ジェネラル「……奥に向かう足跡はあっても戻っていく足跡はねぇ。鉱夫の言う通り本当に一人も帰ってきてないんだな」
ジェネラルが呟く。魔法少女、ジェネラル、風神、雷神の四人でプラチナ大空洞の再調査にやって来ていた。モンスターは全くいなかった。狂戦士たちがすべて片付けてしまってからそれほど時間も経っていないから、当然と言えば当然だ。
風神「……どうやら、問題はここみたいだね」
終わりがないと言われているプラチナ大空洞の最深部。上向きと下向きの階段があった。
雷神「天国と地獄……」
魔法少女「ん?」
雷神「いや。ちょっと思い出した。たぶんここは天国と地獄に繋がる階段だと思うんだ。そう考えたら戻って来られないのも無理は無いね」
魔法少女は例の紙切れに目線を落とした。
――最奥で待っている――
風神「あったねそういうの。天国と地獄でそれぞれ鍵を手に入れて、さらに奥の扉を開けると、そこは最奥って呼ばれる場所で、そこのさらに一番奥に、えーっと……なんだっけ」
雷神「さあ……忘れちゃったなぁ……」
ジェネラル「まあつまり、最奥に行くにはそれぞれ鍵を持って来て……ということか」
雷神「……じゃあ私と風ちゃんでここ登ってみる。二人は降りてくれる?」
魔法少女「わかったわ。じゃあ。この先の最奥への扉の前で会おうね」
最後の挨拶を済ませ、それぞれの階段を進んでいく。
――
天国側は神殿のようになっていて、神々しい雰囲気を放っていた。しかし、それでもモンスターはいる。
雷神「こんなところにも……」
大剣を振るい続けてやっとモンスターが片付いた。風神が回復魔法をかけると、そこに黒ずくめの見覚えのある人物がやって来た。反応速度だ。反応速度は何も言わずにこちらに向かってくる。
風神「前よりも術が強くかかってる! 気をつけて!」
雷神「うん! 『雷切』!」
雷の速さで突進を繰り返すが、反応速度には傷一つつかない。最小限の動きで躱しているようだった。
風神「(意思を殺してパワーアップさせる……残念だけどよくあることなのよね……仕方ないわ。ここで消耗する訳には行かない……!)『ウィンドジェイル』!」
反応速度が風の檻で囲まれる。反応速度が触れると、指が切れてしまった。
雷神「はぁっ!」
そこに、雷神が帯電させた大剣を投げた。避けることもできずに、反応速度はそれを腹で受けた。それでも、不気味なことにうめき声一つ出さない。檻を消したところに雷神が歩み寄り、剣を抜くと、反応速度は消えてしまった。
雷神「逃げんな‼」
雷神が叫ぶが、反応は無い。
雷神「ダメか……奥、進もっか」
風神「……うん」
――
地獄側はプラチナ大空洞と変わらず洞窟だった。唯一変わったことと言えば、プラチナが光を反射していた星のような光は消え、松明が揺らめいていることぐらいだろうか。そして、とても暑い。
魔法少女「ここで松明とはねぇ……ジェネラルさん、速く行かないと酸素不足は時間の問題ね」
ジェネラル「ああ。しかし、やけに氷魔法が多くないか?」
ジェネラルは上着を脱いで腰に巻いている。
魔法少女「暑いでしょ。ジェネラルと違って簡単に脱げる服でもないし」
ズダダダダッ!
ガッシャーン!
暑いため凍らせただけではすぐに溶けてよみがえってしまうため凍らせたらすぐに砕く必要がある。
魔法少女「(鬱陶しいったらありゃしないけど、仕方ないわね)」
氷を砕く音とマシンガンの銃声が、地獄の洞窟にこだまする。
モンスターが片付き、その音が止んだ時、ゆゆゆの影が見えた。すかさずジェネラルがマシンガンを構え、撃つ。土埃の向こうで、ゆゆゆの影が高速で動く。ジェネラルがその突進を避け、ライフルでゆゆゆを正確に撃ち抜く。一瞬怯んだ様子を見せたが、今度は魔法少女を狙う。先ほどの速さや威力は無いが、狙いの魔法少女の背中に、一直線に向かう。
魔法少女「そこだっ! 『めてお☆いんぱくと』!」
ゆゆゆに隕石が迫る。決して速くはないが、数で着実にゆゆゆを追い詰める。やがてゆゆゆは消えてしまった。
魔法少女「ふう。これで、まあ一段落かしら。はぁ……使うんじゃなかった……」
ジェネラル「先、行くぞ」
魔法少女「分かってるわよ」
――
「ようこそおいで下さいました」
天国の奥の扉を開けると、銀髪の女騎士が恭しく挨拶をする。
ヴァルキリー「私はヴァルキリーと申します。天使様はこちらです」
すると、後ろから白一色のワンピースに身を包んだゆっくりが現れた。
天使「あら、雷神ちゃんに風神ちゃんじゃない」
雷神「天使ちゃん! 久しぶりー!」
天使「わざわざそっちの入口から……それで? 何の用?」
雷神「最奥の鍵欲しいんだけど。天国にならあるって聞いたんだけど、本当?」
天使「うん! あげ……」
ヴァルキリー「天使様」
天使「……はーい」
天使は咳払いを一つすると、話し始めた。
天使「……あるにはあるんだけど、確認ね。最奥に行くにはここと、あと地獄でも鍵を貰わなきゃいけないんだけど、それは知ってる?」
雷神「うん」
天使「……あ、違う奴がが鍵取りに来てるっぽいけど、知り合い?」
霧のスクリーンを確認し、雷神と風神に向き直る。
雷神「うん。私達の仲間だよ」
天使「そう。なら良いの。……ヴァル、持って来て」
ヴァルキリー「はっ」
しばらくすると、ヴァルキリーが鍵を持って戻ってきた。
天使「この先は危険です。しかし、ここまで辿り着いたあなたがたなら、きっと大丈夫です。ご健闘を祈っております」
雷神「最後だけカッコつけちゃって」
天使「いいじゃん最後ぐらい……ま、頑張ってね」
――
「ジェネラル様と魔法少女様ですね?」
地獄では赤髪の角が生えた女が挨拶をする。
魔法少女「……? 何で……私達のこと知って……?」
すると、後ろから見知った顔が歩いてくる。
剣豪「よぉ。驚いたか?」
魔法少女「剣豪さん⁉」
それは剣豪だった。魔法少女もジェネラルも、驚きを隠せない。
剣豪「ああ。地獄の管理者やらせて貰ってる」
魔法少女「ちょっと待ってよ! それじゃあ今代の閻魔大王ってこと⁉ 一体何年位生きてるのよ?」
剣豪「ガキはあんま大人の年齢に首突っ込まねえ方がいいぞ」
悪魔「剣豪様」
剣豪「……ああ。悪魔。鍵、持ってこい」
悪魔「……よろしいのですね?」
剣豪「ああ。確認なら天使の方でやってくれるだろ」
悪魔「……かしこまりました」
やがて、悪魔が鍵を持って帰ってくる。その鍵を、ジェネラルに放り投げる。
剣豪「んじゃ、頑張れよ」
魔法少女「待って! 剣豪さんは行かないの?」
剣豪「俺はやることがある。……あいつらのこと、任せたぞ」
魔法少女「……うん」
ジェネラル「ああ」
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さいこー