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『🐙🌟』「👻 🔪」
🔞、VTA描写有り
不穏要素多め
首締めが含まれます
解釈不一致を少しでも感じた際は、無理せずブラウザバックすることを推奨いたします。
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小柳くんと付き合ってから2年と少しが経った。彼と付き合ううちに分かったことが2つある。
新月の日はいつもより少しだけ情緒が不安定になること。
春になるとその症状が増すこと。
その理由に心当たりがない訳じゃ無い。付き合うまでは彼の様子が違うことにも気が付かなかった。それほどまでに小さな差なのだが、気づいてしまった今では些細な変化に敏感になってしまう。
今夜は夜桜が映える新月の日。彼は今日、俺ではない誰かに俺を重ねて名前を呼ぶだろう。
「星導」
『なに?』
俯いて俺の服の裾を掴んでくる彼の手に自身の手を重ねる。そして、ざわざわと荒れる心の内を聡い彼に気が付かれぬよう、ゆっくりと彼の腰を引き寄せた。
月明かりのない夜は僅かな不安感が募る。白狼としての力に大きな影響がある訳ではないのだが、なんとなく落ち着かない。ただ、その程度のことのはずだった。
星導晶とは学校を卒業してから連絡がつかなくなった。記憶が無いのだと言って現れた“星導ショウ”と“星導晶”を引き離すのに多くの時間を費やした。
ショウが好きだと自覚したのは彼からの告白を受けた時だった。ショウは大切な恋人で、晶は大切な友人で、2人は別人だ。分かっているはずなのに、晶への後ろめたさを覚えた自分に腹が立った。
新月の夜が苦手になった。溢れる不安を押し留めることができなくなってしまった。ショウに晶の面影を見ては、また彼が知らぬ間に消えてしまいそうで怖かった。自分を安心させるために彼を求めた。悲しそうな表情を見せる彼への罪悪感だけが残った。
「っあ゛、ほしるべぇっ、んぅ゛、おく、おくほしいっ」
『うん。いっぱいあげる』
「〜〜〜っ゛、はあ゛ぁ゛っ、やぁ゛、むりぃっ」
『きもちいね。もっと声聞かせて』
新月の彼は寂しがり屋らしい。その隙間を埋めるために、彼への愛を言葉で、触れる身体で伝えるたびに蕩けていく顔が好きだ。
「ねぇ゛っ、っうぅ、ん〜〜っ゛」
『上手にイけたね。いい子』
余韻に浮かされ焦点の定まらない彼の目が捉えているのは、本当に俺の姿だろうか。俺の奥に誰かを重ねている、そんな気がしてならない。あるとすれば昔の俺だろう。彼とは昔から友人だったと言うことだけは聞いたから。重ねてしまうほど似ているのだろうか。
消えた人間は記憶の中で美化され、神格化されていく。生きた人間が、もう居ない人間を超えることは出来ない。
羨ましいなあ。
「ぅ゛っ、!?かはっ、くっ゛ぅ」
彼の白い首に手を掛け、力の限り締める。
『俺のことだけ見ててよ。ねぇ、そんなに前の俺が好き?抱かれてる時にすら重ねるくらい?』
「ち……がっ、ゃぇ゛、」
『あはは、何言ってるかわかんないや』
苦しそうな顔。必死に息を吸おうとして喉が鳴っている。その姿が愛おしくてたまらない。そのまま彼の良い所を撫でれば、力の抜けた身体がぴくぴくと痙攣する。
「…ぁ゛、ぅ゛っ…………?」
『可愛いね。なんにもできなくて』
首から手を離し、そのまま彼の口へと指を入れる。
『ほら、息吸って』
「っ、はぁっ、ひゅーっ゛、はっ゛、はーっ」
『…ねえ。昔の俺と付き合ってたの?』
「つき、あってない、」
『じゃあなんでそんな不安そうな顔するの』
目を逸らして言い淀む彼の口を無理やり指で押し広げる。
「ぅあっ、は、ちが、いかないでっ」
『…?行かないよ、どこにも』
「前の、おまえが、勝手にいなくなって、おまえと違うってわかってるけど、にてる、から。いなくなりそうで、不安になって…」
そうか、彼は過去の俺と同じように、また俺が消えてしまうことを恐れていたのか。けれど、今なら約束できる。小柳くんを置いて消えるなんてこと、絶対にしない。
『じゃあ、ぎゅーしながらしよっか』
少しでも彼を安心させたくて、彼の身体を優しく抱き寄せる。
『不安にさせて、勝手に嫉妬してごめんなさい。俺はいなくなんないから』
『ほら、こうしたら俺がいるってわかるでしょ』
「うん…。重ねてごめん、星導。もっとしたい」
『いいよ。ずっと、くっつきながらしようね』
お互いの穴を埋めるように、貪るように身体を重ねる。月明かりのない、夜の幕が上がるまで。