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学パロ
🦍人間 🍆幽霊
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「ねぇ、知ってる?屋上に幽霊居るんだって!」
「何年も前にここの学校の生徒が、自分の人生を依代にして幽霊と結ばれたっていう噂なの‼」
昼休みの喧騒、女子生徒たちの無邪気な声が、風に乗ってフェンスの向こう側へと消えていく。
そんな噂話など、今の僕らには遠い世界の出来事のようだ。
屋上の空気は少し冷えていた。貴方がいるからだろうか。
僕の初恋は、幽霊だった。
いつも気だるげにしてるけど、僕が落ち込んだ時には優しく慰めてくれて、
それでいて、時折心臓を鷲掴みにされそうなくらい寂しそうな瞳で遠くを見つめる。
そんな彼に、僕は狂わされた。
「ぼんさん……」
呼びかけると、くせ毛の黒髪が夜風になびいた。かつて僕を狂わせた彼がそこにいる。
ある日、僕は屋上に居た。
サングラスをかけた怪しい先輩に話しかけられた。
話してみると案外いい人で、それから毎日話すほどの仲になった。
趣味の話、休日は何をするのか、そんな他愛無い会話。
でも、楽しかった。
出会って数日経ち、ふと名前を聞いた。
「ぼんじゅうる」
彼はそう答えた。
「なら、ぼんさんですね!」
僕がそういうと、彼・・・ぼんさんはふにゃりと笑った。
ある日、噂を聞いた。ここで昔、飛び降り事件があったらしい。
悪寒がした。そんなわけない、自分に言い聞かせながら屋上に走っていた。
息を切らせながら屋上に足を踏み入れた。瞬間、光に包まれた。
走馬灯のように流れてくる知らない誰かの記憶。校舎が今よりも綺麗で、学校名も違っていた。
教室のドアを開けると、黒板けしが落ちてきた。驚いてチョークの粉を払おうとするが、体は動かない。
ー記憶の中の誰かは、もう慣れたとでも言うように教室を後にした。
職員室から屋上の鍵をくすねて、バレないように階段を上る。
屋上の扉を開けると、突風が吹きつけてくる。
隅に座ると昼寝を始めた。
目を覚ますと外は暗くなり始め、星々が見えている。
部活動終了のチャイムが鳴り、夕日に真っ赤に染まって体が照らされた。
上靴を脱ぎ捨てた。息をのむ、上靴にぼんじゅうると名前が書かれてあった。
フェンスの外側、風にシャツが揺れる。
一歩、前に踏み出した。
記憶はそこで途切れる。僕は彼の過去を見た。
彼がなぜ一人でここで死ななければならなかったのか、そのすべてを知った。
彼を、孤独にはさせない。
記憶と同じ、真っ赤な夕日、激しく揺れるネクタイ。フェンスを掴む手は震えていたけれど、心は驚くほど凪いでいた。
「ドシャ」
鈍い音が、静かな校庭に響いた。コンクリートを鮮やかな紅が染め上げ、僕の人生が終わったことを告げる。
目を覚ますとぼんさんがこちらを覗き込んでいる。
頭を打ち付けた衝撃が確かに残っていた。
…僕はもう死んだ、終わったんだ。
手を伸ばせば貴方に触れられる。
幽霊だった頃の彼が、いつもすり抜けていってしまったもどかしさは、もうない。
「……どうして、こっちに来ちゃったの?」
ぼんさんが悲しそうに僕を見つめる。何も言えなかった。
ただ、少しでも苦い記憶を和らげるように。
僕は、目の前にいる最愛の人を強く抱擁した。夢なんかじゃない。腕の中に確かな重みがある。
遠くに見える街明かりは、もう僕らのものではない。
見上げれば、星空がただ残酷なほどに輝いている。
朝を迎え、生徒たちの話し声が聞こえ始めた。
「……ねぇ、屋上に居るとね、聞こえるんだよ」
「何が聞こえるの?」
「……幽霊が、生きてた頃のお話」
僕の人生を捧げた、残酷で幸福な恋の物語。
誰もいない夜の屋上で、僕らは今夜も、彷徨い続ける。
Fin.