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〝ライブが終わった後の静寂は、いつも僕の耳を刺す〟
楽屋の隅、藤澤涼架は鏡に映る自分をぼんやりと眺めていた。まだ火照る体に、冷たい視線が突き刺さるのを感じる。
「涼ちゃん、今日の演奏。あのフレーズわざと外したでしょ」
低い、それでいて甘い毒を含んだ声。大森元貴が、藤澤の背後に立っていた。鏡越しに目が合う。にこりと微笑んだ大森の瞳は笑っていない。
「……そんなことないよ。ちょっと指が滑っちゃっただけ、次はな」
「嘘だ。涼ちゃん俺のこと見てたよね。俺がファンの子を見てるのが、ほかの誰かを見てるのが、そんなに嫌だった?」
大森の手が、藤澤の肩から首筋へと這い上がる。細い指先が、藤澤の喉元を強くなぞった。藤澤は拒絶することもできず、ただ小さく甘く震える。
「元貴、やだ、やめて……」
「苦しめばいい。俺の手の中で、俺が作った曲の中で、俺の言葉を奏でて、俺だけを見て壊れてよ」
大森は藤澤の耳元で囁き、そのまま深く、深く執着を刻み込むように抱きしめた。藤澤は知っている。この男が自分に向けるのは、純粋な愛情などではない。支配欲と、それと同質のどろどろとした依存だ。この囁きは共依存への誘い。
けれど、その呪縛から逃げ出す術を、不幸にも藤澤はもう持ち合わせていなかった。
「俺がいなきゃ、涼ちゃんのピアノには何の意味もないんだから。ピアノがなければ涼ちゃんの生きる意味、なくなっちゃうね」
薄く笑いながら呟かれた大森の言葉は、逃れられない真実として藤澤の心に沈殿していく。
差し伸べられた手を取るのか、それともその手に首を絞められるのか。
二人の間に流れる空気は、濁った泥のように重く、どこまでも深い。
「……そうだね、元貴。僕には、元貴しかいないよ」
藤澤が諦めたように力なく微笑むと、大森は満足げに、その歪な愛をさらに強く押し付けるように強く抱きしめる。
スポットライトの当たらない場所で、二人の狂ったアンサンブルは続いていく。いつまでも、いつまでも。
狂恋 end
長編も書いてみたいなって思ったり
ナンテネ
スミセス🍏スミと呼んで欲しい
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