テラーノベル
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ほんとに地雷への配慮ないです。
何でも許せる方のみお願いします。
読みにくかったらすみません。
カーテンがきっちりと閉められた閉鎖的な一室。
その部屋の真ん中に置かれたソファに、もたれかかるように座る一人の女性がいた。
黒い絹のような髪が顔にかかってもお構いなしに、彼女は目の前のテレビをじっと見ている。
『今大会、ペアでの優勝は、不破雷蔵、尾浜勘奈ペア!このペアは、、』
電気もつけていない部屋の唯一の光源となっているテレビでは、どうやらスケートのニュースをしているようだった。
明るい声が聞こえてくるテレビとは対比的に彼女の顔は暗い。
『この調子で、二年後のオリンピックへ向けて努力していきたいです!』
テレビに映っている二人は並んで仲睦まじくインタビューを受けている。
そんなテレビの様子を見ていた彼女は、もう耐えられないというようにポツリと独り言を残した。
「、はは…バカみたい…」
一人きりの部屋の中で、その言葉は消えていく。
テレビから目をそらし、足元へ視線を向けると悔しそうにそっと右足に手を当てた。
不破雷蔵編
「……」
スケートリンクから少し離れたベンチで、一枚の写真を見ている青年。
彼は不破雷蔵。ペアでのスケートを専門としている。安定した滑りと、時に見せる大胆な行動が武器だ。
彼は最近、全日本選手権で金メダルを取った。
そのため彼は、明るい雰囲気でベンチに座っているかと思いきや、彼の表情は重く、沈んでいた。
「、、、」
彼の見ていた写真には、明るい笑顔でこちらを見ている二人の少女と少年がいた。
手には金メダルを持ち、きらきらとした衣装を身にまとっている。
この写真に写っている少年は、幼い頃の不破雷蔵であった。
しかし、不破雷蔵の隣にいる少女は今のパートナーである尾浜勘奈ではなかった。
雷蔵と同じ、ふわふわの茶髪を後ろで一つにまとめ上げており、知らない人が見れば双子に見えるくらい彼らはそっくりである。
笑顔で写っている写真を神妙な面持ちで見つめる彼の視線には、悲しさと悔しさが滲んでいた。
「雷蔵!今日練習来てたんだな!」
ふと上の方から元気な声が聞こえてきたので見上げると、そこには笑顔の顔が二つあった。
「八左ヱ門!兵助!君たちこそ来てたの?」
彼らは竹谷八左ヱ門と久々知兵助。二人とも男子シングルで競技をしている選手だ。
特に久々知兵助は最近での大会ではすべて金メダルを取っている絶対王者である。
竹谷八左ヱ門も久々知兵助に続き、二位を維持しているかなりの実力者である。
「まあな!いや~昨日大会が終わってさ~本当は疲れてるんだけど、兵助が行こうって誘ってきたから。」
「ああ、見てたよ。兵助は一位だったよね。おめでとう!」
「ありがとう。でもなんかだんだん周りからのプレッシャーが重くなってる気がする、、、」
「あはは、そりゃあ負けなしだったらね。オリンピックも期待してるから」
「雷蔵までそんなことを言う!」
「はあー、俺も頑張ったんだけどなあ~。兵助の奴、後半コンビジャンプ成功させてさ~」
「あれは俺も賭けみたいなものだったよ」
「え~?ほんとかな~」
「ほんとだよ。成功したときほんとにほっとした」
「そっか~。ま、俺もまた兵助に追いつけるように頑張るよ!」
「うん。期待してる」
「へへへ、あ、そういえば勘奈は今日来てないのか?」
「ああ、なんか今日友達とお祝いで外食に行ってるらしくて」
「え~!いいなあ、俺も外食したい!」
「それなら、今日の練習終わりに三人で外食に行く?」
「え!行く!!あ、雷蔵は今日練習終わり空いてる?」
「うん。空いてるよ。僕も行こうかな」
「よっしゃー!なんかやる気出てきた!雷蔵!兵助!一緒に練習しよう!」
「分かった」
「あ、ごめん先行ってて。ちょっと準備しなきゃ」
「そっか。じゃあまたスケートリンクで待ってるなー!」
「じゃ、雷蔵。また後で」
「うん。すぐ行くから」
二人がスケートリンクに入ったのを確認して、雷蔵はまた写真へと視線を落とす。
しばらく写真を見つめた後、ぽつりと、雷蔵が言葉をこぼす。
「、、、今なら、、君の隣に立てるかな、、、」
その声色は酷く悲しそうで、苦しそうだった。
険しい表情をする雷蔵をは対照的に、写真の中の二人は、変わらず明るく笑っていた。
竹谷八左ヱ門編
ピッ、、ガコン
「、、ふぅ、、、」
人気のない自動販売機の前で、深呼吸をして息を整えた。
自動販売機で買った飲み物を取り出し、歩き始める。
歩きながら、俺、、竹谷八左ヱ門は今後の練習のプランを考える。
着氷後の姿勢は安定してきたから、今度はスピンの練習をしなきゃいけないか。
あとは、ステップの時の足の運び方も、練習が終わったら土井先生(スケートコーチ)に見てもらおう。
なんとなく、練習の計画を立て、よし、と意気込んでスケートリンクに足を向けた、その時、
「なんか竹谷ってさ、ジャンプは飛べるけどスケーティングはあんまだよな」
そう声が聞こえてきて、咄嗟に足を止めた。
どうやら、曲がり角の先で誰かが話をしているみたいだった。
「分かる。なんというか、雑というかさ~上品さがないみたいな」
「そうなんだよ。ジャンプ飛べるからって、調子乗ってるのかもな」
俺が近くにいるとも知らず、どんどん話を進めていく二人。
早くその場から離れた方がいいのは分かっているのに、どうしても足が動かない。
どんどん身体が冷たくなっていく。
スケーティングが雑。そんなのはとっくの昔に分かっていることだった。
俺だって別に雑にしようとしてしているわけではない。
その課題が分かっているから、ここで練習している。
「スケートはジャンプだけじゃダメなのにな」
「だから兵助にはいつも負けてるんだよ」
兵助、その言葉が聞こえた途端、今まで冷たかった身体が途端に熱くなっていく。
俺はいつも兵助に勝てない。それも事実だ。
兵助はスケーティング技術が高く、俺より難易度の高いジャンプが飛べなくても高得点をたたき出す。
一方俺は、難易度の高いジャンプは飛べるがそれ以外はてんでだめ。
ステップはレベルを取り切れないし、スピンもあんまり。着氷の姿勢が乱れて減点なんてよくあることだった。
「、、、っ、、」
全部事実だ。分かってる。こんなこと言われても仕方ない。
「、、あ」
もう休憩時間が終わってしまう。早くスケートリンクに戻らないと。
俺はどうにか気持ちを押さえつけて、その場を後にした。
~~
「ん~、スピンの回転力が少し弱いかな。もう一回やってみて」
「はい!」
回転力、少しスピードをつけてみるか。
後は姿勢にも気を付けながら、、、
「、、、うん。その調子かな。次はジャンプをもう一回しててもらってもいい?僕ちょっと他の子の練習見ないといけないから」
「あ、はい!」
「はちざえも~ん!さっきのスピン。よかったよ。」
土井先生がどこかへ行った後、さっきの様子を見てたらしい兵助が駆け寄ってきた。
「っあ、本当!それなら嬉しいな!」
「さっき、土井先生から何言われてたの?」
「ああ、他の子の練習見るからジャンプをしとけって」
「なるほど、俺も練習しないといけないな、、それじゃ!」
「ああ、また後で!、、、」
ジャンプ、、練習するか、、、
シャアァァァ
『スケーティングはあんまだよな』
、、そんなことわかってる。
『だから兵助にはいつも負けてるんだよ』
だから頑張ってる、、
『さっきのスピン。よかったよ』
お前の方が、、何倍もいいスピンをするじゃないか。
だから俺は、、、お前に、勝てない!!
ダンッ!!
あれ?
ジャンプってどうやって回るんだっけ。
どういう姿勢で回るんだっけ。
あれ?、、、
着地って、どうやってするんだっけ、、?
バタン!!!
「、、、っえ、、?」
俺、、今、、転んだのか、、、?
「っ八左ヱ門!!?」
「、、あ、兵助、、、」
「大丈夫か?受け身はちゃんと取れたか?」
ジャンプが飛べなかった、、?トゥーループが、、?
「怪我はないか?見たところ大丈夫そうだけど、、痛むところは?」
俺、ジャンプも飛べなくなったのか、、?
「、、?八左ヱ門?」
「っあ、ああ!平気だって!これぐらいは大したことないって!」
「そっか、、よかった。」
、、なんでそんな安心したような顔すんだよ。
いっそのこと、怪我しなくて残念ぐらいの表情でいてくれた方が、、嬉しかったよ。
「、、今日ちょっと、調子悪いのかもな!早く帰って休むわ!」
「そう?やっぱり怪我とかしてるんじゃない?」
「大丈夫だって!それじゃ!」
「うん。無理はしないでね」
「、、っおう!」
そんな顔で見ないでほしい。お前に嫉妬してた俺がずいぶんと汚く見えるじゃないか。
なんで俺は、、こんななんだろ、、、
~~
「、、完全に迷子だ、、、」
いつもと同じ道で帰るのが嫌で、違う方向で帰ったら、、見事に迷った!!
くっそ~次屋とか神崎じゃないんだからさ~!
日も暮れそうだし、、、
「、、あれ?」
あの建物って、スケート場だよな?こんなところにもあったんだ。
、、にしても人の気配がしないな。もう閉館してるのか?
いやでも、普通は10時ぐらいまでは開いてるもんだけど、、、
というかこんな人気のないところにあっていいのか?
こんなところにあったら、お客さんも来ないんじゃ、、
「おい。」
「っうわ!!」
突然後ろから声をかけられて反射的に後ろを向いた。
そこには、ふわふわの茶色の癖毛を後ろで一つに結びあげた女性が、不満そうな顔でこちらを見ていた。
、、なんか、雷蔵に似てる気が、、?
気のせいか。
「、、、お前、うろうろして何してるんだ」
「あー、いや、、迷子で、、」
「迷子?にしてもこんな奥まで来る奴がいるか、、」
なんか怖そうだな、、、いや、でもここで弱気になってはいけない!
「む、そんなこと言うけど、お前だって何でこんなところにいるんだよ。」
「私はそこのスケート場に用がある。」
「え、ここって今開いてるのか?」
「開いてるも何も、、ここは私のスケート場だ。私しか使わないからな」
わたしの、、スケート場?
「え!?ここのスケート場、お前のなの!?」
このでっかい、スケート場が!?
「まあな。専用のスケート場だ。」
せ、専用、、個人専用のスケート場とか聞いたことないわ、、、
「え、うそ、、、お前金持ちなんだな、、、」
「まあ、金持ちであることは認める。というか、お前呼びは不快だ。今すぐやめろ」
「え、じゃあなんて呼べばいいのさ」
「、、そうだな、ちふゆと呼んでくれ。」
「分かった!俺は竹谷八左ヱ門な!」
「、、竹谷、、って、前の世界選手権で二位だったあの竹谷か!」
二位。突然降りかかった言葉に、表情が強張る。
「あー。まあそうだな!」
「へえ。変な巡りあわせもあったもんだ。」
「、、でも二位だからな、、、はは」
「二位も一位もそんな変わらんだろ。私はお前のスケート。好きだぞ」
「え?」
俺の、、スケートを?
「スケートが好きなのが伝わってくる、楽しい演技をするからな」
「!!」
ぶわ、と感情が高ぶりだす。
嬉しいやら恥ずかしいやらなんやらでどんどん全身が熱くなる。
誰かにこんなこと言ってもらうの、、初めてかも。
「、、どうした?」
「い、いや。そんなこと言ってもらうの、、初めてだったから」
「そうか?」
「あ、ああ。いつもは兵助がいい演技だったとメディアに囲まれているから」
「兵助、、ああ、久々知兵助。一位の奴か。」
「、、まあ」
「ん~、でもあいつ、なんか怖そうに滑るよな」
「え、怖そう?」
「そう。まあ、一位ってのは常に追いかけられてる意識があるだろうからそうなるのも分かるけど」
「、、へー」
一位ってそんな感じになるんだ、、知らなかった、、、
「、、あ、もうこんな時間だ。じゃあ、私はこれで」
「あ、、、なあ!」
「ん?」
思わず大きな声を出してちふゆを呼び止める。
「お、俺も、、ここのスケート場で滑ってもいいか!?」
もっと、もっとちふゆの事を知りたい。それで、俺の事も知ってほしい!
「、、え?」
、、ま、まずい、、、すごく怪訝そうな顔をしている、、、!!
「え、えーっと、、だめ、、だよな、、、」
「いや、だってお前、両親が心配するんじゃないか?」
「あ、それなら大丈夫!今親は海外出張でロサンゼルスにいるから!」
「、、お前も大概金持ちっぽいな」
「そうか?あ、いや、だから、おれ、家に帰っても一人だから、、その、、」
「、、、はあ、九時。」
「え?」
「九時にはここから立ち去ること。それだけ守ってくれれば、ここで滑ってもいい」
「~~!!ありがとう!ちふゆ!」
「、、滑るならさっさと行くぞ。」
「あ、うん!」
~~
「ひ、、広~!!」
目の前に広がるのは、いつも俺が通っているスケート場より一回り大きいスケート場だ。
人が二人しかいない分、余計にスケート場が大きく見える。
「まあな。あ、ちなみに曲かけもできるぞ。」
「ほんとに!?すげ~!」
「ははっ、お前は素直だな」
ちふゆから告げられるスケート場のすごさを普通にリアクションしてたらなんか笑われた。
ていうか、これだけのスケート場がちふゆ専用ってすごくないか?
「そう?っていうか、俺がちふゆの事名前で呼んだんだから、ちふゆも俺の事名前で呼んでよ!」
「ん~、それはどうかな~?というか君の名前、なんだっけ」
あからさまにニヤニヤしながら俺をからかうちふゆ。
「竹谷八左ヱ門だよ!わざとだろ!」
「ははは!それは分からないな~」
もしかしたらちふゆは、案外揶揄い好きなのかもしれない。
「ち~ふ~ゆ~」
「はははっ!!ほら~、鬼さんこちら~」
俺が怒ってるふりをしても、痛くもかゆくもないという風に、ちふゆはスケートリンクを滑っていく。
「こらー!って速くない!?」
俺もスピードはある方だと思ってたけど、ちふゆはそれ以上に速い。
「私はスケート靴の使い方がうまいからな」
ふふんとドヤ顔をしてくるちふゆに対抗心を燃やし、俺もどんどんスピードを上げる。
、、、こんな風にスケートリンクを滑ったのっていつぶりだろ、、
楽しいなあ。
~~
「はああ、、、追いつけなかった、、、」
「はは、まだまだだな」
「、、、まーでも、」
「?」
「楽しかった!」
「、、、そうか。」
「、、なんかさー、俺最近調子悪くて。だから頑張んなきゃって思ってたんだけど、、」
「、、、よく知らん奴らになんか言われたのか?」
「んー、言われたっていうか、偶然聞いちゃったっていうか」
「そうか。」
「だから、俺なんでスケートやってんだろって、兵助にも追いつけないのにって」
「、、、」
「でも、ここで滑って気づいたんだ。俺、楽しいからスケートやってたんだって」
「、、そう。」
「ジャンプが飛べたときの高揚感とか、高得点が出たときの嬉しさとか、、、」
「、、、」
「、、やっぱり、スケートって楽しいな!」
そういって、にかっと笑えばちふゆもなんだかうれしそうな顔をする。
「、、、まあ、八左ヱ門は好きなように滑ればいいんじゃないか?」
、、え、今、、、
「!名前!」
「、、、君が言ったんだろう。名前で呼べと」
少し照れ臭そうに言うちふゆに、嬉しさがこみあげてくる。
「~!!やっぱりちふゆはいい奴だな!」
「、、そんなことはないさ」
ふと、ちふゆの顔が暗く、影っていることに気が付いた。なにもかも諦めたような、自嘲的な笑顔を浮かべながら。
「、、?ちふゆ、、」
何故ちふゆがそんな顔をしているのか、少し不安になって話しかけようとするが、それは叶わなかった。
「というか、八左ヱ門が久々知兵助に追いつけないのって、スケーティングが駄目だからじゃないのか?」
「うぐっ、、分かってますー!」
「まあ、素質がないわけではないと思うがな」
「えぇ?」
「お前はエッジの使い方とか、重心の動かし方が壊滅的なだけで、雑なわけじゃない」
「え、、雑じゃないって、、、本気で言ってんのか?」
「当たり前だろ。私はスケートを雑に演技する奴は嫌いだ。」
「え、そうなの?」
「まあな。、、でも、逆にスケートを雑に演技しないやつは好きだ。」
「!」
「例えば、、八左ヱ門とかな」
ちふゆは、、本当に俺が欲しい言葉をくれる。もしかしたら俺の心が読めているのかもしれない。
「~~!!ちふゆ~!!」
「やめろ、鬱陶しい。」
「やっぱり、お前はいい奴だよ~~!!」
「調子のいい奴め。」
口ではそういいながらも、ちふゆもなんだか楽しそうだった。
「へへへ。、、でも、エッジの上手い使い方ってどんなの?」
「そういうのは、コーチから習ったことがあるんじゃないか?」
「ん~、、あったような、、なかったような、、」
「、、、私が、教えようか」
「え!?いいの!?」
「ああ。、、だが、」
ちふゆが声を低くして俺に話す。
「?」
「お前がそれをクリアしてしまったら、久々知兵助を追い抜き、お前が男子シングルでのトップになるかもしれない」
「、、、」
「その時点でお前は“追う側”ではなく“追われる側”となる」
「、、、」
「追われる側になるだけの覚悟はあるか?八左ヱ門」
ちふゆの言った言葉は、とんでもない重みを感じた。まるで、自分が追われる側になったことがあるみたいだった。
「、、、ああ。そんな覚悟、とっくの昔にできてるよ」
「、、そうか。それじゃあ、私が教えてやろう」
ちふゆは、俺の目を見て少しだけ口の端を釣り上げた。
その表情に、俺の背筋にびりっとした電流が走る。
「、、よろしくな」
ああ、俺は今、どんな表情をしているのだろうか。
~~
「あ、もう時間だ。ここまでだな。」
「はぁっ、、、え?もう時間?」
「時計見てみろよ」
ちふゆにスケートを教えてもらい、練習していると、ちふゆがふと時計を見てそんなことを言う。
ちふゆが言う通り、時計を見れば、時計の針は九時より少し前だった。
「え~、もう少し滑ってたかった~、、、」
「ほら、帰った帰った。私にもいろいろあるんだ。」
「ちぇ~」
ちふゆが意外とあっさり俺を帰そうとしていて、少し悲しくなりちょっとだけしぶってみる。
だがちふゆはそんなこと一切気にしていない様子だったので、俺も諦めてスケートリンクから出る。
「、、にしても、八左ヱ門は飲み込みが早いな」
「そう?」
「ああ。私の言ったことをすぐに理解してくれる。」
「それって褒められてる!?」
「だーかーら。すぐに調子に乗るな」
今日初めて会ったとは思えないほどスムーズに会話が進んでいく。
、、、今日で終わりなのかな、、、
「なあ、ちふゆ。」
「?なんだ?」
「、、あのさ、我儘なのは分かってるんだけど、、明日もここに来ていい?」
「いいぞ」
「そうだよな。ちふゆも忙し、、、え?」
「別にいいぞ。そもそも私はこれからしばらくは八左ヱ門にスケートを教えるつもりだったんだが、、」
「、、え!?そうなの!?」
「あの数時間で私の持ってる知識をすべて教えられると思うなよ。まだ教えられていないことはたくさんある」
「、、じゃ、じゃあ明日も来ていいって事か!?」
「だから、最初からそう言ってるじゃないか」
「~~!ちふゆ~~!!」
「うわ!鬱陶しい!」
「明日も絶対来る!あ、レッスン料とか必要かな!?」
「いや、いらん。私が好きでやってることだから」
「ん~、でも、何もしないっていうわけには、、、」
「、、それじゃ、オリンピックに出て金メダルを取ってくれ」
「え!?」
「それが、私へのレッスン料金だ」
「、、もちろん!」
~~
「それじゃあ!また明日な!」
「ああ、五時ぐらいにはもういるから、時間の都合が合ったら来てくれ」
「分かったー!!」
随分と濃い一日だったなあと独り言をつぶやく。
でも、これからはさらにスケートを楽しく滑れそうだ。
俺の足取りは、最初ここを通った時より、はるかに軽かった。
ちなみに、
この後、道が分からなくてここに迷い込んだことを思い出し、爆速でちふゆのスケート場まで戻り、
若干呆れられながらいつも俺が通っているスケート場まで送ってもらうことになるのはまた別のお話。
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