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その夜、楽屋に残された空気は、ステージ上の華やかさとは対極にある泥のような重苦しさを孕んでいた。
「……いつまで、あいつの影を追ってるつもり?」
若井滉斗の低い声が、静まり返った部屋に鋭く刺さる。彼はギターケースのストラップを握りしめたまま、鏡の前で髪を整える藤澤涼架の背中を、射抜くような視線で見つめていた。
藤澤は手を止めない。鏡越しに一瞬だけ視線が交差したが、彼はすぐに柔らかな、けれど温度の伴わない微笑を浮かべた。
「さっきから何?そんなことしてない。メイク直ししてるから邪魔しないで」
「嘘だ。さっきから一回も、俺のこと見てないだろ。ステージの上でも、今も」
若井が一歩踏み込む。ブーツの足音が、藤澤の心臓を直接踏みつけるように響く。若井の手が、藤澤の細い肩を背後から強く掴んだ。指先が食い込み、衣装の生地が悲鳴を上げる。
「涼ちゃん、君の隣でギターを弾いているのは俺だ。あいつじゃない。なのに、どうして君の鍵盤は、いつも俺を置き去りにして、あいつの旋律を探しに行くんだよ……!」
執着。それは、若井の瞳の中でドロリとした光を放っていた。藤澤の穏やかな振る舞いは、若井にとっては何よりも残酷な拒絶だった。自分に向けられない情熱なら、いっそ壊してしまいたい。そんな歪んだ愛が、二人の間に通う空気を濁らせていく。
藤澤はゆっくりと振り返り、自分を拘束する若井の手首にそっと指を添えた。その指先はひどく冷たく、それでいて熱を帯びている。
「若井……若井は僕の何を求めているの? 才能? それとも、この空っぽの体?」
藤澤の瞳に、初めて暗い色が混じった。それは慈愛ではなく、深い絶望に近い共依存の誘いだった。
「全部だ。涼ちゃんの指が奏でる音も、絶望も、全部俺のものにしたい。たとえ涼ちゃんが、一生あいつを忘れられなくてもいい。その呪いを、俺が上書きしてやる」
若井の顔が近づく。逃げ場のない空間で、互いの呼吸が混ざり合う。それは音楽への情熱などという綺麗な言葉では片付けられない、ドロドロとした独占欲の塊だった。
「……勝手だね、本当に」
藤澤は力なく笑うと、自ら若井の首に腕を回した。
美しく、そして救いようのない不協和音が、夜の静寂の中に溶けていった。
「俺はもう滉斗に夢中だよ」
それに気付けないなんて馬鹿みたい。僕のこと見てないのは滉斗の方じゃないの?僕はずっと見てるのに。恋人?マネージャーが好き?全部嘘。早くこの嘘に気づいてよ。この嘘は僕からのお仕置き。滉斗はいつ気づくのかな。君がこの嘘に気づいたら僕を振るのかな。君が嘘に気づくまで。そうこの恋は期限付き。
はじめまして!!三味と申します!今まで読み専でしたがゼンジンに外れまくり、このままだと人をちょっと強めに叩きかねなかったのでついにこちら側へ周りました笑、大学生をやってるのでドブカスみたいな更新速度かと思いますがどうぞよろしくお願いします。
スミセス🍏スミと呼んで欲しい