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「アルシエラ、お前にはこの伯爵家を出て行ってもらう」


ディクソン様に婚約破棄をされたから数日後、私はお父様からそんなことを言われた。

それは、予想外の言葉という訳でもない。先日は色々とあったので、そういうことを言われるかもしれないとは思っていたのだ。


「……どうしてですか?」

「これは、イフェリアの提案だ。どうやらお前は、あの子を悲しませたらしいな?」

「悲しませた? 一体どの言葉のことでしょうか?」

「このエルシエット伯爵家を支配すると言っただろう!」


お父様の言葉に、私は何も答えなかった。

そんなことは言った覚えがない。そう言っても恐らくは無駄だろう。お父様が、私の話なんて聞いてくれるはずはない。


「思い上がるなよ。お前は所詮、我々の傀儡に過ぎないというのに……このエルシエット伯爵家を、お前なんかに渡すものか!」

「……別にこんな家、欲しいなんて思いませんよ」

「なんだと?」


私は思わず、お父様に言い返していた。

出て行くように言われたからだろうか、私の口はいつもより緩くなってしまっているようだ。

しかし、それでもいいかもしれない。いっそのこと、今までため込んでいたものを吐き出した方が、清々するような気がする。


「このエルシエット伯爵家に、そんな価値なんてないと言っているんですよ」

「な、何?」

「確かに、地位としてはすごいかもしれません。伯爵、ですからね。でも、エルシエット伯爵家の品性は最悪です。そんな家を継いだって、意味なんてありませんよ」

「なっ、我らを侮辱するとは……」


お父様は、拳を握り締めていた。

流石の彼も、エルシエット伯爵家を侮辱されるのは、気に入らなかったのだろうか。今まで見たことないくらい、怒りをあらわにしている。


「謝っていれば、許してやってものの……お前との縁は、切らせてもらう」

「おやおや、まさか冗談で出て行けなんて言ったんですか? いい大人がそんなことを言うなんて、みっともないではありませんか」

「お、お前……」


私は特に恐れることもなく、お父様に対して言葉をかけられていた。

それには、自分でも驚いている。今まで恐ろしいと思っていたはずの彼が、今は何故か矮小に見える。

追い出されると言われて、吹っ切れたといった所だろうか。なんだか私の体は、いつもよりもとても軽かった。


「出て行けというなら、出て行きますよ。縁を切りたいというなら、切らせていただきます。安心してください。二度とここには戻りませんよ」

「な、なんだと……」


私は踵を返して、お父様から離れていく。

なんというか、気分はとても良かった。こんなことなら、最初から出て行く選択をしていればよかったと思うくらいだ。もちろん、実際の所そんな選択肢を取れる勇気がなかったから、今までの立場に甘んじていた訳ではあるが。




◇◇◇




「こうやって荷物をまとめてみると、案外少ないものね……」


私は、荷物をまとめてエルシエット伯爵家から出て行くことにした。

故に部屋の中から必要なものを鞄に詰めていたのだが、持って行こうと思うようなものは少なかった。

それだけ、私はこの家が嫌だったということだろうか。こう考えてみると、どうしてここに留まりたいと思っていたのかわからないくらいである。


「あら? これは……」


そこで私は、あまり使っていないタンスの中から木箱を見つけた。

それは、身に覚えがないものである。どうしてそこにそんなものがあるのか、私にはまったく理解できない。


「イフェリアの悪戯かしらね……?」


私は、その木箱をとりあえず取り出した。

少々怖いが、中を見てみた方がいいだろう。もしかしたら私が忘れているだけかもしれないし、確認しておく必要はある。


「……これは手紙?」


木箱の中に入っていたのは、一通の手紙であった。

そんなものを入れて木箱を棚に隠したというなら、流石に忘れるなんてことはないだろう。ということは、これは他の人が入れたものということになる。

その入れた人物が、イフェリアである可能性も低いだろう。この紙に罵倒の言葉が書いてあるという悪戯は、なんというか変だ。別の人物と考えるべきだろう。


「……これは、お母様からの手紙?」


手紙に目を通して、私は驚くことになった。

その手紙は、お母様が生前私に残してくれた手紙だったのだ。それを読んで、私は思わず震えてしまう。

今は亡きお母様からの手紙、それは私の心を揺さぶってきた。だが、私はなんとか冷静さを保って手紙を読み進めていく。


「……お母様は、私に財産を残してくれていたの?」


手紙には、お母様が私に財産を残してくれたという旨が書いてあった。

その事実に、私は驚いていた。そんな話をお母様から生前に聞いたことがなかったからだ。

しかし恐らく、それはお父様にばれないためだったのだろう。もしもばれたら、そのお金は持っていかれてしまっていたはずだ。


「お金に関してどうしようかと思っていたけれど、これならなんとかなりそうね……それに、お母様は頼れる人まで紹介してくれている」


お母様の手紙には、色々なことが書いてあった。

もしも伯爵家から追い出された場合、誰を頼ればいいかなど詳細に記してくれている。

これは私にとって、足掛かりになりそうだ。何をすればいいかが、段々と見えてきた。


「お母様、ありがとうございます」


私は、お母様に感謝していた。

彼女のおかげで、私の未来は思っていたよりも明るいものになりそうだ。

こうして私は、お母様からの手紙によって活路を切り開くことができたのだった。

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