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EPISODE 2 .
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殺人の容疑で大森が捕らえられたのは前日の26日、21時半過ぎの事だった。
パトロールで徘徊していた警察官が、空き家で物音聞いたらしく、入ってみると首を吊った被害者と、驚いた顔で見つめてくる大森が居たそうだ。
大森は何を思ったのか、その場から逃げ去ろうとしていたが、警察官に取り押さえられたらしい。
俺は朝5時から殺害現場と見られる空き家を見に来ていた。
最近はある未解決事件のせいでよく眠れていなかった。
殺人事件なのだが、それもこの地区で起こったもので、犯人もまだ見つかっておらず、凶器すらも見つけきれていない。
被害男性の飼い犬である柴犬の保護手続きも俺がやる羽目になってしまったのだ。
「そんなにイライラしないでください先輩。」
「別にイライラなんてしてない。」
ここから徒歩30分あたりの場所にある東京都立一橋高等学校は大森とその被害者の生徒が通っていた高等学校だ。
「今日の面談は何時からの予定だ?」
「一応今日は午後6時から7時までの1時間の予定です。」
大森や被害者についての本格的な捜査が始まるのは最低でも3日後、最高で1週間は掛かるはずだ。
面倒事になる前に大森が隠そうとしている真実を全てさらけ出させてやる。
「犬塚警部。」
「なんだ」
「犯行に使われたと思われるロープですが、今思うと新しい物だった気がするんですよ。」
「何故それがわかる」
「証拠品を1度見せて貰った時、だいぶ強い力を使っていたのか、解れはしていたんですが目立つ汚れが全くありませんでした。」
「元貴君が被害者を殺害するためにわざわざ購入したようにも思えません。かと言って、あの空き家にあったものにも見えません。」
「何が言いたいんだ」
「…被害者が何かしらの方法で新しい紐を入手し、本当に自殺した……とも考えられます。」
「無いな。辻褄が合わないし、まず有り得ない。」
「それなら何故大森は自殺したと素直に話さず、現場から逃走を図ったり自分が殺したと自白をする必要がある?」
「それは……」
「俯瞰的に見て良く考えろ。」
「…でしゃばってすみませんでした。」
こいつが俺に何を言いたいのか、何を示そうとしているのか、何となくわかる気はするが、ここは敢えて厳しくする。
これは遊びじゃない、探偵ごっこでも、推理小説でもない。だからといって、万引き事件でもないし、暴行事件や強盗事件でもない。”殺人事件”だ。
憶測で物事を判断しては行けないような厳しく、手のかかる事件なのだから。
大森が東京都警視庁本部に引き渡されるのは、早くても約3日後。先程も言ったように、本格的な捜査が始まるのも3日後。
あちらの警部達は頭に血が昇りやすい連中ばかりだ。
犯罪者は犯罪者だが、そんな場所に投げ込まれれば、動機や殺害方法など、全てを話すまで睡眠は勿論、飯すらもまともに与えられないだろう。
流石にそのような状態になるのは俺だって同情くらいする。あそこはまさに地獄だ。生き地獄を味わっているようなものだ。
あんな小柄の高校生が耐えられるわけが無い。
「犬塚警部」
「なんだ」
「これ、血痕では無いでしょうか」
血痕?まだ拭き取られていない汚れがあったのか。
「…床に染み込んだまま固まってるな。DNA検査は出来なさそうだ。」
「これ、誰の血痕でしょうか。被害者の子は血を流していませんでした。でも、大森くんも怪我をした様子は無かったはず。」
現場にあったカッターナイフ。大森の制服に付いた赤いシミ。赤いシミで汚れたハンカチ。被害者の濡れた制服と髪…。
ただの高校生の殺害事件では無いようだな。
「ここが2人が通っていた高等学校か。」
「はい、今の時間は部活生が帰宅する頃なので、あまり目立たないようにお願いします。」
「嗚呼。」
「あの…」
「ん?」
しまった、目立たないと言ったそばから男子生徒に話しかけられてしまった…。
…ん?こいつは…
「…お前、若井滉斗か」
「あ、はい…。やっぱり、警察の人ですよね…?」
「……。」
「やっぱり、あの事件の…、元貴と先輩の話を聞きに来たんですか…?」
こいつは若井滉斗。大森と同じ高校1年生。そしてクラスメイト。大森の数少ない友達の1人。大森にとっては一番の親友だったんだそう。
そして、被害者の後輩でもあるそうだ。
「…何も答えられないな。捜査のことは。」
「そう、ですか…。」
「あ、あの、俺、話せることがあったらなんでも話します。」
「元貴があんな事するやつじゃないって、俺が1番理解してます。だから、もし、行き詰まるなら、俺に協力させてください。」
確かに、大森と被害者について聞き取るなら1番身近で、どちらとも関係の深い人物からの方が良いだろう。
「…その時は頼む。」
「は、はい…、」
「…元貴は、絶対殺人なんてしません。それだけは伝えたい。分かって欲しい」
「…先輩も、藤澤先輩も、恨みを買うような人じゃない。」
「…元貴を宜しくお願いします。」
「……あぁ。」
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EPISODE 2 . fin .
コメント
2件
続きありがたいです🙏 こうゆう系もだいっ好きです😘