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任務の帰り道。
山の夜は冷え込みが強く、吐く息が白く伸びる。
「……くそ、冷えてきやがったな」
不死川が肩をすくめたその時、煉獄が手を叩いた。
「よし! ここで少し休もう、不死川!」
「は? こんなとこでか?」
「うむ! 焚き火をしようではないか!」
あれよあれよという間に、煉獄は山道脇で小枝や枯葉を集め始めた。
火を起こすのも早い。
あっという間にパチパチと赤い焔が揺れる。
「……ったく、手際いいな」
「はっはっは! これも鍛錬の賜物だ!」
すると煉獄は、懐から包みを取り出した。
中には新聞紙にくるまれた、ふっくらしたものがいくつも入っている。
「不死川、これは焼き芋だ!」
「……は? こんなもん持って任務行ってたのか」
「非常食だ!」
芋を焚き火の中に入れると、甘い匂いが漂い始めた。
実弥は最初「いらねぇ」とそっぽを向いていたが、香りに負けて手を伸ばす。
「……あっちぃ! ……でも、うめぇ」
「うむ! 腹が満たされれば心も温まる!」
夜空には星が瞬き、焚き火が二人の顔を明るく照らしていた。
「……こういうの、悪くねぇな」
「だろう、不死川!」
その後、焚き火の横で二人は軽口を叩きながら、芋を全部食べきってしまった。
翌朝、任務報告に戻った二人は、妙に甘い匂いを漂わせていたという。