テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「君が、“成功例”か」
その言葉を聞いた瞬間だった。頭の奥で、何かが引っかかった。
知らないはずなのに、聞いたことがある気がした。
成功例。失敗。生存。そんな言葉が遠くで響く。
『……』
視界が揺れる。蛍光灯の光が滲んだ。そして――
気が付くと、俺は床に座り込んでいた。見慣れない壁。見慣れない天井。見慣れない匂い。
「……どこだよ、ここ」
思わず呟く。すると、
「それ、こっちの台詞なんだけど!」
聞き覚えのない声が返ってきた。
反射的に振り向く。そこには自分と同じくらいの年齢に見える少年がいた。明るいオレンジの髪。よく動く表情。少しだけ安心したように笑っている。
「よかった~!人いた!」
「……誰」
「ひどくない!?」
少年は大袈裟に肩を落とした。
「僕、krh!」
そして当たり前みたいに続ける。
「君…名前は?」
俺は少しだけ黙ったあと答えた。
「……lor」
「よろしくね、lor!」
それからしばらく、俺たちは出口を探して歩き続けた。同じような廊下。同じような曲がり角。同じような蛍光灯。
どれだけ歩いても景色は変わらない。それでもkrhは諦めなかった。
「絶対出口あるって!」
「根拠は」
「ない!」
「……」
「でも無いと困るじゃん!」
そんなことを言って笑う。
意味は分からなかったけど、少しだけ安心した。
数日後。最初に異変に気付いたのはkrhだった。
「ねぇlor」
「?」
「さっきから誰かいるんだけど」
廊下の先を指差す。でも、そこには誰もいない。
「いないよ」
「え?」
krhの顔から笑顔が消えた。
「……いや、いたんだけどな」
それからだった。
krhは時々立ち止まるようになった。
誰もいない場所を見るようになった。
眠れないと言うようになった。
そしてある日。
「なぁ」
krhが震える声で言った。
「僕、おかしくなってない?」
その顔を見て、初めて怖いと思った。
48
11,542
832クン/八ヶ丘ミツ🫧✨️
コメント
1件
うわあ、今回めっちゃ引き込まれた……!“成功例”っていう台詞、なんかすごく引っかかる。知らないはずなのにって描写がゾクッとしたよ。krhの明るさがだんだん剥がれていく感じ、めっちゃ丁寧で怖かった……最後の「おかしくなってない?」で一気に心臓掴まれた。続きすごく気になる……!