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戸下山が入院してから私はできるだけ毎日、
戸下山に会いに行った。
こんな最低な私にも、
会うたび、戸下山は優しく接してくれた。
「本当にごめんなさい。」
「全然いいんだってば!気にしないで!」
「うん……体調はどう?」
「だいぶ良くなってきたよー
黒葉が会いに来てくれるからかなー(笑)」
「…っ!」
冗談だって、わかってる。
だけど、なんだか嬉しくなった。
でも、花美さんを思い出すと
胸がチクンと痛む。なんでだろう?
私の好きな人は、神笑くん。
神笑くんのはずなのに……
「……ぃ!おい…っ!」
「えっ?」
気付けば、涙が私の頬を伝っていた。
「う…うそ…なんで…私泣いてるんだろ…」
私は必死に涙を拭った。
泣き顔なんて見られたくない……。
「大丈夫か?何かあったのか?
嫌なこと あったなら、オレに相談しろよ
強制とはいわないけどさ」
……っ、戸下山…。
アンタ、ほんとに いい奴。
「…ありがとう。私、なんで
泣いてるのかわからない。」
「え?」
「なんでだろうね。なんか
心がごちゃごちゃしてる。」
私は神笑くんのことが好き。
…な はずなのに。
なんでこんなにドキドキするんだろう。
「…ねぇ、戸下山。」
「ん?」
「花美さんのどこが好きなの?」
「どこって……。うーん、
髪の毛がシルクみたいにツヤツヤな
ところとか、笑顔が素敵なところとか。
かわいいのに飾らないところ…かな」
「ふぅん。ほんとに……好きなんだね」
「…うん」
自分で聞いといて、勝手に傷つく。
ほんと、なにしてんだろ、私。
…そうだ。私も、頑張って垢抜けたら良いんだ。
だって、今の私は髪もうねってるし、
センター分けの前髪は、
あんまり似合っていない。
化粧もちょっと濃いかも。
そして…目つきが悪い。
うん、戸下山が退院するまでに垢抜けて
絶対に戸下山を振り向かせてみせる!
♡
今日は、戸下山が退院して、
学校に来る日。
あの後、ずっと研究して、
私の長くて真っ黒な髪も
深く、濃い緑色の瞳も
目尻が上がった気の強そうな目も
全てを活かした、
私の“一番”可愛い私を見つけた。
そして、最高に可愛い私で
今日、戸下山に告白をする。
あ、神笑くん、諦めたと思ったでしょ?
だって、どんなに頑張っても、
神笑くんは振り向いてくれそうにないしね。
てか、絶対 神笑くんと花美さん、両思いだよね?
ま、本人たち気付いてなさそうだしなー。
両片思いってやつだね。
さ、準備しようっと。
まず、私の伸びて自然と
センター分けになった前髪をカットする。
ずっと憧れていた
重めのぱっつん前髪にしてみた。
結構似合ってる。
次に、ヘアアイロンを温めて、
私のうねった髪をストレートにした。
仕上げにヘアオイルをつけて、髪は完成。
最後にメイク。
トーンアップする日焼け止めを
顔全体に塗る。
次にビューラーでまつ毛を上げたら、
黒色のマスカラを塗る。
そして最後に、
ワインレッドのリップを塗る。
これで、“一番”可愛い私の完成。
早く戸下山に会いたい。
♡
「なんか小松菜変わったよな」
「垢抜けたよね」
「ちょっと見直した」
「髪キレイ。」
「ウチも垢抜けたーい」
ふふ、私って頑張れば、できる子よね。
って、こんな感情、
表に出さないようにしないと。
“飾らない美人”を目指してるからね。
そう思いながら、私は教室に入った。
教室に入ってから5分
ガラッ
教室の扉が開いた。
「おはよーっ」
…戸下山だ!
「うわーん!戸下山ー!」
「お前、大丈夫だった!?」
「会いたかったー!ダイヤ!」
げっ、みんなが戸下山の周りに
集まったから、二人きりになる
タイミングないじゃんか〜…。
ま、今日中に誘えばいいのよ!
二限目後…
戸下山が一人になった。
私はすぐに、戸下山に近寄り、話しかけた。
「んね、戸下山。」
「おう!黒葉!なんか久々だな」
「だね。途中から忙しくて、会いに行けてなかった。ごめん。」
「全然大丈夫だぜ!むしろ何回も
来てくれてありがとなー!」
そう笑顔で戸下山が言った。
だけど、一瞬だけ顔を暗くした。
さっきからずっとこれだ。
笑顔だと思いきや、ほんの一瞬だけ
暗い顔になる。
なんか悩んでる…?
「あのさ、戸下山」
「…あ、うん?」
「なんか、悩んでる?さっきから
暗い顔してるけど…」
「へ?…あ、ううん!悩みはねーよ!
ってか、オレ、暗い顔してたのか?
気付かなかった…」
「そっか。また何かあったら相談して。
前、戸下山も私を気遣ってくれたしね。」
「おう!ありがとよ!」
戸下山はニッと笑っている。
だけど、その顔は、どこか寂しそうだった。
私に言えない悩みなのかな…?
はぁ、ちょっと悲しい。
…ていうか、誘わないと
「ねえ、昼休みに話したいことあるんだけど、いい?」
「…ぁ、お、おう!もちろんッ!」
「ありがとっ」
よし、誘えた…
だけど、やっぱり、なんか悲しい。
ー 昨夜 ー
「ダイヤ、話がある」
オレが 自分の部屋に向かおうとしたとき、
父さんに呼ばれた。
オレは、リビングで
父さんと二人で話すことになった。
「大事な話だ。しっかり聞けよ。」
「うん」
父さんの顔は真剣だ。
本当に本当に大事な話っぽい。
オレは緊張しながら、
父さんの目を見た。
「…引っ越すことになった。海外に」
「…っ!う、嘘。」
「嘘だと思うか?」
「………」
思わない。でも、信じたくない。
もう、かみえとも、スペドとも、
みんなとも、ありすちゃんとも、
………黒葉とも、なかなか会えなくなるってことだよな……?
あぁ、やだよ…。
学校だって、頑張って入学したのに…
これかよ…。
なんで、なんで……
「なんでこうなるんだよ!」
「……っ! …ダイヤ。仕方ないんだ。
わかるだろ?父さんの仕事の都合なんだ。
お前がこれから先、生活するためにも
必要なことなんだ。」
「そんなこと…わかってる…、
わかってるけど…っ!
毎日毎日、頑張って、頑張って勉強して、
花園学園に入学したのに……!
いい友達もできたのに…!
毎日幸せに過ごしてたのに…!
全部壊れるじゃねぇかよっ!」
オレは思わず走って自分の部屋に入った。
はぁ、なんでこうなんの……。
ほんっと、最悪。