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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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その夜、俺たち三人は話し合いのため、リビングに集まっていた。玲子さんの最後の願いを叶えるために。俺たちのやりたいことを見つけるために。「僕ね、医者になろうと思うんだ。」

ヒロトがそう切り出した。

「僕はこれ以上奇病で苦しむ人を見たくない。もう、大事な人に苦しい顔をさせないために。僕は戦うよ。」

アキラはうなずいた。

「俺たち頭は良くないけれど、必死に勉強しようと思うんだ!」

ヒロトとアキラはすでにその覚悟を持っているようだった。しかし俺は迷っていた。人を救ったとしても、いずれ裏切られる可能性に俺はおびえていただけかもしれない。

「大丈夫だよ。お前は俺たちが守る。」

「今まで守られてばかりだったからな!今度は俺たちが守る番だ!」

ヒロトとアキラはそう言って笑ってくれた。

「だから、一緒に医者になろう。玲子さんのように苦しむ人が一人でも減るように。」

「あぁ……!」

それから、俺たちは必死に勉強した。目指すは上原さんのような奇病専門医だ。医学専攻の大学に入るため、それはもう必死に。俺たちは頭がよくないからそれなりに苦労したけれど、優香さんが塾にも通わせてくれたし、美紀さんが診療後に勉強を見てくれた。その結果、美紀さんと優香さんが行ったロンドンの大学に入学することになった。

 ロンドンに出発する日、春川組の人達や優香さん、美紀さんが見送ってくれた。

「頑張れよ、三人とも」

「はい!」

俺たちは寂しさで泣き叫ぶ春川組の人達を背に飛行機の搭乗口へ向かった。その時だった。獅子合が俺たちの前に立つ。

「なにか?」

「お前たちにこれを渡しておく。」

そう言って取り出したのは写真が入ったペンダントだった。

「これは……」

中に入っている写真は俺たちが遊園地に行った時の写真だ。

「お前たちにはいつでも玲子がついている。」

「ありがとうございます……獅子合さん。」

「いってこい。」

俺たちは決意を胸に飛行機に乗った。

ロンドンに着くと、美紀さんの友人であるキャサリンさんが待っていた。

「ハロー!初めまして三人共!」

「はじめまして、キャサリンさん。」

美紀さんと同期である彼女だが見た目よりも若々しく見えた。

「美紀から話は聞いているよ!君たちもStar Life Instituteに入りたくて受験したんでしょう?」

「はい、そうです。」

「卒業生として、そして教授として歓迎するよ!君たちは優秀だと聞いたからね。医学を学んでいる間も研究所に足を運んでいいよ!」

彼女はそう言って明るく話してくれた。

Star Life Institute――それは美しい奇病について研究し、治療法を見つけるために活動する研究所。この学校は三年間医学の基礎をみっちり勉強してその後各々で専攻するものを選んでいく。その時に研究所から声がかかることもあるのだとか。その中でもこの研究所は美しい奇病と呼ばれた奇病について研究し、治療法やその人にあった生き方を見つけている。この研究室に入るためには医学の知識はもちろんのこと奇病についてもある程度知っておかねばならず、ただでさえ医学の勉強が大変なところにさらに積み重なるように勉強することが増えるため入るのが難しい。美紀さんはこの研究所で三年間研究し、日本に戻ってきてからあのクリニックを開いたのだとか。

「美紀と優香は元気にやっているかい?大学にいたころから妹がかわいいかわいいと言って自慢していたんだが。」

妹というのは玲子さんのことだろう。

「美紀さんも優香さんも元気ですよ。でも優香さんの妹、玲子さんは……」

「……すまない、嫌なことを聞いたね。」

「いえ。」

「もしかして、君たちがStar Life Instituteに入る理由は彼女の死と何か関係があるのかい?」

俺たちは顔を見合わせ、うなずいた。

「彼女は星散病を患っていました。俺たちは治療法を見つけたいのです。」

アキラが彼女にそう言う。彼女は少し考えた後、深くうなずいた。

「なるほど。確かに星散病の治療法は今のところはない。その病気がなぜあるかもわかっていないからね。」

そんな話をしていると空港の駐車場にある一台の車にたどりいた。

「さぁ、乗って。詳しい話は研究所でしよう。」

俺たちは彼女の車に乗り込むとロンドンの街並みを走った。ロンドンの大きな時計塔。賑やかな街並み。そのすべてが俺たちの心を震わせる。俺たちはここで生活をしていくのだと心が躍った。

「お昼は食べたかい?もしまだならカフェで何か買ってくるよ。」

「いいのですか?」

「もちろん!少し待っていてね。」

そういうと彼女は建物の前に車を止めておしゃれなカフェに入っていった。五分もしないうちに帰ってくる。

「お待たせ。コーヒーと、サンドイッチだよ。」

「ありがとうございます。」

俺たちはそれを受け取り、サンドイッチをほおばった。焼きたてのベーコンの香ばしい香りと野菜の甘さが口いっぱいに広がる。イギリスの食事はおいしくないと聞いていたがそんなのは嘘だ。

「ここのカフェはサンドイッチだけじゃなくてスコーンも美味いんだ。時間があるときに食べにいきな。」

「はい、このお店は通うと思います。」

口に詰め込んだものをコーヒーで流し込みながら過ぎ去っていく景色を見ていた。

 そして学校に到着すると、俺たちは車を降り、研究所へ案内された。

「さぁ、着いたよ、ここだ。」

中に入ると薬などの独特な香りがした。

「皆、集まって!」

「はーい!!!」

彼女が研究員たちを集める。集まった研究生たちは全部で四人。

「はじめまして、副教授のエリーです!わからないところがあったら聞いてね!」

「私は六年のオリビアといいます!よろしくね!」

「僕は五年のイーサン。よろしく。」

「同じく五年のジュリアン!よろしくな!」

全員白衣を羽織っていてかなりかっこよく、頼もしく見えた。

「ヒロトといいます。」

「アキラです。」

「コウタです。」

俺たちは先輩たちにお辞儀をし、握手を交わした。

「いやー。この研究所に日本人が入ってくるなんて思わなかったよ!」

「教授からいろいろ話は聞いているよ!君たちの病気のこともね!」

そうか、美紀さんがあらかじめキャサリンさんに俺たちのこと話していてくれたのか。

「この国では美しい奇病を持つ人を守る法律があるんだ。安心して過ごすといいよ。」

「この国はかなり進んでいるのですね……」

「当然さ!代々この研究所の教授と、学校の理事長が大統領と皇室に掛け合ってきたからね!法律ができてからというもの、この国では美しい奇病を持つ人を狙うことは少なくなったんだ!お金持ちが彼らを買ったりすればすぐにバレるから買うことはできないし、買い手がいなくなれば売るやつだって自然といなくなる!」

ジュリアンの熱弁に圧倒されてしまったが、この国は本当にいいところだなと思い知らされた。

「まぁ、先進国ではこういう法律ができはじめてきているからね。アジアの国々が遅いだけだよ。」

イーサンは少しあきれながらそう言った。確かに、今でも日本や中国、韓国ではこの法律はないし、俺のような狂獣病をもつ者達は軍隊に入れられることが多い。俺もきっとそのために親から薬を打たれていたと思う。軍隊に買ってもらえればそれなりにお金が入るということは春川組の人から聞かされていたのでそういう推論が出来上がった。

「はいはい、熱弁は後にしましょ。彼らはこの国に到着したばかりなんだから。イーサン、彼らを寮へ案内してあげて。」

「わかりました。」

ヒーローは夜空に散る

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