜ」
K「痛いのヤダ!!殺してから食べてよ!!」
B「……注文の多い獲物だね」
N「うるせぇから殺して食おうぜ」
二匹は少女の首に噛みついて殺し、死肉を貪った。
骨の髄まで味わって骨だけになった少女の死骸を放置して二匹が美味しかったねと話しながら去っていく。
その時、カタカタと音を立てて散らばった骨達が集まって身体の形を作っていく。
二匹が足を止めて振り返ると、さっき貪り食ったはずの血肉が骨からどんどん回復していく。
人間の形になった少女は立ち上がり、驚いて動けなくなってしまった二匹を見てニヤリと笑った。
K「私の血肉が不老不死の薬になるって思って殺そうとしてくる馬鹿どものために仕掛けてた魔法がこんなところで役立つなんてね。私の血肉を口にした者は私の命令には絶対に従わないといけない奴隷になるのよ?つまりお前達は私のもの。馬鹿だなぁ、そんな事考えもせず食べたでしょ?」
二匹はそれを聞いて嫌な予感がして尻尾を丸める。
K「じゃあ早速命令ね。この森のなかで一番私が暮らしやすそうな場所に案内して。そして私が食べられそうな樹の実とかがある場所を教えて、お肉も食べたいから狩りにも行ってね?」
嫌だ、と抵抗して逃げようとしても、命令は絶対だという思考で頭が塗りつぶされる。
二匹は言われるがまま森の中の古い小屋に少女を案内した。
K「ふぅん、こんな隠れ家みたいなところがあったんだね。ここなら良さそう。この世界って結構物騒な人が多いから他の世界に行こうかと思ってたけど、しばらくここで暮らそうかな」
小屋は最近まで使われていた形跡があり、調理器具や寝具や生活に必要な細々としたものまで大体揃っていた。
B「それから肉が食いたいんだったな?兄さんはコイツに食べられる木の実がなる木に案内してくれ。俺は狩りにいってくる」
N「分かった」
K「あは、やっぱり自由に使える使い魔が居るって最高ね!人間も何人か使い魔にしちゃえば人里で暮らせたんだろうけど人間嫌いだしなぁ……
でも買い物とかはしないといけないからここを拠点にして近くの大きな街まで出るしかないのがなぁ……
犬橇作って大量購入できるようにするか。人間の使い魔を作るのも面倒だし……」
少女は気に登って熟れた木の実を採っては腰につけられたポーチに入れていく。手のひらサイズのポーチだったが魔法で容量を大きくし、入れたものの時間が止まるという便利な機能もあるそれに手当たり次第木の実をどんどん入れていく。
大体熟れたものがなくなると木から降りてきてブランに次の命令を飛ばす。
K「それじゃ次は飲水が調達出来る川とか湧き水が出てくるところに案内して」
ブランはもう一度その命令に逆らおうとするが、命令は絶対だとこの子の役に立たねばという意識で塗りつぶされてしまい抵抗できなかった。渋々湧き水が流れる小川に案内した。
K「結構あの家の近くだね。これなら生活できそう!なんだ、こんなに良いところがあるなら最初から森に住むようにしたらよかった〜」
少女と白狼が家に戻ると、ウサギを数羽と鹿を狩ってきた黒狼が家の前で待っていた。
B「遅かったな。木の実は採れたか?」
N「うん、それに小川も案内したから」
二匹が話している間、少女はウサギ持って小川へ向かって行く。
K「鹿は捌くの面倒だから食べていいよ。私はウサギ好きだから食べられる状態にしてくる。
……あ、そう言えば名前とか聞いてなかったよね。私はケイ。愛称でキティとかケイトって呼ばれることもあるからそんな感じで呼んで。あんた達の名前は?」
B「名前……?」
N「毛皮の色が違うから色でしか呼ばれたことないよね。群れの全員色が少しずつ違ってたからそれで判別してたし……」
K「えぇ!?完璧に使い魔にするんだったら本名知らないといけないんだけど……
まぁいいか、今から名前つけてそれで登録しよう。黒い方はノワール、白い方がブランでいい?」
N「結局色じゃないか……」
B「分かりやすさ重視ならそうなるだろ」
K「じゃあそういうことで!食べながら待ってて」
それから1人と2匹の生活が始まった。
ケイティは基本的に森で調達出来る食べ物を集めて少しずつ食べて生きた。狼たちは自分で狩りをして肉を食らい、余ったら干し肉にしてケイティが食べていた。
どうしても人里でしか手に入らない調理器具や小麦粉、塩、砂糖、香辛料、服、靴、などなどは天気のいい日に魔法で作った犬橇で街まで出て買ってきた。金はケイティが今まで異世界を渡り歩いて集めた宝石や貴金属を売って用意した。
魔導書や魔法の研究でしばらく異世界に行くから、と数日戻って来なかったり、そろそろ金目のものが底をつきそうだからあの世界でやっている資産運用の増えた分を引き出して金目のものを買ってくると言って数日戻って来なかったり、戻ってきた時にはずっと寝てなかったのかベッドに倒れて2〜3日寝ていることが頻発した。兄弟はこの子は生活を支えてくれる人間がいないとダメなのかも知れない、と思ったし自分達を使い魔にしていなかったらこの世界に留まろうと思ってなかったのだろうなと思った。
月日は流れて不老不死のケイティは何も変わらず生活を続けていた。
しかし、不老不死ではない兄弟には寿命が来る。
二匹とも自分で食べる分の獲物も捕まえられなくなってしまった。このままでは死んでしまうな、と2人が死を悟ったときケイティは服を脱いで2人の前に寝転んだ。
K「最近狩りできてないから何も食べてないでしょ?私は不老不死だから大丈夫。食べて。命令」
二匹は困惑しながらも命令と食欲に負けてケイティの身体に噛み付いた。
それからいくつか季節を超えて、ノワールが死んだ。そしてその次の季節が来る前にブランも眠るように息を引き取った。
ケイティは独りぼっちになった家の鏡に入って一冊の魔導書を持ってきて、二匹のお墓の前で死者の魂を縛りつけて使い魔にする魔術を展開した。
墓の中から眩い白と黒の光が出てきて人間の形になっていく。
N「これは……さっき死んだはずじゃ……というかなにこれ?人間の身体になってる?」
B「二足歩行難くねぇ?……慣れの問題か?」
二匹は二人に生まれ変わり、ケイティに色々な疑問を投げかける。どうして死んだのに人間の身体に生まれ変わったのか、これからも使い魔として生きていくことになるのか、人間の食べ物を食べて大丈夫なのか、獣の姿に戻れないのか……
ケイティは丁寧に説明し、魔術で魂を魔法で作った入れ物に固定して不老不死に近い状態になっていること、これからも使い魔として生きてほしいこと、入れ物は丈夫だから大抵の毒や毒となりうるものを食べても問題ないこと、強く念じれば人間獣人獣の姿になれることなどを噛み砕いて話した。
2人はとりあえず納得して、獣の姿ではできなかったことをできるようになろう、食べられなかった物を食べてみよう、もっとケイティのために頑張ろう、と思った。
ノワールは変わらず狩りに出かけて食料を調達してくれていたが、釣り竿や弓矢を使えるようになってからその効率が上がった。
ブランはずっと近くで見ていた家事を器用にこなし、掃除洗濯料理などを極めた。
ケイティは快適な暮らしのため、2人に異世界でやっている資産運用のこと、異世界の物は売ったら金になるので世界を跨いだ転売で生計を立てていること、魔導書を集めて魔法の研究に没頭するのが好きだから限界まで頑張って倒れるのを繰り返していること…などを説明して、2人に転売業を手伝ってほしいと言った。
ケイティはこの世界で人気な宝石や貴金属が安くで手に入る異世界のこの店を贔屓にしているとか、その世界で買い物をするための資金は資産運用で増やしていること、最初は魔物狩りで金を貯めたことなどを実際に異世界に連れて行って教えた。
2人は鏡を使って異世界に行ける魔法だけをとりあえず覚えて、2人だけでも生活していけるようになっていった。その間ケイティは魔導書の読解や魔法の研究に没頭していた。
森の中の小屋がそろそろ限界を迎えそうになった頃、金も貯まってきたから街で店を開いてはどうかとブランが提案してきた。
確かに1人で経営するのは難しくても3人ならできるかもしれないし、ブランは口も回るし頭もいいしお金のことにも詳しくなってきている。ノワールは力仕事が得意なので大きな品物も売ることができるだろう。
3人は近くの街の物件を購入した。
1階はお店で、2階は住居となっている造りの建物だったのでボロボロの小屋からすぐに引っ越しをして、異世界から大量の高く売れそうなものを搬入した。
骨董品店と銘打った転売業はすぐにそこそこの売り上げを叩き出し、安定して生活ができるようになった。商売が軌道に乗るとケイティは自分の部屋か鏡の中の魔導書を集めている図書館にずっと引き篭もって出てこなくなった。
そんなことがあっても兄弟はずっと骨董品店を経営してケイティのために働き金を稼いで料理を作って食べさせた。
そしてある日ケイティが珍しく外出した日、黒猫と指輪を拾ってきた。
そこで映像が消えて、ノワールとブランは執事達に理解できたか尋ねた。
🦋「えぇと……とりあえず主様が異世界の図書館に引き篭もってしまったことは分かりました。そしてそれがずっと続けてきたことなので何も心配はいらない…ということで大丈夫でしょうか?」
B「それでいいと思うよ。引き篭もるのに飽きたら出てくるし」
N「だからそれまで待っていて欲しい。ケイトはお前達をすごく気に入っている。だから死なないように色々小細工をしたいんだと思う。その小細工がどの程度の程度かによって期間が変わってくるし、途中で限界になって倒れる可能性があるから毎日様子は見に行かないといけないと思う」
B「そうそう、食事も睡眠もとらずに没頭して何日も徹夜して限界になって死んだように寝て回復魔法で身体を癒してまた引き篭もるんだよね。とりあえず最低限の食事は摂るように言わないとかな」
🍽️「じゃあ食べやすいものを用意しますね!」
N「あぁ、頼む」
🍷「……ところで、2人同時に主様になることはできませんよね?そこはどうお考えで?」
B「日替わりでやろうと思ってるかな。片方が主様の仕事をして、もう片方がキティのお世話をするつもりだよ」
🫖「では、天使狩りも貴族からの依頼も主様の生活も心配しないでよろしいのですね?」
N「あぁ、大丈夫だ」
執事達はとりあえず安心して生活できることは喜ばしく思った。しかし、主が死者蘇生の上位互換ができるほどのすごい力を持っていることに若干の恐怖を覚える。そんな人が作る自分達を守ってくれる道具は一体どんな物なのか…と期待と不安が膨らむのだった…
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