「協力しない?あの二人を引き離させるために」
黒葉がオレに言った。
かみえと、ありすちゃんを引き離す…?
そんなの……
「……できない」
「は?」
「オレにはできない…っ
そんなの。だって、かみえは親友だし
裏切りたくないんだ…」
かみえとは、中学からの友達で、
毎日毎日、日が暮れるまで
オレとかみえとあずまと、
そしてみんなと、サッカーをしていた。
喧嘩もいっぱいしたけど、
仲直りするたび、
オレらの絆が深まってったんだ。
アイツは、オレのライバルでもあり、
親友でもあり、“憧れ”でもあるんだ。
どんなことにも
一生懸命に取り組むかみえは、
すごく、かっこいい。
いつも、かみえに負けてしまうから
がんばって勝ちたい。
かみえがいるから、オレは強くなれる。
だから ――
「― じゃあ、取られてもいいの?」
「…え?」
「花美さん、取られちゃってもいいんだ?」
………取られる…?
ありすちゃんを…?
かみえに…?
「……………嫌。取られたくない」
「そうよね?取られたくないよね?」
「ああ。せめて、恋愛だけでも勝ちたい」
「うんうん!じゃあ、作戦実行しようか?」
「ん?作戦…?」
「うん!作戦!」
「作戦ってなんだよ…聞いてねぇぞ。」
「作戦はねー…名付けて、
『キャッチでキュン♡トキメキ☆ラブラブ大作戦♡』だよ!」
「…ネーミングセンス皆無かよ。」
「はぁ!?なんですって!?
じゅ、重要なのは、作戦名じゃなくて、
内容でしょ!内・容!」
「まぁ、そうだな…」
「はい。これ、読んで。」
「なんだこれ?」
「いいから読んで。」
黒葉が一枚の紙をオレに渡してきた。
そこには、作戦の内容が書いてあった。
『キャッチでキュン♡
トキメキ☆ラブラブ大作戦♡
‹作戦内容›
まず、神笑くんと花美さんが
二人で話しているとき、
戸下山が花美さんの後ろに行ったら、
私が神笑くんを押す。
倒れかける神笑くんにつられて、
花美さんも倒れかける。
倒れかけている花美さんを、
戸下山がキャッチする。
花美さんは、戸下山にメロメロになる。
そして、私は倒れてしまった神笑くんに
手を差し伸べる 。
神笑くんは私にメロメロになる』
「これでどうよ?」
「…最高じゃねぇか」
これなら、自然にありすちゃんを
メロメロにさせられる。最高だ。
「そうと決まれば、お昼休みに作戦実行よ」
「おう」
ー お昼休み ー
「戸下山。廊下の端っこでスタンバイして」
「おう!行ってくる」
戸下山が廊下の端っこまで
行ったことを確認してから、
私は戸下山に合図を出した。
合図を出したら、
すぐに戸下山が歩いてきた。
戸下山が花美さんの後ろに立った瞬間に……
…今よ!
ドンッ
「えっ」
「きゃあっ」
ふふ、計画通り。
神笑くんが倒れかけて
花美さんも神笑くんにぶつかって、
倒れかけてる。バッチリよ!
「ゔえっ」
え、なんだか
気持ち悪い声がしたんだけど。
「ぐる゙じい゙……」
戸下山が苦しい!?嘘でしょ?
どういうこと!?
私が見に行くと、戸下山は
花美さんと、壁に挟まれていた。
しかも、神笑くんが花美さんを
壁ドンしている。
そうか、壁側だったからか。
まさかの、作戦失敗………
「あ………ごめん、ありすちゃん…」
「だ、大丈夫だよ……桃輝くん」
二人が顔を真っ赤にしている。
こうなるはずじゃなかったのに!!
「…う、痛い……………」
戸下山が片腕を押さえている。
「ど、どうしたの!?」
私は思わず、戸下山の側まで走った。
戸下山は、冷や汗をかきながら言った。
「腕が、すごく、痛い…」
「壁にぶつかった衝撃で!?
大丈夫?一人で立てそう?手伝おうか?」
「一人で立てると思う…」
戸下山は辛そうに一人で立った。
「とりあえず、保健室で休もう。
私もついていくよ。階段、危ないから」
「うん、ありがと」
コンコン
「失礼します」
私は保健室の扉を開けた。
「どうしたの?」
先生が尋ねてくる。
「戸下山の腕が…」
「こっち来て」
二人で保健室に入る。
戸下山は保健室のソファーに座って
先生が、戸下山の腕をみる。
「ちょっと腕見せてね」
そう言って、戸下山の制服の袖をめくった。
私は戸下山の腕を見て、衝撃を受けた。
「腫れてる…」
そう、戸下山の腕が腫れていた。
私のせい………?
「もしかすると、骨折かもしれない…」
「「骨折………」」
私と戸下山の声が揃った。
「とりあえず、病院で診てもらおう。」
「…わかりました」
まさか、こんなことになるとは………
「私も…ついていく」
「え?」
「だって…私のせい…だから。」
♡
病院に着いた。
戸下山の代わりに、私が問診票を書いた。
そして、戸下山の名前が呼ばれ、
戸下山は診察室に入って行った。
私は待合室の椅子に座って、戸下山を
待っている。
戸下山が戻ってきた。
「…骨折、だった。
それで、入院することになった…」
「う、そ………」
わ、私のせいだ……
私が神笑くんと結ばれるために
無理矢理、戸下山を巻き込んだ。
私のせい。
思わず、涙を流した。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「…黒葉のせいじゃない」
「ううん、私のせいよ……………」
私って、ほんと最悪な人間。
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