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聖次
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朝、ホームで篤好累(あいる)に会えるかと楽しみにしていた鶴(つる)。
しかし鶴は芸能の仕事で午前に仕事があったりして
なかなか朝早くから駅のホームということは多くはなかった。
しかも朝イチから学校に行ける日も、篤好累が毎日同じ電車に乗るとは限らない。
なので朝早くに駅のホームに行けた日でも、出会えたことはなかった。
「んん〜…」
左腕を枕に、机に伏せている鶴。
「お。鶴たん、どうしたの?」
と風海(ふみ)が声をかけてきた。
「ん?いや…まあ…。朝ねぇ〜…」
「あぁ。朝苦手な感じ?私も苦手」
と言う風海に
いや、朝は苦手だけど…
と思う鶴。そして午前の授業が終わり、お昼ご飯のときになって
「いやぁ〜しんど。休みたかったぁ〜」
と言いながら嶺夜(りや)が登校してきた。
「嶺夜ーおはー」
「お。鶴様おはー」
自分の席につく嶺夜。
「あ、嶺夜ちんおはよー」
「そのアダ名まだ言ってんのか」
と言いながらも3人でお昼ご飯を食べる。
「どしたん鶴様。元気なくない?」
嶺夜にまで言われる。
「え。私そんな元気なく見える?」
「んん〜。まあ、テレビとは違う」
「そりゃそうでしょ」
思わず笑う鶴。
「うん。鶴様は笑ってたほうがいいね」
と言う嶺夜。
「え。カッコよ。付き合ってくれよ」
「なんで半ギレなんだよ」
と笑う嶺夜。
「で?なんで元気ない、っていうかテンション低めなん?」
「朝が苦手って言ってたよね?」
と言う風海。
「あ、いや」
「余裕で昼。でも私が鶴様がいつもと違うって気づいたんだから理由はそれじゃない。
明白でしょ」
「嶺夜ちんって頭いいよね」
「いや?良くないよ。ふつーにバカ。ギャルだし。いや、こんな言い方はギャルに悪いか。
ギャルを一括りにバカって言ってるようなもんだもんね。
中には頭良いギャルもいるけど、私は世間一般が思うようなバカなギャルよ」
「嶺夜、芸能の癖ついてるよね」
「え。どこが」
「コンプラ(コンプライアンス)意識する考え方?」
「あぁ〜…。それはある。でも私割と自由にやらせてもらってるけどね」
「それが嶺夜ちんが売れてる理由(わけ)だもんね」
「ただ私、世間あっての私だからさ?こーゆーアイドル崩れのファンには嫌われてもいいんだけど」
と親指で風海を指す嶺夜。
「酷スンギ」
と言うもののなにもダメージを喰らっていない風海。
「世間様とか同業者に嫌われたらダメなのよ」
「一応私も同業者ですが」
「…」
無言で「は?」みたいな顔をする嶺夜。
「ま、どっちにしろ私らアイドルからの評判はすこぶる悪いよ?」
「だろうね。収録終えた後の挨拶したときの笑顔、収録前の笑顔とまるで違うもん。
収録前は「見てますー。今日お会いできるの楽しみにしてましたー
今日はお手柔らかにお願いしますね」なんて“アイドルスマイル”で言ってたのに
収録でめちゃくちゃに言った後「今日はありがとうございました。いろいろすみません」
って言ったら「あ、いや、全然大丈夫ですよぉ〜…。
スタジオの皆さん大盛り上がりでしたしぃ〜…」って崩壊寸前の“アイドルスマイル”で
言ってくるってのがパターン化してる」
「あぁ。「KAWAII scene creaters」とか「愛ファス(愛嬌ファーストクラス)」とか
「かわチャン(かわいさヘビー級チャンピオン)」とかと共演したでしょ?」
「…」
思い出そうとする嶺夜。
「…覚えてない。かわチャン?は覚えてる。名前おもろかったから。
ただ、世間で曲がどれだけ人気になろうが、よほどインパクトない限りはみんな同じに見えるから覚えてない。
風海も同級生じゃなくて同じクラスで仲良くなってなかったら点で覚えてないと思う。
ま、正味覚える気もないし」
「え、共演者の名前覚えないの?」
静かに驚く鶴。
「いや?基本的には事前に調べるよ?出演した番組軽く見たり、芸人さんだったらMyPipeでネタ見たり。
「あのネタおもしろいですよね」とか言ったことあるけど、ぶっちゃけ直前に見たやつ言っただけなんだよね。
そんな感じで共演者の人は事前に調べる。前も共演してたのに忘れてたらヤバいしね。
ただアイドルに関しては、アイドル自身か事務所かわかんないけど
相手が私のこと共演NGレベルにしてるだろうから、次共演することもないだろうし、だから覚えない。
脳キャパの無駄。ただでさえ容量少ないのに」
「嶺夜ちん、私たち女の子のグループだけじゃなくて、男の子のアイドルグループにも容赦ないもんね」
「あぁ。そうね。もちろんカッコいい人も歌上手い人もダンスうまい人もいる。
それは男性アイドルも女性アイドルも同じ。
さほどカッコ良くもないけど、しっかり自分の立ち位置を見つけてる人はすごいよ。
普通に尊敬できる。バラエティーを主戦場として
芸人さんを潰さず、変に出過ぎず、でもしっかり存在感は出す。
バカなアイドルは芸人さんとか他の人の邪魔してさ?爪痕残そうと必死じゃん?
マジで自分のことしか考えてない。あぁいうのって視聴者からしたら邪魔でしかないのね?
それをしない人。すごいよね。あとは俳優として地位を確立してる人。
アイドルの名前とかじゃなくて、ちゃんと実力で掴んでる人。すごいよね。
ただその人が出てるからっていってドラマの主題歌をそのアイドルの曲にするのは」
親指で首を掻っ切る仕草をする嶺夜。苦笑いする鶴。
「ジェンダー差別とかしないから私。
女だからって男子アイドルに甘口だったら世間様からブーイング浴びるからね。
あくまで私は世間様の代弁者だから。そもそもさ?有名になった曲ってのも
世間でヒットしたと勘違いしてるだけだからね。皆さんの好きなしょーもなショート動画の
しょーもなダンスの曲として“利用”されてるだけなのに「わーい!ヒットだぁ〜」ってバカみたいに騒いでね。
で歌そのものも良くなければ歌ってるアイドルも…ね?
可愛くもカッコよくもなければ、歌もダンスもうまくない。
少し前まではアイドル戦国時代なんて言われてたけど、今や人類皆アイドル時代だよね。
私の中学のクラスメイトのほうがイケメンだったり可愛かったりするからね。
てか赤山とか恵位寿(えいす)、己参道(おのれさんどう)歩いてる一般人のほうが
よっぽどイケメンとか可愛い人いるっての。人類皆アイドルというか、アイドル以外皆アイドル時代か」
「よくもまあそんなつらつらと毒が吐けるもんね」
「ん?まあ素だからね。普段から思ってることだし」
「でもこれが世間から求められてるんだよねぇ〜。不思議」
と言う風海。
「For some reason, I feel like she’s expressing my feelings, so I end up watching the shows she’s on.
(なんか、気持ちの代弁者みたいな感じがするんだよね。だから好きでよく見てる)」
と言う篤好累。
「I see. So? What’s their name?(へえぇ〜。で?名前は?)」
Christopher(クリストファー)が聞く。
「I can’t say. It might cause trouble for her. I could tell you if you put a beep sound over it, though.
(それは言えないかな。相手に迷惑かかるかもしれないし。あ、編集でピー音入れてくれるなら言える)」
なんていろいろと話した。
「So??Thank you for watching today!! Let’s make…
(ということで。本日もご視聴いただきありがとうございます!!)」
「「「The peace!」」」
「 See you again~(では皆さん、またねぇ~)」
「「See you again!!(またねぇ~)」」
「See ya〜(ばいちゃぁ〜)」
「Bye bye〜(バイバ〜イ)」
とスマホに向かってみんなで手を振る。
仲間でやっているMyPipeチャンネル「English Morons Everyday」の撮影をしていた。
ただただ「これで人気出て金稼げたらよくね?」的なノリで始めたチャンネルだったが
今では「生きた英語が学べる」「本場の日本語も学べる」などの理由で本当に人気になった。
中には「イケメン!」や「可愛い!」「美人!」などというビジュアル面でのコメントももちろん存在するが
人気の火付けは「学び」に関することだった。それにこの
「Does anyone have any gum?(ねえ、誰かガム持ってない?)」
「Yes, Ms,Hollywood, here’s some gum.(はい、ハリウッド女優様。ガムでございます)」
「Thanks Matt(ありがと、マット)」
みたいな内輪ノリも割と好評らしい。今回はコメント欄にあったコメントから会話のテーマを選んだ。
コメント欄にあった質問「皆さんが最近ハマっているものを教えてください」というテーマで話していた。
そこで篤好累は最近よく見るギャルタレントの話をした。
「篤好累はりーちさんが好きなのね。なんか意外」
瑠姫(るき)が言う。
「わかる。ギャル系がタイプなんな」
流望大(るのお)が言う。
「違うわ」
「なんの話?」
Lily(リリー)が聞いてくる。
「ん?Type for girl(女の子のタイプ)の話」
と流望大が言う。
「誰の?」
「こいつの」
「篤好累はどんな子が好きなの?」
「え。ギャル。こんな感じの」
と流望大がスマホで「りーち」の写真を検索してLilyに見せる。
「Hmm. I see(へえぇ〜。なるほどね?)」
「いや違うからね?」
「どう思う?」
「聞いてる?別にタイプとかじゃないから」
「良いんじゃない?アメリカっぽい」
「聞けよ」
「What are you guys talking about??(なぁ〜んの話してんの?)」
Harry(ハリー)が微笑みながら会話に入ってくる。
「篤好累がどんな子が好きかって話」
「Hmm.(ふぅ〜ん)どんな子?」
「違うからね?」
「こんな子」
と流望大が画面を見せる。
「Hmm.(へえぇ〜) A celebrity??(有名人?)」
「そうだよぉ〜。日本のバラエティー番組には割と出てる」
「Ahh. I got it.(あぁ〜。そうなんだ?)」
「What’s your type?? Harry??(ハリーの好きなタイプは?) In Japanese」
「In Japanese??(日本語で?)」
「Yes」
「ううぅ〜ん…。優しい?」
「優しいね。そんだけ?」
「可愛い」
「ま、そこまではオレも同じよ。もっと具体的に。More specifically」
「…。That’s all(だけかな)」
「…All?? Only that’s two??(全部?今ので?)」
「…Uh-hun(うん)」
「…」
Harryの目を覗き込むように見る流望大。
「…That’s a doubt.(ダウト)」
と流望大が言うと、しばらく表情を崩さずに、まるで「正解はぁ〜…」の溜めのように
流望大を見てから、視線を外し、肩をすくめ
「Right on the money〜(ピンポーン)」
と言うHarry。
「And. And, “Hmm… what’s the Japanese word for this?” Thinking about that is a pain, isn’t it?
(それと。それと、日本語で考えるのがめんどくさいんでしょ?)」
「Wow. It’s correct too. You guessed it.(おぉ。それも正解。よくわかったね)」
「No wonder Japanese is so hard. …, I guess.(日本語ってムズイもんなぁ〜。…知らんけど)」
「Well, 流望大 is Japanese, after all…(ま、流望大思わないだろうね…)」
と苦笑いするHarry。
「瑠姫。Did you see the MyPipe video I sent?(瑠姫、送ったMyPipeの動画見た?」
Emma(エマ)が瑠姫に聴く。
「Yeah!! That’s the live video of Abi’s “I am Last Boss,” right? It was amazing!
(うん!Abiの「I am Last Boss」のライブ動画ね?最高だった!)」
「I am」
「「Last Boss」」
「She had such a playful, flirty vibe.(小悪魔感すごかったよね)」
「She was incredibly cute.(めっちゃ可愛かった)」
「When she appeared on stage sitting in a chair like the final boss, the audience went wild, right?
(ラスボス感満載のイスに座って登場したとき、みんなキャーキャー言ってたよね)」
「That’s so true! But I still watch the live footage of ‘Summer Hour’ on repeat.
(それ!でも私今も「Summer Hour」)のライブ動画、何回も見てるんだよね)」
とEmmaが言うと
「I know, right?(わかる)」
と言う瑠姫。
「The way they rewrote the lyrics from ‘Laughing loud in an oversized hood’ to ‘Going to see Abi’s live show in the summer’ is just brilliant.(あの「Laughing loud in an oversized hood」のとこを「Going to see Abi’s live show in the summer」に変えた感じとかもう最高」
と続ける。
「I can relate.(わかる。最高) Isn’t the live video of “Don’t slip my lip” amazing too?
(「Don’t slip my lip」のライブ動画も最高じゃない?)」
「It best(最高). Her live performances of country and ballad-style songs like ‘Mamma Mia’ and ‘Fall’ are incredible, and ‘Berry Christmas’ has a wonderful festive vibe.(「Mamma mia」とか「fall」とかのカントリー調とかバラード調の曲のライブも最高だし
「Berry Christmas」のクリスマス感も最高)
「!(たしかに!)」
などとそんな話をしていた。大吉留(だいきち)はChristopher(クリストファー)やBarry(バリー)と
WEW(World Extreme Wrestling)Entertainmentの話で盛り上がったりと
それぞれがそれぞれでそれぞれの話をしていた。
基本的にはみんな英語で会話をしている。ただ英語が使える生徒は日本語の授業が
日本人や英語が母国語でなく、苦手な生徒は英語の授業があるため
その授業のために、日常会話も英語と日本語、双方を使おうとするのだが
やっぱり英語をよく使う人は英語のほうが楽らしく、英語になってしまう。
ただMyPipeの動画の撮影中はなるべく英語、日本語の双方を使うようにしている。
それは視聴者層が英語圏の人も多いからである。
「日本語の勉強なります」とかいうコメントもあるため、英語ばかりで会話していられないのだ。
そして午後の授業が始まり、午後の授業がすべて終わった。
英語圏、特にアメリカ国籍の生徒はスペイン語が必修授業であり
その他の生徒は中国語、韓国語、イタリア語、フランス語などなど、選択肢は自由。なので各々
「Spanish is killing me.(スペイン語ムズいんだよ)」
とか
「I give up on Korean. I’m switching to Italian next year.(韓国語無理だ。来年からイタリア語に変えよ)」
とか語学に関する愚痴がよく聞こえてくる。放課後も校舎前のちょっとした庭の
テーブル付きベンチ周辺に集まっていたいつもの仲良しメンバー。そしておもむろに
「Alright! Who’s down for Amaya?(よしっ!甘谷行く人!)」
とMattが手を挙げて言う。
「I’m in(乗った)」
とChristopherと
「I’m in!!(乗った!)」
Lily(リリー)が言う。それぞれ行く行かないと言っていって
「篤好累は?どうする?」
と瑠姫が聞く。
「オレ、今回、動画編集の番だから。パスで」
と言った。
「あ、そ?篤好累 said no.(篤好累、行かないって)」
と他のメンバーに言う瑠姫。すると
「I could hear.(聞こえてたよ)日本語アンダースターンド」
とMattが言う。
「そっか。そうだよね。じゃ、行こっか甘谷」
「行こー!」
ということで甘谷に行く組、他に用事がある組で分かれた。
「んじゃ、私は午後から雑誌の撮影もあるから」
と言う嶺夜。
「そっか。私はダンスレッスン」
と言う風海に
「そっか。頑張れ」
と言う嶺夜。
「おぉ。嶺夜ちんが優しい」
「私をなんだと?頑張れくらい言うわ」
「そっか。ありがと!嶺夜ちんも頑張って」
「ん。鶴は?」
「ん?私はー…。私もこの後仕事」
「そっかそっか。テレビ?」
「ううん。ネット配信のやつ」
「じゃ、別か」
「だね」
ということで学校を出るまでは一緒だったが、正門前で2手に分かれ、駅でそれぞれ分かれた。
鶴はまだ少し時間があったので、大吉祥寺で少し紅茶でも飲んでゆっくりしようと思った。
お店をどこにしようか悩んでいると
…お?
とテラス席に誰かを見つけた鶴。そのお店に入り、注文を済ませてテラス席へと行く。
篤好累はノートパソコンで動画の編集作業をしていた。字幕作業はAIにまかせているものの
AIはいらないところまで字幕をつけたりするので、いらないところは手作業でカット。
さらに会話がグチャッってなってるところは聞き取れた方だけを抜き出したり
変な感じになるので、そこも手作業でテロップを2つにしたり
ピックアップしたいほうだけを字幕にしたりする。BGMをつけたり、カットしたり
それこそビープ音、ピー音を入れたり、効果音を付け足したり。
AIのお陰でだいぶ編集は楽になったとはいえ、まだまだ人の手が加わる前提での話。
篤好累は肩が凝ったので、一度背を伸ばし、両肩甲骨をくっつけるようにする。
すると目の前に見覚えのあるセーラー服を着た女の子が来て口パクでなにかを言っていた。
篤好累がワイヤレスイヤホンを外すと
「一緒にいい?」
と言いながらマスクをズラす女の子。それは鶴だった。
「おぉ鶴。いいよ」
と言われ、篤好累の前の席に座る鶴。
「学校の勉強?」
と言いながらパソコンを見る鶴。
「ん?ううん。動画編集」
「動画編集?」
「そ」
「バイト?」
「んん〜…。に近い?」
「?」という顔をする鶴に、パソコンを軽くいじってパソコンの画面を鶴に向ける篤好累。
「ん?」
パソコンの画面に映っていたのはMyPipeのチャンネル主の画面。
公開非公開、削除、タイトルの編集などが行える画面。
もちろんそのチャンネルは「English Morons Everyday」
「ん?このチャンネルのバイトしてるの?」
「まあ。英語が少しは上達するかもよ?」
「このチャンネル見れば?」
「まあ。オレはあんま見てほしくないけど」
「…ん?どゆこと?」
「さあ?」
と言う篤好累に、気になって自分のスマホでMyPipeを開き、検索欄にチャンネル名を入れる。
えぇ〜?イングリッシュ、モー…ロンズ?エブリデイ
検索したらすぐに出てきた。
「うわ。再生回数すご」
「まあ、英語圏でも再生されてるからね」
「へえぇ〜…」
とスクロールして動画のサムネイルを見ていると
「…え?」
篤好累がサムネイルになっている動画があった。スマホの画面を見せる鶴。
「あぁ。その動画ね。好きな食べ物の話でオレがめっちゃいじられた回」
「え、え、え?…え。…出てるの?」
「出てるね」
「…お、おぉ」
驚いて変なリアクションになる鶴。
「まさかの演者…。とりあえず登録しとくね?」
「あ、りがとう?鶴は?友達と来たの?」
「ううん。1人だよ」
「そうなんだ。家近いの?」
「近くはないね。なんで?」
「いや、1人で来るってのなんでかなぁ〜って思って。
家近いから寄ったとかかなぁ〜って。あ、でも家聞くのはあれか。ごめんね?」
「え?いや?」
私が女だから気遣ってくれたのかな
と思う鶴。
「そうだ!聞きたかったんだ」
「ん?答えられることならなんでもどうぞ?」
「空声(くぜ)くんってハーフ?」
「ハーフ?」
「うん」
「あぁ〜…。…うんハーフ」
「あ、やっぱり?」
「日本人と日本人のハーフ」
と言う篤好累に
「ふっ。なにそれ」
と思わず笑う鶴。
「純日本人じゃん」
「ゴリゴリに純日本人。イタリアの子に教えてもらったジョーク」
「え。イタリア人の友達もいるの?」
「いるね。いろんな国の子がいるから」
「すご」
「でもなんで?」
「ん?」
「ハーフって」
「あぁそれ?なんか顔立ち?」
「顔立ち?オレ別に鼻高くも、目デカくも青くもないけど」
と言いながら自分の顔を触る篤好累。
「んん〜…。雰囲気?ハーフっぽい」
「そおかな。鶴は?純日本人?」
「私ー、はハーフ」
「あ、やっぱり?」
「日本人と日本人のハーフ」
と鶴がしてやったり顔をして言うと
「ふっ」
っと笑う篤好累。
「やられた。すぐ自分のものにしたね」
「いただきました」
「どうぞどうぞ」
「でも私もハーフ要素ないでしょ」
「んん〜…。可愛いから?」
「…ほ」
面と向かって「可愛い」と言われ、変な声が出た鶴。
「ほ?」
笑いながら聞く篤好累。
「ほ…んとーですか」
「ほ…んとーです」
「ありがとうございます」
「どういたしまして?」
思わぬタイミングで、しかも真顔で「可愛いから?」と篤好累に言われて、変にドギマギして変な間が空く。
「そ、そうだ!空声くんって洋楽聴く?」
と無理に話題を絞り出す。
「洋楽?聴くよ」
「私も聴くんだけどさ?英語できる人って洋楽ってどう聞こえてんの?日本語みたいに聞こえてんの?」
と鶴が言うと
「ううぅ〜ん…」
と腕を組む篤好累。
「難しいね。英語って難しいんだよね。歌になるとなおさら。
たとえば「It」ってワード、直訳すると「それ」なんだけど、それが前の文にかかってるのか
後の分にかかってるのかで意味合いが変わってきちゃうから。
特に曲だと、あえて「It」で表現で、サビで「It」の正体が明らかになるってパターンもあるから
とりあえず直訳で聞いてから、あぁ、あそこはこうか、って感じかな。
マンガの伏線回収みたいな感じ?読み返して、あぁ、ここの伏線が今回回収されたんだな。みたいな」
「へえぇ〜。なるほどね。じゃあ、今はもう洋楽聴いても意味がそのまま入ってくる感じ?」
「そうだね。ま、半分暗記みたいなもんだけどね。邦楽だってそうじゃん?」
「まあたしかにね?でも邦楽と違って英語暗記してからの訳も暗記だから、私には無理かな」
「そっか。鶴は洋楽なに聴くの?」
「ん?そうだなぁ〜…。Abiとか?Summer HourとかOur GlobeとかCheatとか好きだよ」
「みんな好きだよねAbi」
「そりゃー世界的歌姫だからね」
「うちのみんなも好きだって、ライブ映像何回も見てるって言ってた」
「わかる。Mamma miaとかもいいよね」
「ふうぅ〜ん?」
と鶴の顔をまじまじと見る篤好累。
え。なに?なんかマズいこと言った?
と思うのと同時に
やっぱどこか日本人っぽくないんだよなぁ〜…。カッコいいというかなんというか…。
海外の人と関わってると自然と引っ張られるものなのかな
と思う鶴。すると
「鶴、今恋してたりする?」
と言う篤好累。
「は、うえ?」
予期せぬ言葉に、また変な声が出た鶴。
「はうえ?」
笑う篤好累。
「は、いや、唐突すぎて。え、なんで?」
「いや、Abiのさっき鶴が上げた3曲とかMamma miaって、どれも恋の歌だから」
「へ、へぇ〜。意味知らずに聴いてからなぁ〜…」
「そっかそっか。あ、ちなみにOur Globeは冬曲だよ」
「え!?そうなの?」
「やっぱわかってなかったか」
「知らなかった。Summer HourとかBerry Christmasとか
「夏」とか「クリスマス」みたいな直接的なワードがあればわかるんだけどね」
「Snow Globeって知らない?」
「聞いたことある。スノードームみたいなやつ?」
「そうそうそれ。そのGlobeだから」
「あぁ〜そうなんだ。なるほどね?」
「あと、ま、Abiに限らず、というかこれは洋楽に限らずだけど
海外のポップソングってだいたい恋愛ソングだからね」
「そ、そうなんだ?」
「うん。邦楽みたいな、不思議な言葉遊びとかの曲もあるけど、だいたいはストレートな恋愛ソングだね。
健気で、でも嫉妬深くて、君を僕のものにしたい。とか君の最後のファーストキスの相手にしてよ。とか
邦楽よりも、執念というか、未練とかが割と多い気がする。
Abiは恋愛ソングだけじゃなくていろんな曲出してるけどね」
「へえぇ〜。そう聞くとちゃんと意味知りたくなるね」
「今の時代、検索すれば和訳出てくるよ」
「たしかに。帰ったら和訳見ながら聴いてみよ。そうだ」
「「そうだ」が多いな鶴は」
と笑う篤好累。
「なに?」
と聞く篤好累に
あ…。切り出したけどどうしよう…
と思う鶴。鶴は篤好累にニャンスタグラムのアカウントを聞こうと思っていた。
ニャンスタグラムのダイレクトメッセージでやり取りをしようと思っていたが、鶴は芸能人。
ニャンスタのフォロワーも多い。普通の女子高生では考えられないほどの人数。
さらに出演する番組の宣伝や、収録を終えた後、共演者と撮った写真なども投稿している。
なのでそれを見られたら芸能人だとバレる。なのでどうしようか迷った。結局
「LIME、やってる?」
と現代ではちょっと不自然な質問になった。現代において、しかも高校生ではLIMEは初期装備みたいなもの。
「LIME教えて?」ならまだしも「LIMEやってる?」は少しだけ不自然である。
「やってるよ?」
思わずクスッっと笑いながら言う篤好累。
「教えてもらっていい?」
「いいよ?」
ということでLIMEを交換した2人。
「英語のこととか聞こー」
「いいよ」
「動画のことも聞こー」
「それはどうかな」
ということで鶴は仕事があるため
「じゃ、私は先に」
と立ち上がる。
「そっか」
「なに?寂しいのか?」
と揶揄い口調で、冗談半分に言った。
「んん〜…。ちょい?」
と言う篤好累に
え?
とまた少しドキッっとした鶴。
「ま、同じ学校の日本人しか関わってこなかったからさ。新鮮で」
「そ、うなんだ?全然気軽にLIMEして?返事遅いかもだけど」
「うん。ソッコーするね?」
「オッケー。待ってます。じゃ、またね」
「うん。またね。気をつけて」
「ん。ありがと」
と言ってカフェを出て駅に向かい電車に乗った。
ワイヤレスイヤホンで洋楽を聴き、ネットでその和訳歌詞を見ていた。
へえぇ〜…ガッツリ恋愛ソングなんだ。しかも片想い
と思っているとスマホの上部に通知が届く。
篤好累「ソッコー」
とだけ来た。思わずクスッっと笑い
ソッコーってそういうこと?
と思って通知をタップして返信した。
「さて。編集続きやるか…。めんどくせぇ〜…」
と呟きながらパソコンを見つめる篤好累。鶴は篤好累からの返信が遅くて
でもみんなそんなもんだよね
と思いながらも、返信が遅いことへの気持ちの焦りというか、苦しさが募っていたのに気づかない鶴。
そのまま仕事に向かった鶴。マネージャーの桃に
「どうしたの?なんかあった?」
と言われ
「へ?なんで?」
と返す鶴。
「なんか嬉しさとなんか他の感情が混ざってる感じ?」
さすが桃さん…鋭いな…
と思う鶴。
「仕事では出さないようにね」
「はあぁ〜い」
ということで仕事に臨んだ鶴だった。
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わあ〜第13話、読み終えたよ〜!!🌸✨ 鶴たんが篤好累くんとカフェで偶然会えて、しかもLIME交換できたの尊すぎる…😭💕「ソッコー」って返信来たときの鶴たんの反応、完全に乙女じゃん!!でも返信遅いとちょっと焦っちゃう感じ、わかるわかる〜🥺 それにしても「English Morons Everyday」のメンバーがみんな個性的で、英語と日本語混ざった会話がリアルで面白いね!嶺夜ちんの毒舌も相変わらずキレッキレで笑ったw 次が気になる〜!!続き楽しみにしてるよ⋆♡