テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
8月29日 ガダルカナル島
僕らはまた密林のなかで潜伏生活をしていた。
僕らの戦力はもはや1個中隊規模で数少ない兵力でなんとか米軍から耐え凌いでいた。
繰り返される米軍戦闘機からの機銃掃射や爆撃にやってその1個中隊規模の部隊も少しずつ削られていっていた。
そんな中でも小嶋たちは必死に生き残ろうと努力をしていた。
「なにおめおめと生きて帰ってきたんだ…?」
あの言葉が頭から離れない。
あのテントのなかで陸軍士官に言われたことが少し心の負担、トラウマとなってしまい少しだけ生きることが怖くなってきてしまっていた。
しかしそんな中でもまたもや希望の光が差し込むような出来事があった。
陸軍士官1「どうやら、今日の深夜に川口支隊が上陸するようですね。」
そんな言葉を小嶋はテントの隣を歩いているときに聞いてしまった。
また、やっとか…
またもやその感情が出た。
しかしそれは前回の一木大佐率いる一木支隊が上陸するとの吉報ほど喜んではではなかった。
川口支隊も同じ運命を辿る…
そう感じていたからだ。
しかし深夜にまたもや川口支隊は上陸した。
長島「来ますね。川口支隊の皆さん。」
小嶋「あぁ、前回ほどの喜びはないが心の安定剤程度にはなるか。」
そう小嶋はぼそっと話した。
そうしてやがてまたもや上陸艇が砂浜に上陸し、兵員たちを降ろしていった。
そうして歩兵たちが出てきた瞬間後ろからたくさんのやせ細った兵士たちが出てき、ぼくらの横を通り抜けていった。
何を言うかと思えば…
日本兵たち「飯をくれぇ…頼むぅ…」
そう泣きながら川口支隊の兵員たちに米をねだっていた。
彼らにも余裕はないはずだった。
彼らは約5日間ほどの食糧しか駆逐艦の積載量の都合で持ってこれていなかった。
しかしそれでも優しさに負けてしまい、ねだる日本兵たちに米を少し分ける。
川口支隊員「ほれ、米だ。やるから早く食えよ。」
そうして米の入った袋を渡す。
そうして彼らはすぐに炊飯する準備に入り米を飯盒に入れて米を炊き始めた。
小嶋「あれほど腹が減ったとはな…」
長島「仕方ないですよ…もう2日間食ってない人だっていたんですから。僕らが毎日食べれてたのも事前への対応が間に合ったからであーやって間に合わなかった人はねだるしかないんですよ。」
長島の言ってることは確かに納得できるものだった。
このガダルカナル島は自然が多く、密林に囲まれ適応できなければ死ぬという極限の状況だった。
これに対応できなかった兵士たちは適応できた兵士や新しく来た飯を持っている兵士にねだるしかなかった。
そんな悲しい現実であったが餓島とまで呼ばれたガダルカナル島ならありえる話だろう。
小嶋「まぁ…俺は先遣隊で元々海軍警備隊としてここにきたからあらかたここの自然には適応できてはいたがやはり一木支隊などの上陸してすぐに突撃作戦に行かされた兵士はそりゃ適応できる時間がなかったよな…可哀想に…」
そえ小嶋は哀れな目でガツガツと米にがっつくやせ細った兵士たちを見つめる。
自分にも余裕がない状態だった。
しかしそれは周りも同じだ。
自分だけねだるなんて真似はしたくないと心から固く誓っていた小嶋はどれだけ腹が減ろうが自給自足の生活をしていた。
だからこそ哀れに見えてしまった。
中村「川口支隊…来てたのか。」
小嶋「あぁ、今さっき来たよ。」
そう後ろから来た中村に話す。
中村は川口支隊員たちを見る。
中村「見ろよ、あいつら米を食ってる奴らを見て笑顔でいやがるぜ。自分たちも食いたいはずなのにねぇ。」
そう中村は話す。
たしかに幸せそうに食べる兵士たちを見て川口支隊員たちは笑顔で静かに米を食べていた。
お互いに幸せそうだった。
あぁ、あいつら現実を知らないのか。
小嶋は中村と違い、そう感じてしまった。
戦争の現実を知っている小嶋たちはこの笑顔を見てまだ現実を知らない人たちだと感じさせられていた。
現実を知らなければやがていつか殺される。
現実を見て勇敢に立ち向かう奴こそ生き残る。
自分も勇敢に立ち向かっていきたかった。
しかし今立ち向かって言っても結果的にはただ米軍に蜂の巣にされるだけであった。
だからこそ我慢というものをしていた。
必ず勝機は来る…
そういつまでも希望的観測でいた。
希望的観測ができなければこの戦場、いや…戦争はやっていけないからだ。
すると飯を食べ終わった兵士たちがお礼にとなけなしのたばこを差し出す。
川口支隊員はお礼を言いながら皆一本ずつ受け取っていく。
タバコの先端に火をつけて、川口支隊員たちは大きく吸った。
体に生気が戻ってきたかのような感覚に隊員たちは大きくリラックスしていた。
小嶋「おいおい…リラックスしてるが大丈夫か…?」
小嶋は心配だったが中村がそれを止める。
中村「まぁたとえこの状況が危険でも、今は放っといてやろうぜ。な?幸せな時間がない世界での唯一のリラックスできる時間だからな!」
そう言いながら中村は小嶋に笑顔を向ける。
小嶋「あぁ、そうだな。確かに邪魔をしたらかわいそうだしな。今は放っといてやろう。」
そうして小嶋たちは本部の自分たちのテントにもどる。
なけなしの布団を被りながら睡眠につく。
そうしてやがて、川口支隊員たちは初めてで僕たちは約3週間目のガダルカナル島の朝日を見ることになった。
川口支隊員たちはその体を活かしながら山砲や機関銃を配置し、陣地を作る。
たとえ米軍がきても頑丈な陣地で抵抗し、これを占領させないためである。
僕らはまた、あの時と同じ感覚になった。
「味方」というものが、また心強く感じたんだ。
第十九話「川口支隊」
コメント
1件
うわあ、今回も重いですね…。新しく来た川口支隊が「現実を知らない笑顔」で米を食べてるのを見て、「同じ運命を辿る」と冷めた目で見てしまう小嶋の心理描写がすごくリアルで胸が締め付けられました。中村が「今だけは放っといてやろう」って言うシーン、戦場の小さな優しさにグッときます。タバコ一本で生気が戻る感じ、せつないけど温かい空気が漂ってましたね。