「もしかしてケンジさん、はじめてだったりするのかな?」
「はじめてじゃないです~。でも綾香ちゃんとするのは初めてなので、緊張しちゃって」
ケンジさんは胸を触れさせた手を慌てて引っ込めて、なぜだか反対の手でその手を撫でさする。
「もう片方の手も、胸を触りたいんでしょ?」
私がくすくす笑いながら指摘すると、ケンジさんはさらに顔を真っ赤にして、首を激しく横に無理ながら叫ぶ。
「ああ、もう! 綾香ちゃんってばこれ以上の刺激を、俺に与えないでくださいよ。心の準備が追いつかないですって」
「これ以上の刺激って、まだなにもはじまってないのに。とりあえずバスタオルを外しちゃ」
「まだダメです! もうちょっと待って!!」
バスタオルを外す仕草をした途端に、慌てふためいた彼は自分の顔を両手で覆い隠してしまった。その姿に心底ゲンナリしてしまう。
(アソコはびんびんでヤる気があるクセに、何を言ってるんだろ。心と躰は裏腹ってことなのかしら)
「ケンジお兄ちゃん、いつまでそうしているつもりなの? 私このままの恰好でいたら、風邪を引いちゃうかもしれない……」
気を取り直して当たり障りのない言葉を告げてやると、ケンジさんは手の隙間からこっちを見、私の様子を窺った。しっかり目をこちらに向けることに成功したので、両膝を擦り合わせながら寒そうに躰を震わせてみせる。
「ケンジお兄ちゃん、寒いよ……。早くあっためて」
「わわわ、わかった。ますは綾香ちゃんが布団に入って」
「ひとりでお布団に入っても冷たいだけだよ。ケンジお兄ちゃんと一緒に入りたい」
私は立ち上がり、顔を隠している片手を引っ張り、胸の谷間にぎゅっと挟み込む。柔らかいであろうその感触に、ケンジさんの目尻がだだ下がりした。