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その夜。
部屋の灯りを落としても、咲の瞼は重くならなかった。
布団に潜り込んで天井を見つめる。
「……妹ちゃんは、手ぶらでいいんだよ」
悠真の声が、鮮やかに蘇る。
思い出すたびに胸が熱くなって、枕を抱きしめた。
(悠真さん……あのとき、少し照れてたように見えた)
それがただの思い込みだと分かっていても、どうしても希望を抱いてしまう。
窓の外から聞こえる風の音に耳を澄ましながら、咲は何度も深呼吸を繰り返した。
眠れない夜は、切なくて、甘い。