テラーノベル
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カミラが地響きを立てて崩れ落ちた余波が冷めやらぬまま、コロシアムの大歓声は「耳を疑うような静寂」へと変わっていた。翌朝の魔界全土の新聞は、この「あり得ない敗北」のニュース一色で埋め尽くされた。
『大波乱! 350倍の単勝オッズを覆す!』
『貴族の名門シュタイン家、ハーフの落第生に一瞬で沈む』
『詠唱なし、魔法気配なし――暗殺者の悪夢、コロシアムに降臨』
闇賭博の胴元たちは顔を蒼白にして頭を抱え、情報屋のネットワークでは「クロード・ヴァルネとは何者なのか」「あの『鉛の小石』の正体は何だ」という情報が飛ぶように売れ、誰もが絶句と驚愕に震えていた。
一方、当のクロード本人は——。
「……あー、忙しすぎる。寝る時間すらない」
学園の地下深く、薄暗い秘密の密輸ルートの連絡所で、クロードは盛大に欠伸をかましながら戦術端末と大量の書類を突き合わしていた。
オッズ350倍の単勝に全財産を賭けていたおかげで、手元にはハンス経由で莫大な払戻金(資金)が転がり込んできた。だが、喜んでいる暇など一秒もない。
「ハンス、頼んでいたC4爆薬追加50ブロック、耐熱セラミック装甲、それと9mmの特殊徹甲弾を買い込めるだけ回してくれ。それから、次の対戦相手の属性に合わせた指向性地雷のカスタムパーツもだ」
「それと……人間界側の動きはどうなっている? 前魔王の崩御(と本人は思っている)に乗じて、人間界の軍部や特務機関が次元の隙間から魔界へ侵攻してくる気配はないか?」
(魔王が死んで均衡が崩れれば、一番最初に動くのは人間界の軍隊だ。裏ルートの確保と情報収集は怠れない)
「次の相手は……例の三人の誰か、あるいは残った純血のエリートか。どいつが来てもいいように、コロシアムの足場と気流の癖、詠唱速度の癖を洗っておかないと……」
「……ちょっと、クロード。こんなところにいたの?」
冷気とともに姿を現したのは、セリスだった。
新聞を片手に持ち、呆れと、未だ信じられないといった眼差しでクロードを見つめている。
「新聞も情報屋も、アンタの話題で持ちきりよ。『気味が悪い』『異端の怪物』って大騒ぎしているわ。……本当にカミラをあんな一瞬で沈めて、しかも大金を儲けたのね」
「噂や新聞の紙面なんてどうでもいい。それよりセリス、次の対戦カードが決まったのか?」
クロードは書類から目を離さず、淡々と尋ねる。
「……ええ。私のブロックも決まったけれど……アンタの次の相手は、あの【雷鳴魔法】のエレナ・ボルトよ」
「雷鳴のエレナか」
超高速の機動力と電撃を誇るエレナ。直進的なスピード勝負を仕掛けてくる相手に対し、どうやって「0.1秒の時間干渉」と「鋼鉄ワイヤーのトラップ」をコロシアムのリング上で合わせるか。
「……やることが山積みだな。兵器の検品、人間界の警戒、エレナの分析……はぁ、マジで二度寝したい」
クロードは頭を抱えて溜息をつきながらも、素早く愛用の拳銃のメンテナンスへと取りかかった。
大騒ぎする世間や驚愕する情報屋たちを余所に、ハーフの暗殺者は「確実に勝つための冷徹な準備」をただ黙々と進めていく。
n a ♡︎︎ *
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蒼月
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グリルタ
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コメント
1件
第16話、読み終えました。いやあ、350倍のオッズを覆した衝撃の余韻がまだ冷めやらないまま、早くも次戦の準備に奔走するクロードの姿がかっこよかったです。「喧騒の外側で淡々と準備を進める暗殺者」という構図、とても好きです。それにしても、人間界の侵攻や雷鳴のエレナ対策…伏線が着々と張られていて、次が気になりすぎます!