「ほら……元貴が作った、あの曲。“loneliness”――」
その名前を聞いた瞬間、元貴の背筋がピクリと震えた。
「……お前、何を……」
滉斗はマイクをそっと元貴の唇へあてがった。
「ほら、喘ぎながら……歌ってみろよ。」
そして、囁くように続ける。
「“絶頂ね、あそこもここも濡らして”……あのフレーズ、今のお前にぴったりじゃん」
その言葉の直後、滉斗の指が元貴の腰にそっと触れる。
少しずつ、でも確実に、その深部へと侵食していく。
「っ、あ……っ……」
声を殺すように唇を噛む元貴の口元に、マイクが密着する。
耳元のモニターから、自分の吐息が音になって響いた。
「言ってみて?“絶頂ね”…って」
「や、やめっ……っ……」
「ダメ。ちゃんと聞かせてよ。元貴の声、俺にだけ、届けて」
後ろから重なった滉斗の体が、ゆっくりと腰を動かし始めた。
押さえつけられた手首。
突き上げられる快感。
そしてマイク越しに漏れる、自分のリアルな声。
「……っ、ぜ、っ……絶頂ね……っ……あそこも……ここも、ぬら……して……」
掠れた声で、元貴は震える唇からそのフレーズを搾り出した。
マイク越しに、自分の声が反響する。
まるで全身を責められているかのように、言葉のひとつひとつが鼓膜を這う。
「やば……っ、お前……その声、エロすぎ……」
滉斗が息を呑む。
その直後、後ろから元貴の腰へと強く深く、突き上げる動き。
「っあ……!ちょっ……ま、って……無理……っ!」
「やだ、止めない。だって今、すっごい顔してる…。 俺の中で歌ってんの、分かってる……?」
元貴の首筋に唇が這い、耳元を甘く噛まれる。
縛られた手首は逃げ場を失い、ただ快楽に呑まれていく。
「滉斗……っ、もう……ほんとに……やばい……っ!」
「いいよ、イっていい。声、全部聞かせて……なぁ、元貴……果てるとこ、俺に見せてよ」
「っ、ああ、あっ……も、やだ……や、め……あっ……っ!」
元貴の声がマイクに溶ける。
ぐちゃぐちゃに崩れたその声は、もう“歌”ではなかった。
けれど確かに――誰よりも、滉斗の心に届いていた。
「……滉斗、イく……ッ……っあ……ああ……っ」
マイクの先から、愛しさと快楽がこぼれた。
滉斗の手が緩み、元貴の体をぎゅっと抱きしめたまま、自身の奥を押しつける。
「……もう、無理……俺も、元貴、やば……イく、イくっ……!」
押し殺した呻きが耳元にかかる。
次の瞬間、滉斗の体が震え、熱が元貴の奥で弾けた。
2人の体がゆっくりと重なったまま沈み込む。
マイクの床に落ちた音が、やけに静かだった。
繋がったまま、息を整える。
「……元貴、好きだよ。ほんとに……」
「……うん、俺も。こんなに……誰か欲しいって思ったの、初めてだった……」
誰にも聞こえない、防音室の深くで。
乱れて、叫んで、すべてを曝け出して――
ようやく、ひとつになれた。
END
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