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「専務、もう14時です。少し休憩した方がいいのでは⋯⋯」
「休憩なんてしていられないだ」
「しかし⋯」
「分かるだろう?新事業の仕事が溜まっているんだよ」
水面唯月 34歳
俺は水面建設会社の専務としてこの会社で働いている。
最近、父親である社長が新しい事業に手を出した。
そのせいで普段の仕事量にプラスしてその事業の仕事もしなくてはならない。
正直とても忙しい。
毎日、何十時間もパソコンと睨めあっているが、仕事量は全く減る気配がない。
そんな中、秘書は休憩を勧めてくる。とてもウザイが今の世の中それを言うとパワハラやなんやらと言われてしまうので口には出していない。
コンコン
ノックの音が鳴った。
「入っていいぞ」
「しつれいしまぁす」
扉の方から聞き覚えのある猫なで声が聞こえてくる。
「あのぉ、しょるいをぉ、もってきたんですけどぉ」
「ああ、そこに置いておいてくれ」
「あ、はぁい、わかりましたぁ」
この社員は最近コネで入社してきた華恋というやつだ。
華恋は最近話題になっていた中小企業の令嬢だ。話題と言っても悪い意味の。
華恋には悪いが良いイメージは全くない。
それに華恋は俺の嫌いなオメガだ。
そんな華恋は何かと理由をつけて俺に近付こうとしている。
きっと、俺のようなアルファを狙っているのだろう。
「そういえばぁ、せんむはぁ、おひるごはんたべたんですかぁ?」
華恋の喋り方に虫酸が走る。
それを悟られないよう俺は声のトーンを少し上げて話した。
「この後は用事があるんだ」
「えぇ、まいかいぃ、そうやってぇ、いいますよねぇ」
「では、僕は行きますね」
俺は華恋の話なんて無視しパソコンを持って移動した。
行く宛てなんてないが、とりあえずエレベーターに乗り下の階に降りた。
俺はパッと思い付き、展望台に向かうことにした。
14時ということで人はそこまで多くなく騒がしくない。
天気もよく晴れていて仕事が進みそうだった。
俺は窓に一番近い椅子に座りパソコンを開く。
仕事もキリが付き自販機にコーヒーを買いに行った。
俺はコーヒーが好きだ。自分で淹れたりもする。
でも最近は自分で淹れることは少なくなった。仕事が忙しいというのもあるが、あの店のコーヒーの味を知ってしまった今は自分で淹れたコーヒーでは何か違うように感じるようになってしまったからだ。
あのコーヒー屋からは他のコーヒー屋からは伝わらない熱意が感じられる。
会議までの時間が迫り俺はまたオフィスに戻ろうとした。
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