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影日 赤い烏
⚠︎︎attention⚠︎︎
死ネタ、キャラ崩壊(?)、原作改変、制作主アニメ勢…etc
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1月、高校生活最後の春高。今年こそは全国制覇するんだ、と誓った。しかしその夢はあっけなく終わってしまったんだ。
準々決勝まで勝ち進んだ。1セット先取し、2セット目の中盤、2ポイント多く取っていた。このままいけば準決勝に進める、と目を輝かせた。
いつも通り影山のトスを打つため地面を思い切り蹴った。
はずだった。
俺が思っていたほど跳んでいなかった。影山のコントロールのおかげでボールにはちゃんと届いた。しかし、いつものスピードはなく、あっけなくレシーブされてしまった。初めは疲れだろうかと思ったが、その異変はどこか疲労とは違う気がした。
「日向」
影山だ。もう気づいたのだろうか。
「お前、今日おかしくねえか」
あぁ、やっぱり気づいてた。さすが影山だ。
「そ、そんなことねえよ!…ちょっと疲れてるだけだ!」
「…そうか」
ほんの少し、喋りにくい気がした。
今日の日向はどこかおかしい。いつもより打点が低い、それに加えてスパイクの威力が低く、精度もいくらか悪い。
_ちょっと疲れてるだけだ!
あの体力オバケが疲れただ?去年はそんなことなかった。練習も積み重ねている。体力が落ちたなんて訳でもない。
今考えても試合に支障が出る。そう思い試合に戻った。
今の得点は22:21。あと3点で準決勝に進める大事な局面に差し掛かってきた。俺の異変は治ってないし、なんなら少し悪化しているような気さえする。しかし、ここを勝てば疲れも多少取れ、準決勝で戦える。あと少しだ、そう思った。
23点目を取り、地面に足をつけたその時、俺は地面に座りこんでしまった。いつもなら余裕で立っているはず。しかし足に、脚に力が入らない。立ち上がろうとしてもまた座りこんでしまう。異変を感じた先生がタイムアウトをとる。
影山と月島に支えられて、ベンチに腰掛ける。
あぁ、一昨年と同じだ。また試合に出られない。なんで。なんでこうなるんだ。もっとバレーがしたい。いや、もっと影山とバレーがしたい。こんなところで退場してたまるか。
「熱…ないな」
ほら、熱ない。怪我じゃない。俺はまだ戦える。そう思ったところで影山が口を開いた。まるで俺の脳内を読んだかのように。
「日向、救護室行ってこい」
「いやだ、俺はまだ戦える。足だって、頑張れば力くらい_」
「バカ言え!今のお前にバレーは無理だ。その足でどうやって戦うんだよ」
「日向くん。私も影山くんの意見に賛成です。救護室に言った方が…」
なんで、なんでみんな俺を下げようとするの。俺はまだ戦える。足だって頑張ればどうにかなる。
まだ戦いたい、と思えば思うほど辛くなるし涙も出てくる。本当に一昨年と同じ。俺はなんにも成長しちゃいない。
俺は結局谷地さんに連れられ、医務室に行った。 結果は2-0で準決勝進出だったらしい。烏野はやっぱり強いと実感した。
俺は準決勝に出れるのだろうか。俺は必要とされるのだろうか。一昨年の大地さんのように、必要とあの場で言ってくれるやつは誰一人としていなかった。必要と思ってないわけじゃないはずなのに何故か不安になる。出ても影山のトスは打てないんじゃないかとか、そもそもベンチのままで、コートには入れないんじゃないかとか、次々と嫌な想像が脳内を蝕む。
気づいたら俺は医務室のベッドの上で泣いていた。何分も、何十分も。様子を見に来た影山がギョッとするほどだった。
影山は俺の事を何秒か見下ろしてからベッドの横にしゃがんだ。
「お前、どーせ準決勝出れなかったらどうしようとか考えてんだろ」
図星である。本当に脳内を読んでいるんじゃないかと思うほど俺の事をわかっている。しかし、俺にはそれがなんとなく嬉しかった。
「俺はお前のこと信じてるからな。お前の言う気合いとやらで足治せよ」
そう言い頭をそっと撫でた。
影山はきっともう俺が戦えないことなんてわかってる。それでも信じてくれている。
思わず影山に抱きついた。戦えない辛さと今の言葉で余計に涙が出てくる。そんな俺を、あいつはただ黙って抱きしめ返してくれた。
準決勝、俺はなんとか試合に出ることができた。多少足に違和感があったものの、いつものように跳ぶことができた。影山のほっとした顔を見て、俺も安心した。
結果は準決勝敗退だった。悔しかったが、影山の笑顔が見れたことが何よりも嬉しかった。体育館を後にして、宿へ戻る。
バスに乗る数分前。血塗れたような、妙に赤い烏を見た。
後編へ続きます。