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【同じ地下室。もう何年経ったかわからない】
水 「桃ちゃん、今日は記念日だよ」
桃「記念日?」
水 「うん。僕たちが外の世界を完全に忘れた日、ちょうど丸五年」
桃「へぇ…….五年か」
鎖で繋がれたまま、ゆっくりと水の膝の上に頭を乗せる
桃 「でも俺、もう時間の感覚ないや」
水「僕も」
桃の髪を梳きながら、静かに微笑む
水 「ねえ桃ちゃん。覚えてる?昔、僕たち約束したよね」
桃「…..ああ。『先に死にそうになったら、殺して』って」
水「そう…実はね、桃ちゃん」
水はそっと、自分の首に巻かれた鎖を外し始めた。
カチャ、カチャ、と音がして五年ぶりに金属が離れる。
桃「……水?」
水「僕、もう長くないんだ。心臓が最近すごく変で….」
自分の胸に手を当てた水が小刻みに震えている
水「だから、約束、守ってくれる?」
桃は黙って立ち上がり、壁に掛けてあった小さなナイフを取った。
刃は錆びて、血の跡が何層にも重なっている。
桃「…..本当にいいの?」
水 「うん。桃ちゃんの手で死にたい」
桃はナイフを握りしめ、ゆっくりと水の前に跪いた。
そして、震える水の頬に自分の額をそっとくっつける。
桃 「最後に、キスしていい?」
水 「もちろん」
二人は目を閉じて、静かに唇を重ねた。
五年分の血と涙と唾液の味がした。
桃はナイフを水の喉に当て、優しく、優しく、押し込んだ。
水「…..ありがとう、桃ちゃん」
最後に漏れた声は、幸せそうに震えていた。
水の体がゆっくりと倒れる。
桃はそれを抱きしめたまま、ナイフを自分の首に当てた
桃「待ってて。今行くから、水」
刃が肉を裂く音。
血が二人の体を包み、床に大きな赤い花を咲かせた。
翌朝、
地下室の鍵は内側から開いていた。
二人は手をつないだまま、静かに横たわっていた。
頬を寄せ合い、まるで眠っているように微笑んでいる。
誰かが扉を開けたとき、 甘ったるい匂いと、かすかな笑い声のようなものがふわりと漂った。
桃「やっと、一緒に死ねたね」
水「うん。ずっと、ずっと一緒だよ」
二人は最後に 完壁なハッピーエンドを手に入れた。
歪んだ愛は、歪んだまま、永遠になった。