「わ、わわわ!!すっご〜い!!」
「でしょ〜」
みくらはすっかり遊ぶことに夢中になっていた。思っていた以上に“サクラの客室”が楽しい場所だったのだ。
不思議な力で浮いている、レールの無いジェットコースターに観覧車。花畑の間をくるくると回るメリーゴーランドの馬や馬車。
(楽しい!すっごく楽しい!!)
退屈が大嫌いなみくらにとって、楽しいことや面白いことで溢れるサクラは最高の場所だった。
(どうせ夜が明けるまでサクラから出られないなら目一杯遊び尽くそ!!)
そして、ほぼ全ての乗り物に乗った後…
「みくら、今度は美味しいもの食べよ〜」
「うん!!」
2人の中はとても縮まっていた。
2人でおやつを済ませ、あの桜の木の下でハンモックに揺られのんびりする。
しばらくそうしていると、みくらは急な眠気に襲われた。
「みくら…?あぁ、もうそろそろ向こうで目が覚めるみたいだね〜」
「うん…眠い……」
「みくら、サクラでのことは忘れちゃうけど…もしまたここに来れたら……」
*
鳥の鳴き声で目を覚ましたみくらは体を起こすと、大きく伸びをした。
「…なんだか、すっごく楽しいことがあった気がするんだけど……何だっけ?」
記憶の中のぼんやりとしたモヤに小さな違和感を感じつつも、チェックアウトのために荷物をまとめる。
「そろそろチェックアウトしに行こう!」
和風な階段を降りてロビーに行くと、ロビーの真正面にあるバルコニーに目がいった。
なんとなくバルコニーから外を眺めると、少し遠くの方で大きなサクラの木が見えた気がした。
「…あれ、桜の木なんてないよね?」
ここは海の近くにできた旅館だから、 桜の木なんてあるはずが無い。
(あ、いけない、チェックアウト!)
慌てて受付に走ると、受付に立つ女の子にくすくすと楽しそうに笑われてしまった。
恥ずかしさで受付の人の顔を見れない。
部屋の鍵を返却したとき、みくらのお気に入りのクラゲキーホルダーが受付の奥に転がり落ちてしまった。
(あれ!?あたしカバンにつけておいたのに!!)
受付の女の子はまた少し笑うと、キーホルダーを取って、みくらの手のひらにのせた。
「あ、ありがとう!!」
「いいえ、こちらこそ当旅館をご利用頂きありがとうございました〜」
間延びした、何処か聞き覚えのあるような無いような声に顔を上げる。
「どうしました?」
「あの…あなたのお名前は?」
「ボクですか?」
うーん、と少し悩んだ後に受付の女の子はこう言った。
「はじめまして〜、ボクはバイトのシロウサギだよ!」
「あたしは…」
「知ってるよ、みくら」
「覚えてる?サクラ…桜の木の下!!」
にこっと笑うと、シロウサギは大きく頷いた。
それと同時にみくらの瞳が輝いた。
「はじめまして!!あたしはみくらだよ、泡沫みくら!!よろしくね、シロウサギ!!」
*
桜の綺麗な薄ピンク色の花弁が吹き乱れるここは、人が訪れる事は滅多に無い秘境の地。
その名はサクラ…人々の夢の拠り所。
今日もサクラで1人桜の花弁を追いかけるマイペースなウサギのもとに、どうやら可愛らしいクラゲが遊びにみたいです。
コメント
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ショートストーリーは難しい!! みくら呼びしてごめんね!! 三人称視点だと呼び捨てにするしか無かったんですッ!!_:(´ཀ`」 ∠):